2005/3/16 up 

NHK取材(2005年3月14日)レポート


 

まずは,今回の取材関係者の皆さん,お世話になりました。

ディレクターのTさん,アナウンサーの江崎さんはじめスタッフの皆さん,

何度もイカダへ船を渡していただいたTさんはじめ歌漁協の皆さん,

そして取材に同行していただいた常連の皆さん,ありがとうございました。

この場を借りて,改めてお礼申し上げます。


 

NHK広島放送局から取材申し込みの電話があったのが,1週間前。

前に鍋の取材をしたときのディレクターさんから「もう一度,今度は釣りメインで」

という話を前に受けていたが,去年の今ごろの時期にその依頼が来たときは,

ちょうど出張とぶつかってしまい,実現しなかった。

今回は別のディレクターさんからお電話があり,快諾することに。

今までと違うのは,今回は初めての全国放送で,しかも生中継

下手をすると,全国に恥をさらすおそれも・・・

 

まず,取材場所の候補地をいくつか考えた。「各地からの春の便り」という趣旨の

コーナーなので,大事な条件は「瀬戸内海のきれいな海が見えるところ」。

まあこれは,たいていの釣り場に当てはまるので問題なし。

次に,「魚が釣れるところ」。これがなかなか難しい。

ロケーション重視なら,鞆の浦(仙酔島の対岸)。しかしここは魚が釣れる見込みなし。

海に浮かぶイカダもよかろう,ということで,田島の牛の首フィッシングセンターや横島・

横田のイカダも候補に。ただ,村上餌虫店で聞くと,今年はチヌは遅れているとのこと。

チヌ狙いなら瀬戸田も有力候補地になるが,波返しが高いため撮影が難しそう。

コブダイとの格闘を見せるというのも,番組的には盛り上がること間違いなし。

しかし,釣れる確率の高い生名島・弓削島・大島などはすべて愛媛県のためボツ。

結局,このあたりではチヌの名釣り場として名高い,向島・歌の釣りイカダに決定。

確かにここは景色も申し分なく,チヌが釣れる可能性も高いはず。

ロケの場所としては,オーソドックスで妥当な選択だろう。

しかし,心配なことが1つ。実は私,このイカダで竿を出したことがないのですね。

 

ディレクターのTさん・当日レポートをしていただく江崎アナ(テレビでも美人だが実物は

なおさら。うちの娘も前にアナウンサーになりたいとかほざいとったが,絶対ムリと確信

した)と,事前の打ち合わせをした。そもそもうちに取材の話が来たのも,「広島−カキ

−かぶせ釣り」という連想が非常にわかりやすいからだろう。万一魚が釣れんでも,

カキを画面にどーんと出したらそれなりにアピールするじゃろ,ということで。

しかしまさか,その「万一」が万一で済まんようになるピンチに追い込まれようとは,

このときは全く考えてなかったのだった。


 

歌のイカダと言えば,釣れる魚はチヌ

東京あたりの魚屋さんには売ってないが,チヌを知らん人は少ないはず。

ぼちぼちハラミの本番が近いので,50cmに迫る大物も夢ではない(かも)。

本番の最中に釣れることは難しかろうが,「ここでこんなチヌが釣れたんですよー」

と,実物を出してアピールしたいところ。つまり,とりあえず番組に出演してもらう

チヌをゲットしておく必要がある。チヌ君,主役はキミだ。

 

そこで,前日の日曜日に,万全を期して同行者を募り,主演男優(メスでもええけど)

をお誘いするため,初めて歌のイカダに上がったのであった。

朝7時の出船時刻に集まったのは,全部で8名。天気予報が悪かったせいか地元の

常連さんたちはお休みで,我々だけが貸切状態でイカダに上がった。

この人数で狙えば,まずボウズはなし。スカリに入りきれんくらい釣れたらどうする?

