G 魚の博物事典

● 著者 :末広恭雄(すえひろ・やすお)

 ● 出版社:講談社(講談社学術文庫)

 ● コメント:ポケットサイズの文庫本ながら,600ページを超す大作。筆者は東大名誉教授で,油壺水族館長などを歴任,シーラカンス特別調査隊を指揮するなどの経歴を持つ。裏表紙には,こうある。「本書は『魚博士』として知られた著者が,日本人に特に親しい魚134種について,その生態から釣魚法まであらゆる情報をまとめた末広魚談義の集大成である。正確な生物学的知識にとどまらず,食生活・民俗・文学等人間生活の全般にわたって興味深い魚の話が展開する。」--- しかり,本書は酒席で魚について気のきいた話の一つもしたいという向きには,格好の入門書と言えるだろう。もちろん筆者は学者であって,釣りやグルメの専門家ではない。だから生物学的な説明以外は,魚マニアにとっては多少食い足りない面もないではない。しかし,とにかく博学な知識人が語る話というのは,それだけで十分読む価値があると思う。