2013/3/17 up

大人の英文法−018  単純未来と意志未来  

 

017 未来を表す形」で示した,will を使った文をもう一度見てみましょう。

He will move next month. (彼は来月引っ越すだろう)

will の意味としては,中学で「〜だろう」「〜するつもりだ」の2つを学びます。

では上の文は,「彼は来月引っ越すつもりだ」という意味にはならないのでしょうか

英語の指導者の中にも,この疑問に正しく答えることのできない人が大勢います。

皆さんはどうですか?理屈で説明できなくてもかまいません。上の文を「彼は来月

引っ越すつもりだ」の意味に解釈できるかどうかを,直感で答えてください。

その答えが正しければ,あなたには一定の英語感覚が身についています。


 

答えを言いましょう。ノーです。上の文が「彼の意志」を表すという解釈は成り立ちません。

【参考】 ただしwillを強く読めば,「彼はどうしても来月引っ越すつもりだ」という意味になり得ます。

このことを理屈で理解するためには,3つの文法知識が必要です。順に説明します。

(1) 単純未来と意志未来

私たちが中学生の頃にはこの用語を習っていましたが,近年の中学校の教科書は

文法用語をなるべく使わない傾向にあるので,中学生は知らないでしょう。

おおざっぱに言えば,単純未来とは「〜だろう」,意志未来とは「〜するつもりだ」と

いう意味を表す形です。

助動詞の will は,もともとは「意志(するつもりだ)」を表す動詞でした。名詞の will 

には今でも「意志」の意味があります。つまり,will の基本的な意味は「意志」です。

だから I will 〜 のように自分を主語にして言うときは,意志未来(〜するつもりだ)

の意味で使うのが普通です。しかし自分以外の人が主語のときは,その人がどう

思っているかは本人でなければわからないので,たとえば He will 〜 を「彼は

〜するつもりだ」の意味では使いません。元の意味は「彼は〜する意志がある」

だったとしても,それは話し手の推測にすぎないので,「彼は〜するだろう」という

単純未来の意味になるわけです。

(2) 意志動詞と無意志動詞

次の2つの文を比べてみましょう。

(a) I will buy a new PC. (私は新しいパソコンを買うつもりだ)〈意志未来〉

(b) I will be busy tomorrow. (明日は忙しくなるだろう)〈単純未来〉

(a)の will は「私」(話し手)の意志を表します。「私は新しいパソコンを買うだろう」

(単純未来)の解釈だと,自分の行動を自分で推測することになるので変ですね。

一方(b)は,自分の意志で忙しくするという意味ではないので,単純未来です。

この違いは,will の後ろに置かれる動詞の性質に関係しています。

英語の動詞の分類の1つとして,次の区別があります。

意志動詞=自分の意志でコントロールできる行為を表す動詞

無意志動詞=自分の意志ではコントロールできない状態などを表す動詞

たとえば go や study などは意志動詞です。無意志動詞の代表は be動詞です。

become(〜になる)やsucceed(成功する)などは,意志動詞としても無意志動詞

としても使います。次の例を見てください。

(a) I will pass the test. (私はそのテストに合格するつもりだ)〈意志未来〉

(b) I will not pass the test. (私はテストに合格しないだろう)〈単純未来〉

(a)では「自分の意志でpass(合格)する」と言っていますが,合格するかどうかは

必ずしも本人の意志では決まらないので,(b)のpassは無意志動詞としての用法

です。このときwillは「〜だろう」(will notは「〜ではないだろう」)の意味になります。

(3) 人称

人称とは,「自分」「相手」「それ以外」を区別する名詞・代名詞の形のことです。

人称には,1人称(I,we),2人称(you),3人称(その他)の3つがあります。


will の意味は,主語の人称と後ろの動詞によって次のように異なります。

 

主語が1人称

主語が2人称

主語が3人称

単純未来

I will+無意志動詞

私は〜だろう

You will+無意志動詞

君は〜だろう

He will+無意志動詞

He will+意志動詞

彼は〜だろう

意志未来

I will+意志動詞

私は〜するつもりだ

Will you+意志動詞?

〜してくれませんか

×

この表から,次のことがわかります。

・〈will+無意志動詞〉は「〜だろう」の意味を表す。

・主語が3人称のときは,〈will+意志動詞〉も「〜だろう」の意味を表す。

・主語が3人称のときは,will が「〜するつもりだ」の意味を表すことはない。

なお,主語が2人称のときの例を1つ挙げておきます。

Will you help me? (手伝ってくれない?)

この文は元の意味は「あなたは私を手伝うつもりがありますか」です。したがって

will は意志未来(〜するつもりだ)を表しますが,youを主語にした意志未来のwillは

この例のように「〜してくれますか」という依頼の意味を表すのが普通です。

整理します。中学では will の意味として「〜だろう」「〜するつもりだ」の2つの意味を

習いますが,will が「〜するつもりだ」の意味になるのは主語が1人称(I,we)の

ときだけです。


 

参考までに,be going to についても見ておきましょう。

 

主語が1人称

主語が2人称

主語が3人称

単純未来

(a)I'm going to

+無意志動詞

私は〜しそうだ

(b)You're going to

+無意志動詞

君は〜しそうだ

(c)He's going to

+無意志動詞

彼は〜しそうだ

意志未来

(d)I'm going to

+意志動詞

私は〜する予定だ

(e)Are you going to

+意志動詞?

〜する予定ですか

(f)He's going to

+意志動詞

彼は〜する予定だ

※be going to の場合は普通は「単純未来」「意志未来」とは言いませんが,will と対比する方が

   わかりやすいので上のように表記しておきます

(a)〜(f)の例を挙げておきます。

(a) I'm going to be busy tomorrow. (私は明日は忙しくなりそうだ)

(b) You're going to be busy tomorrow. (君は明日は忙しくなりそうだ)

(c) He's going to be busy tomorrow. (彼は明日は忙しくなりそうだ)

(d) I'm going to move next month. (私は来月引っ越す予定だ)

(e) Are you going to move next month. (あなたは来月引っ越す予定ですか)

*youが主語で「〜する予定だ」の意味のときは疑問文で使うのが普通です。

(f) He's going to move next month. (彼は来月引っ越す予定だ)

 

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