 

このイカダは向島にあり,うちの家は松永なので,現地までは20分もかからない。

いわば地元だが,なぜかここで釣ったことは今まで一度もなかった。理由はいくつか

ある。まず,ここのイカダ,釣り雑誌とかにあまり広告が出てないので,連絡先がよう

わからん。それに,田島・横島・向島あたりの顔見知りの常連さんの中には,ここの

イカダで釣りをする人がほとんどおらんかったせいもある。で何となく,「あそこの釣り

イカダは,地元の常連さんしか行かんのじゃないか?」という思い込みがあった。

そう言えばM島のお二人も,地元なのにここのイカダは初めてだったそうで。

 

しかしとにかく,下見には絶対行っとかにゃ,とは思った。

魚が釣れるかどうかはともかく,下見の目的は2つある。

1つは,「手釣り」の練習。今回は広島の伝統釣法であるかぶせ釣りを紹介するわけ

であるから,できれば「正調かぶせ釣り」をご披露したい。そうなると,手釣りがベスト。

 

自宅のビデオ棚の奥から取り出したのは,1本のビデオテープ。

もう10年以上前の地元局の釣り番組「釣りごろ釣られごろ」が収録されている。

その中に登場するのが,「かぶせ釣り歴60年,かぶせ釣りと言えばこの人」と

言われた,大島文三さん(本業は漁師さん)である。この大島さんは,少なくとも

「釣りごろ」に2回出演しておられる。最初の番組では,自分の船に2,3人の

釣り人を乗せ,カキイカダでアイナメ狙い。結果,大島名人だけがアイナメを数匹

釣り上げ,他の釣り人はボウズ。2度目の出演,これを今回引っ張り出して勉強の

ために見たわけだが,イカダでのかかり釣りで,1人でハラミチヌを狙っていた。

カメラは大島さんの手元をじっと写している。ゴム管を使った手釣りの要領,

当たりの出方,合わせ方・・・このビデオを見れば,正調かぶせ釣りは一目瞭然。

(つい先日DVDレコーダーを買ったので,希望者にはコピーを差し上げます)

 

大島さんの仕掛けと釣り方は,こんな感じだった。

ラインは,道糸・ハリス通しの2号。ハリは今ちょっと忘れたけど,確かマダイ?

ハリのチモトは数センチほどケプラーのような茶色いセキ糸で補強されていて,

ハリスの太さはあまり関係ない,という感じ。使うカキは,我々が普段使っている

くらいの小ぶりのもので,ワタの底にハリをチョン掛けし,軽く砂をかぶせて投入。

当たりは数センチほどのゴム管の動きで取る。左手でゴム管を持ち,合わせる

ときは右手で道糸をしゃくる。ビデオの予習で,だいたいのイメージはつかめた。

 

イカダでの下見の目的のもう1つは,「常連さんの釣り方を見ておく」ということ。

おおざっぱに言うと備後地方のかぶせ釣りには,「うちのHPを見てかぶせ釣りを

始めた人」と,「それ以前からかぶせ釣りをしていた人」との2つのスタイルがある。

イカダでの釣りは経験が浅いので,歌のベテランの方の釣り方を参考にさせて

もらって,番組でもそれに沿った説明をしようと思っていた。状況によっては竿を

使って釣ることも考えられたので,なるべく「歌のイカダ流」の釣り方を紹介した

方がいいような気がしたので。番組を見た地元の常連さんが「ワシらの釣り方と

だいぶ違うのー」「あれでホンマに名人なんか?」とか思われたら恥ずかしい,

というプレッシャーもあったし・・・。


 

 

 3月13日(日)

 

朝7時の出船時刻に桟橋前に集まったのは,うちのHP関係者のみの貸し切り状態。

メンバーは,倉敷のマサさん&タクさん&こばさん・M島の半田さん&Kさん・

SHIMOMIさん・俊介くんと私の8人。東広島のツカポンさんからは,遅れて行く

との連絡あり。地元の方はこの時期はまだカキは使わずにダンゴ釣りをするという

ことで,「歌流かぶせ釣り」は見られず。

 

100mほど沖のイカダへ渡り,各自適当な場所で竿を出す。

 

 

船着場の前に休憩用の小屋があり,イカダはそこを中心に右・左・正面に四角形を

作るようにつないである。マサさんとM島コンビは左へ,他の5人は右のイカダへ。

仕掛けは,竿と手釣り用の2種類を用意してある。まず,竿の方を準備した。

昔買ったままでほとんど使ったことのない1.3mのイカダ竿(ニッシン「旭光波」)に,

道糸2号・ハリス1.5号・ハリはアブミ11号。7時20分ごろ,期待をこめて第1投。

干潮の時刻をちょっと過ぎたところ(満潮は午後1時前)で,これから満ちてくる。

潮は,予想に反して全く流れず。歌と言えばフェリー桟橋のイメージがあるので,

かなり速い潮が流れるんじゃなかろうかと思ったが・・・水深は6mくらいか。

右手の養殖イカダの近くにマキエをして狙ってみるが,魚の反応なし。

釣り始めて間もなく,左のイカダの外向きで釣っていたKさんの声が聞こえた。

チヌをハリ外れでバラした様子。その後もしばらくは,各自何らかの当たりがあった

ものの,魚は上がらない。小屋の近くで竿を出していた俊介君には何度かまともな

魚の魚信があったが,ハリに乗らず。隣で釣っとんのに,こっちには当たりが来んな〜

と思っていたら,なんか当たり。上がってきたのは,かろうじて煮付けサイズのホゴ

 

