日記帳(2005年11月27日〜12月17日)

 

 

今週は出張でずっと東京にいた。

仕事の開始時間の関係で,連日ホテルのテレビで朝のワイドショーを見ていた。

そこでは,今年の十大ニュースの上位に入ってきそうなネタが連日放送されていた。

建築業界の耐震偽装問題である。姉歯建築士の証人喚問も,途中まで生中継で見た。

この事件の一連の経緯(主に国会での喚問)を見て,印象に残ったことをいくつか挙げてみたい。

 

印象度のトップは,「国会で質問に立った自民党議員のバカさ加減」である。

民主党の質問者は,なかなかスルドかった。生で見てはいないが,社民党もまあまあ。

とにかく,一番最初に姉歯建築士を喚問した自民党の議員は,とてつもなくバカ丸出しだった。

朝のワイドショーでも批判されていたが,「おまえ,何しに出て来たんじゃ?」という感じ。

質問より自分の演説の方が長く,質問にも内容がなく,話す態度にさえ品性のカケラもない。

オマエより証人席に座っとる連中の方が,社会人としてはよっぽどマトモじゃ,どあほー!

この質問者は,姉歯氏が「圧力」を感じたかどうかについて,「ヤクザだって,直接こうしろとは

言わないで遠回しに脅迫するんですよ」というようなことを言っていた。そういう比喩しか頭に

浮かばないという事実が,本人の品性を如実に物語っている。自民党では幹事長からして

「犯人探しをすれば経済に与えるマイナスが大きい」とかいう暴論を吐いていた。建築業界人と

自民党の政治家とヤクザが同席するパーティーでも開いたら,みんな同類に見えることだろう。

 

それにしても,テレビの威力を改めて感じた。新聞記事などで文字に書かれた議事録を読んでも,

お互いの言い分が食い違っていて,誰の言うことが真実なのか判断できない。しかし,テレビの

映像を見れば,誰が真実を語り,誰がウソをついているかが,手に取るようにわかる。

男は40歳を過ぎたら自分の顔にも責任を持たねばならないとどこかの政治家が言っていたが,

さすがに顔を見ただけでは善人と悪人の区別はつかない。しかし,話す態度を見れば,その人が

どういう人間なのかがだいたいわかる(気がする)。今回の件で「悪役」とされているのは総研の

内河所長とフューザーの小嶋社長だが,それは彼らが悪役ヅラをしているがゆえの偏見ではない。

あんたら,政治家に転職した方がええんと違う?

 

さて,姉歯氏である。今回は雑記帳も同時にアップしていて,そっちの内容とも多少カブるけれど,

もう何というか,「気の毒」の一語に尽きる。テレビを見ていて一番辛かったのは,どこかの局が

彼の親族や親しい友人を取材していて,彼らが一様に姉歯氏のことを露骨に非難していたことだ。

親族は,「もう会いたくない」と言っていた。もしも自分の身内や親しい人が大きな犯罪を犯して,

メディアがその感想を求めてきたとしたら,あなたなら何と答えるだろうか?ぼくの場合,よほどの

ことがない限り,(被害者へのおわびを添えて)本人を弁護する言葉を吐くと思う。「私から見れば,

そんなに悪い人間ではないんですよ」というふうに。他人事ながら,姉歯氏の親族や友人には

「こういうときこそ,あんたらが味方になってやれーや」と思った。

 

本人の弁によれば,姉歯氏の偽装の動機は次の2つである。

・木村建設の仕事を失うと,収入がほとんどなくなる。

・入退院を繰り返す妻のためにも,それは何としても避けたかった。

「もしも自分が同じ立場だったら」と,誰しも思うことだろう。やったことは確かに違法であり,罪は

罪として追及されねばならない。その一方で,心情的には多分に同情の余地がある。

(もちろん部外者だからこう言えるのであって,もしも自分が違法建築のマンションを買わされた

被害者であったなら,「姉歯の奴を殺してやりたい」とか言うかもしれない)

