2015/7/18 up

大人の英文法102−接触節 

 

098 の表を再掲します。

 

先行詞が人

先行詞が人以外

主格

(a) who/that

(b) which/that

所有格

(c) whose

(d) whose

目的格

(e) who(m)/that

(f) which/that

 

学校ではたいてい,上表の赤字の関係詞,つまり目的格の関係代名詞は省略できると習います。

学校の教壇に立っていた頃,私も生徒にそういうふうに教えていました。

実際には省略されるケースの方がずっと多いので,次のような和文を瞬時に英訳する力をつけることが大切です。

 

(a) 私がきのう読んだ本は面白かった。

 

私は高校や予備校で教えていた頃,学習者の英語力を測るためによくこの文を使っていました。

上の和文を英語に直してみなさいと尋ねたとき,それができる生徒はだいたい偏差値50を越えています。

つまり,上の和文を次のように正しく英訳できるようになることが,英語学習者が乗り越えねばならない大きな壁の

1つだと言えます。

(a) The book I read yesterday was interesting.

この文では下線部が関係詞節であり,前の the book を修飾しています。

先行詞と関係詞節とが直接触れ合っているという意味で,このような形を「接触節」と言います。

「bookの後ろにwhich(またはthat)が省略されている」と理解してもかまいませんが,次のように覚えましょう。

S+V+O. = SはOをVする 〈完成した文〉

O+S+V  = SがVするO 〈名詞のカタマリ〉

 

このように,SVO(+α). という形の文からOを頭に出すと,OSVという名詞のカタマリができます。

I read the book (yesterday). (私は(きのう)(その)本を読んだ) <完成した文> 

S   V        O

→  the book I read (yesterday) (私が(きのう)読んだ(その)本) <名詞のカタマリ>

            O       S   V 

→ のフレーズは全体として1つの名詞の働きをするので,より大きな文のS・O・Cのどれかになります。

なぜなら,一般に名詞(という品詞)は,文の要素としてはS・O・Cのどれかの働きを持つからです。

文の要素

S(主語)

V(述語動詞)

O(目的語)

C(補語)

修飾語

品詞

名詞

代名詞

動詞

名詞

代名詞

名詞

形容詞

形容詞

副詞

   → 016 品詞と文の要素の関係

(a) The book I read yesterday was interesting. (私がきのう読んだ本は面白かった)

(b) I lost the book I read yesterday. (私がきのう読んだ本をなくした)

(c) This is the book I read yesterday. (これは私がきのう読んだ本です)

黄色い部分が,(a)では文全体の中でSとして,(b)ではOとして,(c)ではCとして働いていることを確認してください。

こうした文を自在に作るためには,まず SVO→OSV のパターンを体得することが大切です。

以下の例は,2015年6月発売の自著「中学・高校英語を10時間でやり直す本」(PHP文庫・小池直己氏と共著)

からの抜粋です。

(1) I took a photo at the garden. (私はその庭で写真を撮った)

→ a photo I took at the garden(私がその庭で撮った写真)

→ This is a photo I took at the garden. (これは私がその庭で撮った写真です)

(2) I like the color.(私は(その)色が好きだ)

→ the color I like(私が好きな(その)色)

→ Red is the color I like.(赤は私が好きな色だ)

(3) You were talking to the woman. (君は(その)女性と話していた)

→ the woman you were talking to (君が話していた(その)女性)

→ Who’s the woman you were talking to? (君が話していた女性は誰なの?)

(4) I fell in love with the girl. (ぼくは(その)女の子が好きになった)

→ the girl I fell in love with (ぼくが好きになった(その)女の子)

The girl I fell in love with was my close friend’s sister.(ぼくが好きになった女の子は親友の妹だった) 

     ※(3)(4)では,先行詞は厳密には前置詞(to,with)の目的語です。

 

ここで,もう一度最初に挙げた例を確認しておきます。

(a) 私がきのう読んだは面白かった。

    → The book I read yesterday was interesting.

この和文の英訳が多くの学習者にとって難しいのは,「私が」という冒頭の

日本語を見た瞬間に,I で文を始めようとするからです。

日本語は「修飾語+本」,英語は「本+修飾語」(後置修飾)ですね。

この違いを,多くの文を自分で作ることによって十分に理解してください。

 

最後に,次の疑問に答えておきます。

「主格の関係代名詞は省略できないのに,目的格の関係代名詞が省略できるのはなぜか?」

(a) Jack was the man who killed Betty.(ジャックはベティを殺した男だった)

(b) Jack was the man (who(m)) Betty killed. (ジャックはベティが殺した男だった)

(b)の who(m) は省略できますが,(a)の who は省略できません。その理由は次のとおりです。

(a)でwhoを省略すると,Jack was the man killed Betty. となります。これだと,was と killed のどちらが

文全体のV(述語動詞)であるかがわかりません。一方(b)のwho(m)を省略すると次のようになります。

(b') Jack was the man Betty killed

この場合,文全体のVは was であるという解釈しか成り立ちません。なぜなら killed は他動詞であり,

後ろにOが必要だからです(つまり Betty killed. という文は成り立ちません)。したがってこの文を聞いた

人は,自動的に「killedの後ろにOがない → the manがkilledのOの働きをしている → the man Betty 

killed というフレーズは,OSV(SがVするO)という名詞のカタマリだ」という思考回路を働かせます。

別の言い方をするなら,(a)でも(b)でも,聞き手は Jack was the man までを聞いた時点で「この後ろには

manを修飾する言葉が続くはずだ」と推測します(この場合,the は後ろに修飾語が続くことを予告する

働きをしています)。そこで the man の後ろに Betty killed があれば「ああ,Betty killed がthe manを

修飾しているんだな」と納得します。しかし((a)でwho を省略した形のように)the manの後ろが killed だと,

Jack was the man killed Betty. の下線部が独立した文として成り立ってしまい,文の途中から別の文が

始まっているかのように響くのです。もう1つ例を見てみましょう。

(c) I have an uncle who is a laywer. (私には弁護士をしているおじがいます)

→ × I have an uncle is a laywer. 

×の文は,have と is のどちらがVなのかわかりませんね。つまり,(c)のwho(主格の関係代名詞)は

省略できません。なお,I have a lawyer uncle. と言うこともできません。関係代名詞をうまく使えずに,

次の例のような誤った英文を作ってしまうケースがよく見られるので注意してください。

「あれが私の働いているオフィスです」

× That is my working office.

    That is the office I work in.

○の文は,That is the office. + I work in it [the office]. から考えます。

ただしこの和文の場合,最も自然な英訳は That's my office. であることもお忘れなく。

 

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