N 仁淀川漁師秘伝 〜弥太さん自慢ばなし〜

● 著者 :宮崎弥太郎(みやざき・やたろう)/かくまつとむ

 ● 出版社:小学館

 ● コメント:出版は2001年。高知県仁淀川の川漁師・宮崎弥太郎さんの口述を,ライターのかくま氏が筆記した本。雑誌「ビーパル」の連載を編集したものだが,最近読んだ本の中では一番面白かった部類に入る。プロの川漁師が使う,アユ・ウナギ・ナマズ・ゴリ・カニ・エビなどを獲る仕掛けや技術が詳しく説明されている。宮崎さんという漁師さんは,中学卒業と同時に父親の後を継いで川漁師になったそうだが,その研究心には驚かされる。単なる道具の工夫だけでなく,考え方が非常に科学的というか論理的というか,魚の図鑑や学者の話などにも詳しい。釣りの場合も一緒だが,そういう「ちょっとした学び心」の積み重ねが,最終的に名人と凡人との大きな差になるんだろうなあ,と思わせる。文章もいい。口述とは言っても,語りをそのまま文字にするのは無理なので,本にまとめるのは結構しんどい作業だろう。適度に方言が混じっていて,文章に臨場感がある。かくまつとむ氏は釣りや魚関係のルポを中心に活躍するフリーのライターで,最近は釣りマンガの原作などもやっている。ああいう仕事で生計が立てられたら,あれはあれで面白かろうと思う。