@ ブラックバスがメダカを食う

 ● 著者 :秋月岩魚(あきづき・いわな)

 ● 出版社:宝島社(宝島新書)

 ● コメント:本書は1999年9月発行の新しい本だが,最初に置いたのには理由がある。一人でも多くの釣りを愛する人たちに,本書を読んでもらいたいと思うから。筆者は,バスプロを始めとする「ブラックバス業界」の人々を容赦なく攻撃する。ブラックバスという魚は,NHKの「クローズアップ現代」にも取り上げられたことがあるくらい,かなり以前から社会問題になっているのは周知のとおり。ぼく自身,この本の「バス釣りは犯罪である」という主張に共感を覚える。しかしそれは,バスの密放流が生態系に悪影響を与えるという即物的な理由からではなく(もちろんそれもあるけれど),「1匹でもたくさんの魚を,できるだけ楽をして釣り上げたい」という釣り人の際限のない欲望と,それに迎合する釣具メーカーの,これまた際限のない利益至上主義にいささか辟易するからだ。

実を言うと,このホームページを公開するに際して,かぶせ釣りをできるだけ多くの人に知ってもらいたいという思いの反面,ちょっとマズい結果になるのでは・・・という危惧もあった。釣り人の増加に伴う「場荒れ」の問題もあるが,それは致し方ない。より深刻な問題は,かぶせ釣りもまた他の釣りと同様に,「釣りビジネス」の販売戦略に飲み込まれてしまうのではないか?という懸念にある。今はまだ,かぶせ釣り用のタックルは存在しない。釣り人が少なく,採算が取れないからだ。しかし,この釣りが広く普及すれば,専用の竿やらハリやらが現れ,果てはエサのカキの養殖販売,コブダイの稚魚放流なんてことも,絶対に起こらないとは言えない。バスと違ってコブダイは生態系を荒らさないから放流してもいいじゃないか,という問題じゃないのだ。「自然のふところを借りて遊ばせてもらう」という,釣りという趣味に本来備わった品性が,テレビゲームと同レベルの,単に釣果を競うだけの低級な欲望に堕してしまうことに堪えられないのである。

本書のあとがきに,こんな言葉がある。「釣り業界は,ブラックバスはマズイと認識していながら,自分たちの利益のために,その問題性に目をつぶってきたのである」。この文の「釣り業界」を「釣り人」に,「ブラックバス」をたとえば「空き缶のポイ捨て」に置き換えてみればいい。ブラックバスの問題は,われわれ釣り人一人一人の社会意識,つまりは生き方の問題に他ならないと思う。