L 海からの伝言

● 著者 :中国新聞「新せとうち学」取材班

 ● 出版社:中国新聞社

 ● コメント:出版は1998年。地元の中国新聞に連載されたルポを本にまとめたもの。3部構成で,それぞれ「<いきもの><環境><くらし>を考える」という表題がついている。瀬戸内海の環境を多角的に分析した力作で,絶滅に瀕した魚,人工海岸の影響,養殖漁業の問題点など,これ1冊で現代の瀬戸内のすべてがわかる,と言っていい。大判のフルカラー印刷で,写真や図表も美しい。「釣り人の漁獲高」という記事にはとりわけ注目した。たいていの釣り人は,自分らが獲っている魚の数など,プロ漁師に比べれば砂漠の砂粒程度にすぎない,と思っているだろう。しかし実際はそうでもない。水産試験場が94年に江田島・能美島でチヌ狙いの釣り人131人に聞き取り調査を行った結果,釣り人が年間に釣り上げるチヌの目方の推計は,プロ漁業者の2.5〜8%に上った,という。中には1人で年間に100kgのチヌを釣る人もいるとか。30cm級なら3尾くらいで1kgだから,釣ったチヌを自分で食べるとしたら,ほとんど毎日1尾ずつ食卓に出さないと食い切れない計算になる。「釣った魚は食うべきだ」とは言わないが,あんたらそんなにチヌばっかり釣って面白いか?と思わざるを得ない。