2016/1/10 up

大人の英文法109−自由関係詞 

 

関係代名詞の what は,一般に「先行詞を含む関係代名詞」と説明されます。

(a) I can't believe what he said. ≒ I can't believe the thing(s) that he said.

(私は彼の言ったことが信じられない)

このように,what はしばしば the thing(s) that に置き換えて考えることができます。

では,「先行詞を含む関係詞」とは,what だけでしょうか?次の例で考えてみます。

(b) That's where the accident happened. ≒ That's the place where the accident happened.

(あそこが事故の起きた場所です)

左側の文では,where(関係副詞)の中に先行詞(the place)が含まれていると考えることができます。

学校では一般に「whereの前に先行詞が省略された形」だと説明しますが,(a)と(b)を対比して考えると,

(a)の what も(b)の where も「先行詞を含んでいる」と理解する方がシンプルです。

このような関係詞について,「現代英文法講義」に次の説明があります(p.194)。

「先行詞をそれ自身の中に含んでいる関係詞を複合関係詞と言う。…生成文法では,先行詞がなくても

存在できるという意味で,自由関係詞と呼ばれることが多い。」

この理屈に従えば,(a)の what は自由関係代名詞,(b)の where は自由関係副詞です。

自由関係詞の用法をまとめると,次のようになります。

@where・when・why および who は,自由関係詞として使うことができます。

Awhat・how および -everで終わる関係詞は,常に自由関係詞として使います(先行詞を持ちません)。

@の例を追加しておきます。(-everで終わる関係詞については後述)

(c) Monday is when I'm busiest. ≒ Monday is the time [day] when I'm busiest.

(月曜日は私が一番忙しい時[日]です)

(d) That's why he lost his job. ≒ That's the reason why he lost his job.

(そういうわけで彼は失業した)

(e) John isn't who he used to be. ≒ John isn't the person that he used to be.

(ジョンは以前の彼ではない[以前とは別人だ])

(e)に着目してください。この文の who は自由関係代名詞で,「〜である[する]人」という意味を表します。

(whoにこんな使い方があるのか?と思った人は,手持ちの英和辞典で確認してください)

ここで,疑問を持つ人は多いでしょう。学校では次のような形を習うからです。

(f) John isn't what he used to be.

(ジョンは以前の彼ではない)

しかし,(e)と(f)は意味が違います。

(e)の who he used to be は「彼が以前そうであった人物」,

(f)の what he used to be は「彼が以前そうであったもの」です。

したがって,「ジョンは以前とは人格が変わった」と言いたいときは,(e)を使います。

((英語教師を含めて)多くの日本人は,この点を誤解しています)

(f)は「ジョンの地位・財産・能力などが10年前とは違う」と言いたい時には使えます。

(g) Ichiro isn't what he was ten years ago.

(イチローは10年前の彼ではない)

野球選手のイチローに関してこの文を使うと,「イチローの実力は10年前より衰えた」と

いう意味に解釈されます。「性格が変わった」という意味にはなりません。同様に

The actress isn't what she used to be. なら,「その女優の人気は以前の比ではない

(人気が高まった[衰えた])」あるいは「その女優は以前に比べると美しくなった

[美貌が衰えた]」などと解釈される可能性が高いでしょう。

 

ただし,「ジョンは以前の彼ではない(別人だ)」という意味を表したければ,

たとえば John has become a different person. などと言えばよいわけで,

ことさらに関係詞を使う必要はありません。

what he used to be 型の表現は大学入試には非常によく出ますが,

実用面から言えば知らなくてもよい知識でしょう。

 

※以下の記事は,2016年2月4日に加筆したものです。

読者の方から「自由関係詞の who は古風な表現ではないか」という質問がありました。

これについてここでお答えしておきます。

自由関係詞の who は無制限に使えるわけではなく,基本的に〈who+S+be動詞〉

形(およびその変形)で使うと覚えておけばよいでしょう。この形なら日常的にも使われます。

たとえば次のような文は自然でしょう。日本語は森山直太郎の歌に歌詞に似ていますが。

I'm not who you think I am. (ぼくは君が思っているような人間じゃない)

 

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