F 釣魚三昧

● 著者 :盛川宏(もりかわ・ひろし)

 ● 出版社:講談社

 ● コメント:筆者は,「釣り魚料理コラムニスト」としては第一人者とも言うべき人気者で,夕刊紙の連載をはじめ著作も多い。釣りにも魚料理にも造詣が深く,語り口も庶民的で軽妙洒脱,誰にでも読みやすい。いわば釣りエッセイ界の赤川次郎のような人。本書は釣行記,釣り魚料理,釣友の話などバラエティに富み,気楽な読み物として楽しめる。個人的には,相模湾で釣ったタイの話が特に印象に残った。野締めにして内臓を取り出そうとしたところ,ラードのような脂がべっとり出てきた,という。広い海の中でタイの居着く狭い根に連日大勢の釣り人がマキエを撒いた結果,ついには「飼い付け」のタイが生まれた,ということらしい。こうなると天然のマダイも養殖のタイと何ら変わらない。こういった一つ一つのさりげないエピソードが,われわれ釣り人,あるいは魚好きな人々にさまざまなメッセージを送ってくれる。タイトルはちょっと堅苦しいが,休日にゴロ寝しながら読む本としては最高の部類かもしれない。