釣りの対象魚については「釣魚アルバム」の方でも触れていますが,その他の魚の味についてもちょっと言いたくなったので・・・。単なる個人的な偏見です。グルメの方,すいません。

※ このページの写真は,次の資料から採らせていただきました。

<A>「釣りの魚」(保育社)<著:岩井保 / 写真:伊藤勝敏>

<B>「海水魚」(山と渓谷社)<著:益田一>


■ アユ <A>

義兄がアユ釣り専門の人で,夏になると広島の大田川で釣れたアユを分けてくれます。塩焼きで食べます。このアユが実にうまい。もちろん純粋な天然物ではなく,琵琶湖で育てた稚アユを放流したものですが。川魚特有のさっぱりした味で,いくらでも食べられます。冷凍しておいてもあまり味が落ちません。刺身や背ごしでも食べてみたけど,これは今ひとつピンときませんでした。やはりアユは塩焼きをたで酢(最近は市販品あり)で食べるのが最高です。

■ イカ

生け簀料理店の魚は総体的に今イチですが,活きたイカだけは美味しく食べられます。ヤリイカ・スルメイカなど細長いイカもいいけど,どちらかと言えば丸っこいイカの方が好みです。家庭料理で一番好きなのは,コウイカと里芋の煮付け。瀬戸内地方でよく釣れる10cmほどのベイカ(地方名チイチイイカ)も,刺身で食べると柔らかくて美味。ただ,イカにはあんまり自信がありません。イカ刺しとか沖漬けとか一夜干しとか,北海道や山陰で獲れたてのをきちんと食べたことがないので,不幸なことに「感動的なイカ」というものにはほとんど出会ったことがないのです。恥ずかしい話,中華料理の炒め物で出てくるイカ(たぶんアオリイカ)なんかには本当に感動するんですが・・・。素人が調理しても包丁使いや火加減がデタラメなので,あの食感は再現できません。あ,そうそう。まずかったイカならたくさん経験してます。最近では,スーパーで200円くらいのパックに入って売ってたイカソーメン。見事なまでに,イカの味が全くしませんでした。太い輪ゴムを食ってるような感じ。イカをどういうふうに保存したらあんな味になるんじゃ〜。

■ イワナ / アマゴ(ヤマメ)<A>

これらも,残念ながら養殖物しか食べられません。どっちも美味しい魚ですが,強いてどちらか選ぶとしたらヤマメかな〜。もちろん,渓流釣りをしたことがなく養殖物の味でしか比較できないので,渓流釣り師の方々から見ればレベルの低い味覚だろうと思いますけど。(写真はイワナ)

■ カツオ <A>

昔はカツオの刺身はあんまり好きではなかったけど,スーパーで買ったのを食べているうちに好きになりました。こういうのも一種の餌付けですかね。本場・高知で食べたタタキはやっぱり美味しかったけど,むしろ上に乗っかったいろんな薬味の味が強く舌に残っています。ああいう食べ方を発明した人は偉い。いろんな魚に応用できます。釣って持ち帰ったチヌやコブダイのような白身魚の刺身でも,食べあきたらネギ・ショウガ・ニンニク・シソなどの薬味を添えてポン酢で食べると別の美味しさになります。なお,カツオの刺身(タタキ)の厚みについては,あれでは厚すぎるという声もあるようですが,ぼくなんかはあの,口をいっぱい頬張って食べるのがカツオの醍醐味のような気がするのですよ。

■ カニ 

マグロと同様,関西以西の人間にはカニ・コンブレックスがあります(ウソ)。まあ何て言うか,ズワイガニもタラバガニもも毛ガニも,西日本(山陰以外)の庶民はお歳暮のクール宅急便くらいでしか味わえない,というのが現実でしょう(カニ料理専門の大衆店はあるけど,ああいうのは論評外)。--- 教えてください海の神様。毛ガニやズワイやタラバに比べて,ワタリガニは格が落ちるんでしょーか。そうかなあ。贈答品の毛ガニより,活きのワタリガニの方がずっとうまいと思うけどなあ。えーもん。どうせわしら,カニ・コンプレックスじゃけん。

■ サワラ <A>

瀬戸内では,岡山名物・祭り寿司でお馴染みの魚。近年瀬戸内海ではサワラの漁獲量が激減し,値も上がっているとのこと。サワラの刺身はうまいという人もいますが,ぼくはあまり好きではありません。肉質が柔らかくて,なんかマイワシを大きくしたような感じです。塩焼きでもサバには負けるし・・・「そこそこ食える魚」といった程度でしょうか。

■ サンマ 

最近ではスーパーにもサンマの刺身が並んでいます。ただ,あれは身に全然締まりがなくて今いち,ていうかマズい。寿司屋で出てくるやつは,結構いけると思います。でも,鮮度のいいマイワシと鮮度のいいサンマを勝負させたら,いい勝負じゃないでしょうか。これはもちろん,サンマをけなしているわけではありません。ところで,サンマはやはり炭火の塩焼きが最高でしょう。居酒屋なら炉ばた焼きで。スーパーで買うサンマは,値段に関係なく「当たり」と「外れ」があるのが難点です。「外れ」は,生だと見分けがつきにくいけど,焼くと一目瞭然。開いたときに内臓がふっくらときれいな形で残っていて,中骨のまわりの肉に血がにじんでいないものが美味。開いたときにワタがぐちゃぐちゃになっているやつを見ると,宝くじに外れたような気分になります。もっとヒドいのは,「生サンマ」と称して塩サンマを売っているケース。責任者,出てこい!買う方も買う方ですが。

