2002/03/03 up

コブダイに寄せて

 

今日,生名島・深浦の波止で,釣り情報誌の取材があった。

参加者は結局,次の9名にまで膨らんだ

倉敷からマサさん&タクさん・三原からフルカワさん&友井さん・

福山方面から俊一さん&お友達・SATさん・コバさん・まるさ

(後から行った波止には,井原のヤスさんも来ておられた)

お互い初対面の人も多く,みんな楽しい一日を過ごせたと思う。

釣果はここには書けないが,全員魚の顔は見た,とだけ言っておこう。

 

さて,本題に入る。

担当の記者さんからは事前に,「できればチヌまたはアイナメ狙いで」と要望が出ていた。

コブダイではちょっとダメらしい。

なぜか?

雑誌の側の気持ちはわかる。

一般にかぶせ釣りの主なターゲットとされているのは,やはりチヌとアイナメだろう。

だから雑誌でかぶせ釣りを紹介する場合,チヌ・アイナメをメインに据えたいと考えるのは

当然のことだ。

 

しかし,このHPでは何度も言っているとおり,波止からのかぶせ釣りを始めた人が

最初にヒットさせる魚は,コブダイであることが圧倒的に多い。

そして,ファーストヒットでコブダイを取り込めるケースは少ない。

ハリスが切れるからだ。

 

ここから,道は2つに分かれる。

 

@「コブダイは掛かっても取り込めないものと諦めて,その他の魚(チヌなど)を狙おう」

A「いずれはいろんな魚を釣りたいが,まずはあのバラしたコブダイを絶対釣ってやる!」

 

@のように考える人は,ほとんどいない。

コブダイとのファイトを一度でも体感した人は,ほとんど例外なくショックを受ける。

それまで味わったことのない強烈な引きを体験するからだ。

そして,誰でも一度はAの道に進むことになる。

 

コブダイを釣り上げるには,特殊な仕掛けが必要になる。

波止からのかぶせ釣りには2つの種類がある,と考えた方がわかりやすい。

1つはチヌその他の魚を狙う世間一般で言うところのかぶせ釣りであり,

もう1つはコブダイを釣るかぶせ釣りである。

両者の共通点は,「カキを使う」というだけで,あとは全然スタイルが違う。

そして,コブダイ狙いのかぶせ釣りは,新しい1つの釣りのジャンルとなりうると思う

なぜなら,このHPからもわかるとおり,かぶせ釣りを始めた人の何割かは,「コブダイ釣り師」の

道に進んでいくからだ。

 

それくらい,コブダイには他の魚にない魅力がある。

3号ハリスを当たり前のようにブチブチ切っていく魚が,そこらのファミリー釣り場をうろついて

いるなど,この釣りをやらない人には到底信じられないだろう。

実は今日も,コブダイ用に特殊な仕掛けを準備していた。(結局使わなかったが)

船釣り用の15号の道糸を糸巻きに巻いて,ハリスにはケプラー糸の10号を使用,

ハリはぶっといグレバリの11号,竿はなし,という異常なタックルである。

根掛かりしたときのことは,考えたくない。

竿を使わないのは,折られるからである。現に今日,折られた人もいる(それ以上はヒミツ)。

ワイヤーハリスを使う人もいる。

念のために言うが,ここは瀬戸内海。まあ普通なら,冗談にしか聞こえない。

 

こういう仕掛けを使っても,現在のうちのHPのコブダイランキングの最長寸は68cmにすぎない。

瀬戸田ではメーター級も上がっており,田島・横島あたりにも70cm級ならざらにいると思われる。

高い金出してハワイや小笠原へ行かずとも,自宅から30分ほどのファミリー釣り場でGT並みの

ファイトが楽しめるわけだ(実際にGTを釣ったわけじゃないが)。

 

釣りのターゲットしてはそれほど魅力的なコブダイが,なぜ世間では低く見られるのか?

いろんな理由が考えれる。たとえば ---

1.一般の人は,コブダイという魚をほとんど知らない。

2.チヌ釣り師は,コブダイを外道扱いする。

3.コブダイは食べてもまずいので価値が低い(と思われている)。

 

1については,まあ仕方がない。ただ,単に大きいだけでも人を感心させる力はあるので,

むしろ1よりも2や3の理由が大きいのではないかと思う。

 

2については,好みの問題だからどうこうは言えない。

チヌはメバルと並んで「1年中これ専門に狙う」というコアなファンの多いターゲットである。

その人たちにとっては,カワハギもカサゴもアジもベラもすべて「外道」にすぎない。

しかし,かぶせ釣り師の全員がそうした「チヌ至上主義者」であるとは限らない

現に,ぼくは違う。

かぶせ釣りに関して言えば,釣りの妙味はチヌよりカワハギ類の方が断然上だし,

これらの外道は食味も決してチヌに劣らない。

コブダイの場合,釣り味の評価は人によって違う。

引きは確かに強烈だが,置き竿の向こう合わせでもハリに乗るというのは面白くない,

と考える人もいる。

食味について言うと,コブダイは一部で言われるような不味い魚ではない。

刺身・フライ・鍋物などで,美味しく食べられる。

 

極端に言えば,一種の偏見だろう。

チヌ至上主義者にとっては,確かにコブダイは「招かれざる客」にすぎない。

アイナメやカレイですらそうかもしれない。

しかし,「かぶせ釣りとはこうあるべき」というようなワクをはめる必要は全然ない。

楽しみ方は,人によって違う。

そして,コブダイという魚は確実に,一定の割合の人々を魅了する。

ちょうどソフトルアーのメバル釣りがブームになったように。

コブダイ釣りには,それに似たゲーム性がある。

 

そもそも,「カキを使ってチヌを釣る」ことには必然性がない。

フカセやダンゴの方が,よく釣れるからだ。

そういう意味で言えば,備後地方において「カキで釣ることに必然性のある魚」とは,

コブダイ・アイナメ・イシダイの3種である

これらの魚は,他のエサよりもカキによく反応する。

特にコブダイは,ほとんどカキでないと釣れない,と言ってよい。

要するにコブダイという魚は,まさにかぶせ釣り師のために存在する魚なのだ。

ぼく自身はコブダイ至上主義者ではないが,コブダイをかぶせ釣りの対象から外す気には

どうしてもなれない。

 

磯釣りにも,グレを狙う上物師とイシダイを狙う底物師とがいる。

かぶせ釣りがもう少しポピュラーな釣りになったら,「チヌ釣り師」「コブダイ釣り師」

「ハゲ釣り師」のように細分化されていくかもしれない。

「コブダイマスター」になれそうな人たちは,うちのHPにもたくさん来ておられるのだから。