2016/7/9 up

大人の英文法117−be動詞 

 

まず学校英語のおさらいとして,「英語のしくみ」で取り上げている例文を示します。

@ He is an engineer. (彼は技師だ)
    
S   V        C

A His office is in Shibuya. (彼のオフィスは渋谷にある)
S         V        A

学校英語では,@はSVCですが,AはSVだ(in Shibuya=修飾語)と説明します。

一方,7文型や8文型の考え方では,AはSVAです(→115 5文型と7・8文型)。

@もAもSVだけでは意味をなしませんが,@のisはいわゆる連結詞であり,〈S=C〉の関係を表します。

一方Aのisは「ある,存在する」という実質的な意味を持っており,後ろには場所を表す語句が必要です。

端的に言えば,be動詞は@では「〜である」,Aでは「〜が〈場所〉にある」という意味です。

 

B He is working now. (彼は今仕事をしている)
S       V          修飾語

この文は学校英語ではSVですが,isは進行形を作るパーツであり,@Aのisとは違う用法です。

品詞の違いで言えば,@Aのisは(be)動詞ですが,Bのisは助動詞です

 

しかし,たとえば「一億人の英文法」では@〜Bの is は同じものという立場を取っており,そのような

考え方をする人々も少なくありません。その立場からは,次のような一般形が想定できます。

S+be+X=SはXの場所に[の状態で]存在している

 

この理屈を使えば,上の3つの文を次のように説明できます。

@=彼は技師の状態[技師として]で存在している。

A=彼のオフィスは渋谷の中に存在している。

B=彼は今働いている状態で存在している。

 

そのように解釈した場合,Bのworkingの品詞をどう扱うかが問題になります。

B He is working. / C He is sick.

      S   V     C(?)                   S   V    C

Cは「彼は病気の状態で存在している」という意味です。

Bが「彼は働いている状態で存在している」という意味だとしたら,

Bの working はCの sick と同じ機能を持つと考えるのが自然です。

つまりBの working は形容詞であり,Bは SVC だ,ということです。

この説明には,それなりの説得力があります。

学校で習う説明によれば,形容詞には限定用法と叙述用法があります(→083 形容詞の働き)。

したがって working は形容詞だと考えれば,次のような説明が可能です。

(a) She is a busy [working] mother. (彼女は忙しい[働く]母親だ)

                          限定用法の形容詞

(b) His mother is busy [working]. (彼の母は忙しい[働いている])

                                    叙述用法の形容詞

つまり,形容詞のworking が(a)では限定用法,(b)では叙述用法で使われていると考えるわけです。

「一億人の英文法」などは基本的にこの立場です。working 自体に「働いている」という意味がある

わけですから,この説明は非常に合理的なようにも思われます。

 

しかし,この説明には難点が1つあります。

「英語のしくみ」にも書いていますが,上のBや(b)の working が形容詞だと考えた場合,

「進行形」という時制(より正確に言えば「進行相」という相)は必要ないことになります。

同じことは受動態にも言えます。

(c) He is a respected leader. (彼は尊敬されている指導者だ)

                 限定用法の形容詞

(d) The reader is respected. (その指導者は尊敬されている) 

                            叙述用法の形容詞

学校英語では(d)は受動態を使ったSVの文ですが,上のように(c)でも(d)でもrespectedが

形容詞だと考えれば,(c)も(d)もSVCの文だということになります。そして,(d)のrespectedが

形容詞なら,「受動態」という文法概念は必要ないことになります。

 

もう1つ例を挙げてみましょう。

D The game has been canceled. (試合は中止になっている)

                S                 V           C(形容詞)

この例でも canceled を「中止されて」の意味の形容詞だと考えれば,この文の構造は

He has been sick. (彼は病気になっている)などと同じ(SVC)だと説明できます。

この場合「進行相の存在は認めないが,完了相の存在は認める」ということになります。

しかしそれは,ちょっと具合が悪いと言えば悪いですね。進行と完了は対になる概念だ,

と理解する方が学習者にとってはわかりやすいでしょう(→008 時制と相)。

 

このように,be動詞の働きをどう説明するかについては大きく分けて2つの立場があります。

どちらを取るかは難しい選択ですが,この「大人の英文法」では基本的に従来どおりの

学校英語に沿った説明を行っています。

 

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