その後当たりがないので,手釣りの仕掛けも出してみた。1.5mのハリス兼用の

茶色い道糸を数センチのゴム管に通した後,ハリを直結。既に半分諦め状態の

マサさんがヒマをもて余して見物に来たので,実地にやってみた。サシエをつけて,

真下へ投入。着底したところで糸を張ると,確かな魚の当たり!

「おっ,おっ,当たっとる!」・・・タイミングを見計らって,右手で一気に糸を・・・!

 

空振り!残〜念!

 

ちゅうか,全然タイミング合ってない。合わせの動作がニブすぎ。

何が名人じゃ,こら!

本番で魚が掛からんことを祈る名人。情けな〜!

 

8時を回ってからは全く魚信が途絶え,風も強まってきた。

みんなあちこちウロウロしたり,小屋へ入って休憩したりで,緊張感まるでなし。

このイカダからはフェリー桟橋も見えるが,釣り人が入っているのがわかる。

「向こうの方は釣れとったりしてなー」

「誰か知った人が入っとるんじゃないんか,コウマさんとか」

「ありそう,ありそう」

 

満潮までに潮が流れる時間帯があるじゃろ,と思いきや,潮はピクリとも動かず。

途中で地元のダンゴ釣りの常連さんが1人来られたが,あちらも上がってない様子。

そうこうするうち,タクさんの携帯にSATさんから国際電話が。真ん中に浮かぶ

イカダの際がいいという情報をもらって,そのあたりを攻めてみるがノーヒット。

昼が近づくころには,寒さに耐えきれずみんな小屋へ避難して,まじめに竿を出して

釣りをしとる人はほとんどおらん状態。明日の主役のチヌ,どうすんじゃ〜!

 

小屋へ入ってふと携帯を取り出すと,知らんうちにメールが入っていた。

ドンピシャ,コウマさんから。「朝の5時から8時までフェリー桟橋で竿を出して,

32〜35cmのチヌを3枚ゲット」という,衝撃的な情報であった。

こっちはほんの数百m離れたトコで8人で竿出して,全員ボウズじゃっちゅうのに!

こんなことになるんなら,マサさんだけ別行動で瀬戸田へ行ってもろうて,キープ用

のチヌを確保しといてもらうんじゃったー!しかし,後の祭り。

 

昼ごろになってようやく,ツカポンさんも到着。

しかしその後も魚が釣れそうな気配はなく,2時になって取材スタッフも到着した。

このあとは,明日のカメラテストなどの打ち合わせ。しかし,せっかくの釣り番組で

チヌの実物がないのも寂しいので,みんなには先に陸へ上がってもらって,何とか

チヌを釣って来てくれい!と頼んだ。潮はもう下げに入っているが,向こうの桟橋

ならチャンスはある。最悪,コウマさんをならって明日の5時ごろフェリー桟橋で

釣らにゃいけんか?とも思ったが・・・

 

打ち合わせ中も「早う誰か『釣れたでー』いうて電話くれんかなー」と思っていた

ところ,3時半を回ってついにマサさんから電話。フェリー桟橋でチヌ2枚ゲット!

ということで,や〜れやれ。打ち合わせを終えて桟橋へ行ってみると,係留してある

船の横のベストポイントでマサさんが1枚,反対側(左手)のカドでKさんが1枚,

どちらも35cm級のチヌを釣り上げていた。これで,取材の準備は完了!

船頭さんにチヌの入ったスカリを預かってもらい,この日は解散した。

 

この後,俊介君を積んで山陽道経由で福山・春日のレジャックスへ。

ここで俊介君と別れたが,まだやることがある。まずは,店へ入る。

店員さんに向かって,こう言いましたね。

「あの〜,すいません。いかにも釣り人ふうに見える服,ありますか?