これもつい最近,JRの乗務員全員が車内でのコーヒーの売り上げ代金を着服していた,という

事件があった。最悪の場合全員懲戒免職ということも考えられるが,これについてもある種の

「気の毒さ」を感じる。責任者はともかく,内部告発によって解雇されたり職場でいじめられたり

するリスクを考えた末に,下っ端の連中が不本意ながら黙って上司の命令に従っていたとしたら,

一概に責めることはとてもできない。「赤信号みんなで渡れば怖くない」と言うが,ほかのみんなが

赤信号で道路を渡っているとき,自分だけが青に変わるまで立ち止まっているというのは,かなり

勇気のいることだ。人は他人事なら「それが当然だ」と言うかもしれないが,「じゃあ,おまえは

常にそういう(正義を貫く)行動が取れるのか?」と言われると,自分の場合は甚だ自信がない。

だから,「正義を貫けなかった他人」を責める気持ちには,到底なれない。「建築は人の命に

関わる仕事だから,それだけ責任が重い」という意見もあるが,じゃあ,命にかかわらなければ

何やってもいいのか?違法であろうとなかろうと,やっていいことと悪いことはある。みずほ証券が

株の発注を間違えた件でも,多数の同業者(証券会社)がその間隙を縫って暴利を手にした。

違法ではない。しかし結局利益はおおむね社会に還元せざるを得ない状況になった。これは

「違法ではないが好ましくない」ことの例だ。理屈より世間の感情が優先した例,と言ってもいい。

だとしたら,逆のケース,つまり「違法だが情状酌量の余地がある」場合も当然考えられる。

姉歯氏には,罪を償った後に,何とか社会復帰させてあげたいと思った。

 

これも,ホテルのテレビで見た話題。

チャンネルを回すと,BBCのニュースが映った。キャスターは英語でしゃべっているので,

何を言っているのかよくわからない(と当然のように言う)。が,映像があるので断片的には

理解できる。映像は,イラクの市民への街頭インタビューだった。番組の趣旨は,「現在の

イラクでは,フセイン体制の圧制から開放されて,自由な市民生活が営まれている」という

ことを伝える点にあるようだった。BBCはイギリスの放送局だから,当然「これもわが国の

軍隊がイラクで活動した成果だ」と言いたいわけだが,日本のテレビ局ではこういう映像は

見たことがない。ほとんどすべてが「イラクでは内戦状態が続いており,自衛隊の活動も

極めて限定されている」というトーンのニュースばっかりである。どちらが正しいか?という

問題ではない。たぶんどちらも正しいだろう。ただ,片方のニュースしか見ていなければ,

どうしてもそっちの方に頭が洗脳されてしまうと思う。中立な報道というのはありえない。

だとすれば,自分が努力してできるだけ違う角度からの報道にアクセスするしかない。

新聞は読売と朝日を両方読むのが一番かもしれないが,そんな時間も金もない。

いっそ民放のニュースを「うちの局はやや右寄り」「うちは左寄り」というふうに自分から

色分けしてくれると,視聴者としては有り難いんだけども。

 

さいごに。

「このマンガがすごい!」(宝島社)の2006年版が出ていたので,ホテルで読んだ。

今年は「オトコ版」と「オンナ版」の2分冊になっている。ちなみに,前回の日記帳を

書いた時点ではこの本はまだ発売されていなかった。

オトコ版のベスト10は,次のとおり。

 

1.PLUTO(浦沢直樹)

2.デスノート(大場つぐみ/小畑健)

3.失踪日記(吾妻ひでお)

4.働きマン(安野モヨコ)

5.鋼の錬金術師(荒川弘)

6.ホムンクルス(山本英夫)

7.もやしもん(石川雅之)

7.おおきく振りかぶって(ひぐちアサ)

9.キーチ!!(新井英樹)

9.団地ともお(小田扉)

 

ほとんどは日記帳で紹介した作品。「失踪日記」が3位とはなあ。吾妻ひでおという

作家の根強い人気がうかがえる。

 

オンナ版では,予想どおり次の3作品がダントツの票を集めた。

 

1.ハチミツとクローバー(羽海野チカ)

2.のだめカンタービレ(二ノ宮知子)

3.NANA(谷沢あい)

 

これも誰も知らないと思うが,ついでにこういう本も買った。

 

「出家日記〜ある「おたく」の生涯〜」(角川書店)

 

著者は「蛭児神健(元)」。この人(ひるこがみ・けん)は,かつて「ロリコンの神様」と呼ばれ,

現在は僧侶である。知っている人たちの間ではあまりにも有名な存在なわけだが,この本に

書かれた本人の生い立ちというのが,予想どおりというか,あまりにも痛い話である。

社会的不適応者は不遇な家庭環境から生まれる,という確信をますます強くした。

この本の中に,こういう一節がある。

 

親を愛せる人は,幸福なのだ。なにより,愛するだけの価値が有る親を持てたのだから。

そんな人たちが,親を愛せない私達を「異常だ」とか「思いやりがかけている」などと非難

するのは,金持ちが,生まれながらにして貧乏であるという理由によって貧乏人を非難

するのに等しい。

 

以下,雑記帳に続く!

 

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