■ シイラ  <B>

山陰地方ではマンサクと言い,広島あたりではけっこう魚屋さんで売っているようです。備後地方ではポピュラーな魚ではありません。刺身は食感が柔らかいのが難点。サワラと同格,といったところでしょうか。

■ シマアジ / カンパチ <A>

天然物のシマアジは,確かにうまいです。しかし養殖物は,どうってことない味という感じ。活きのマアジの方が上でしょう。カンパチは,お恥ずかしいけど,養殖物しか食ったことないです。ぼくが今までに食ったあれらは,たぶん養殖物だと思います。あれらが天然のカンパチだったら,世間があれほどカンパチ,カンパチと騒ぐはずないもんなあ。養殖のカンパチは,イナダと区別できません,はい。(写真はシマアジ)

■ ハモ

瀬戸内で捕れたハモは祇園祭までは京都へ全部送るので,その後でないと我々の口には入らない,とうちの親父はよく言います。最近は不景気のせいか,わりに早い時期からハモが食べられるようになりました。で,ハモです。以下,最初に出したときとは文面を変更しています。ちゃんとした店で食べるハモは,すこぶる美味です。私はあまりちゃんとしたのを食べたことがなかったので,先入観を持ってました。さすが京都で珍重されるだけのことはあります。残念ながら,釣りの対象ではありませんが。

■ フグ

昨年,下関へ知り合いの方と二人でトラフグを食べに行きました。一泊二食でお一人様3万5千円の,海に面したフグ料理屋。玄関の前の小さな池に海の水を引いて,フグを泳がせていました。で,食べたんですが・・・お恥ずかしい話,フグ刺しはどこで食べても似たような味にしか感じないのです。いや,美味しいんですよ。以前フグとカワハギを並べて食べたことがあって,そのときは「やっぱフグは違うよなー」と思ったものです。ただ,フグの場合はダイダイを絞った醤油をつけて食べるので,そっちの味の方が口に広がってしまうのです。博多ネギなんか巻いて食べると,なおさら味がわかりません。それと,フグ刺しは食感が抜群なので,味の方までなかなか頭が回らないのかも。しかし,唐揚げは最高です。これは素人でもすぐに理解できる美味しさ。高級な店でなくても美味しいのがちょっと複雑な気持ち。もちろんてっちりもおいしいですが,鍋物で勝負するならアンコウの方が上かも。

■ ブリ(ハマチ) / ヒラマサ <A>

イナダって,うまいですか?関東ではサケ,関西ではブリと言うくらいで,正月のブリ,いわゆる寒ブリは最高です。しかし,ワラサはともかくイナダはどうも・・・。ブリの最も美味しい大きさというのは,やっぱり7〜8kg級以上じゃないかなあ。最近は東京でも「ハマチ」を出す店が増えていますが,あれはやっぱり養殖物だということを良心的に示そうとしているんでしょうね。ハマチと名のつく魚を食って「うまいなあ」と思ったことは,一度もありません。ところで,ぼくはヒラマサは一度しか食ったことないです。「これがあの有名なヒラマサか」と心して食べたんだけど,ブリとどう違うんだ?という感じではありました。美味いことは美味かったけど。(写真はブリ)

■ マグロ

広島の寿司屋には,トロは普通置いてありません。マグロと言えば赤身だけですが,それもあんまり人気はないです。瀬戸内育ちの人間が,マグロを語ることはできんでしょう,やはり。

■ マナガツオ <B>

瀬戸内地方では,夏の魚の一つとして比較的ポピュラーです。刺身は・・・脂が乗ったこってりした味で,食べごたえはありますが味は今イチ。しかし,この魚を食べて感心したことが一度だけあります。神保町の揚子江菜館で食べた中華風あんかけ。いやー,あれはうまかった。説明になってなくてすいません。

 

■ メルルーサ

とつぜんですが。わたくし,この魚には原体験があるのでございます。忘れもしない18歳の頃のこと。ずっと田舎で暮らしていたわたくしは,それまで冷凍の魚などというものを口にした記憶がありませんでした。で,東京の大学に通うことになり,生まれて初めて「冷凍魚」というものを口にしました。それが,ああ,このアフリカ産メルルーサ。フィッシュバーガーに入ってるやつ。当時食ったのは別の料理でしたけど。いやあ。あの時の強烈な印象は --- こういうのをトラウマと言うのでしょうか。失礼しました。

■ その他

日ごろあまり食べ慣れていないため,あえて取り上げなかった魚もたくさんいます。世間で美味と言われていても,瀬戸内で獲れない魚は本当に新鮮なものがなかなか口に入りにくく,自分で食べてみてあまり強い印象が残っていません。たとえば,サケ・タラ・ホッケ・シシャモ・ハタハタ・ウニ・イクラ・ホタテなど北方系の魚介類や,アマダイ・アンコウ・イサキなどです。それだけに,北海道か三陸あたりでぜひこれらの魚を死ぬほど食べてみたいと思うんですが・・・