なんやコイツ?とか思われたじゃろな。

これには,わけがあるのです。

先日購入したばかりのDVDレコーダーに,今までに自分の出演した番組を

収めるために,改めて見直すと・・・

 

毎回,同じ服着とる!

 

しかも,全然釣り師に見えん。極めつけは,おととしの7月・瀬戸田での取材。

チヌ釣りコンペということで5人が並んでカメラに収まったが,ほかの4人の

釣り人と違う風体のヒトが1人だけ混じっているのであった。どっから見ても,

そこらへんを歩いとったオッサンを適当につかまえて来たようにしか見えん。

これではいかん。番組ではたぶん「名人」とか紹介されるじゃろうし,せめて

服装だけでもパリッとせにゃ!というわけで,防寒着とライフベストを購入。

しめて1万円くらい。ふだん着ると汚れるし,特別の日だけの服にしよう。

 

この日はさらに,春日から福山市街を抜けて,横島へ。

明日の取材に使うカキを調達するためだ。いつも使う松永で採ったカキは

泥だらけで,見た目が悪すぎる。既に真っ暗になった浜へ降りてカキ採り。

ヘッドランプつけてカキ採るの,もしかしたら初めてかもしれん。

帰宅してフロへ入ってビール飲んで,明日に備えて早めに寝た。

 


 

 

 3月14日(月)

 

この日も,天気予報はあまりよろしくない。

スタッフの皆さんは5時ごろから準備を始めているそうで,暗いうちは

どのみち釣りにならんので,6時に俊介君と待ち合わせ。

イカダへ行くとさっそく準備とリハーサル。釣りをする時間はなさそう。

しばらくして,俊一さん・ゴトウさん・SHIMOMIさんも合流。

カメラに入るよう,固まって座ってもらった。

 

出番は,次の2回だった。

 

(A) 7時40分ごろ : 中国地方のみ放送(3分半)

(B) 8時5分ごろ: 全国放送(1分半)

 

時間の都合で,(A)と(B)では次のように流れが違っていた。

 

(A) @ カキを割ってハリを刺す。

      A 重さの違うもう1つのカキと並べて,使い分けの説明。

      B サシエを投入(水中カメラで撮影)。

      C かぶせ釣りの魅力についてインタビュー。

      D 魚拓を見せる。

 

(B) @ カキを割ってハリを刺す。

      A 即,サシエを投入(水中カメラで撮影)。

 

つまり,(B)は時間が短いので,(A)のACDをカットするわけだ。

で,本番。緊張はしてなかったが,何度もリハーサルを繰り返したせいか

集中力がキープできてなく,(A)のAのところで,間違えて手に持ったカキを

即投入してしまったのだった。レポーター役の江崎アナに注意されて,慌てて

「あ,すいません」と言うワシ。しっかり音が入ってましたね。ぶち恥ずかしー!

 

江崎さんにうまくフォローしていただいたけど,せっかくあれだけ練習したのに。

まあしかし,全国放送の方はスムーズにいったし,水中カメラの映像も斬新

じゃったし(カメラマンさんお疲れ様でした。すごい技術じゃ思いました),

最後に右隣の人のパフォーマンスもあったし(笑),おおむね成功というところ。

 

それにしても今回の取材で改めて感じたことは,わずか数分の放送のために

あれだけ大勢のスタッフがかかわって,準備にも相当の時間をかけていたこと。

テレビ局の仕事の大変さを間近に見ました。江崎さんは夕方のニュースにも

出演されるわけで,体力的にも大変ですね。

 

 

今回初めて歌のイカダへ行ったわけですが,14日に釣りに来ておられた地元の

常連の方に伺ったところ,今年は1月から50cm近い型も上がっていて,ここは

年中チヌが釣れるとのこと。日曜日はたまたま釣れませんでしたが,船頭さんにも

とても親切にしていただき,機会があればまた行ってみたいと思いました。

歌フェリー乗り場手前にある漁協で聞けばいろいろ教えてもらえるので,興味の

ある方は行ってみてください。出船時刻は朝7時です。

 

追記: うちのヨメのお母さんによれば・・・

         「1回目の放送の最後のとこで,隣の人になんか釣れたんじゃないん?

           2回目(全国版)のときに,その魚が出てくるじゃろ思うて待ちよった

          のに,どうなったん?」 --- だそうです,ゴトウさん。