日記帳(06年8月30日〜9月18日)

 

 

 

何も起こらない日常を淡々と描いた吾妻ひでおの「うつうつひでお日記」を読んで,

そういう日記を書いてみたくなったので,最近の生活を書いてみる。

 

● 9月10日(日)

6時半起床。きのう蒲刈で使ったカキが少し余っているので,今日は近場でちょっと竿を

出してみようかと思ったが,あいにくの雨模様。仕方なくいつものように仕事場へ出て,

午前中は仕事。いつも仕事をいただくYさんから受けている翻訳の仕事がもう少しで

完成する。30数万円くらいの仕事なので10日を目途にやっているが,今日がちょうど

10日目。マイ締切的には今日がタイムリミットだが,あと1日はかかる。

午後,映画「UDON」を見に行く。主人公の実家の製麺所の立地の風景がよかった。

ストーリーはどちらかと言えば若者向けで,年配の客を引きつけるなら別の展開も

あるだろうと思った。主人公が50歳くらいになったときの生活を最後に入れたら,

もっと感動的になったんじゃなかろうか。映画の中で「誰にでもソウル・フードがある」

と言っていたが,さて自分のソウル・フードとは?と考えてみると,なかなか出てこない。

しかし,最後に「これしかない」という食い物に思い当たった。それは,カップ麺だ。

コンビニがなかった時代,どれだけ助けられたことか。ちなみにカップ麺のMyベスト3

は,日清のカップヌードル・シーフードヌードル・UFO焼きそば,である。

 

夕方,下の娘(中3)の中学が毎年福山美術館を借りて展示している創作展の

片付けの手伝いに行く。生徒全員が絵・習字・工作・服の仕立てなどの作品を出し,

それを一般公開するイベントだ。下の娘は絵が苦手だというので,夏休みに描くのを

手伝ってやった。しかし,いったん描き出すと「ちょっと貸してみい」と娘から筆を取り

上げて,ほとんどオヤジの作品になってしまった。娘の方は楽ができたと喜んで,

そのときは「この絵,なかなかええじゃん」とか言い合っていたが,美術館に展示

された娘の名前の入った絵を見ると,横になんか札が貼ってある。優秀作品として

改めて学校に展示するのだそうだ。娘の話では,別の展覧会に出すために学年

全体で選ばれた作品が2つだけあって,その絵はそのうちの1つなのだと言う。

おい,なんかヤバいんじゃないんか,それ?

 

● 9月11日(月)

6時半起床。娘らの弁当を作り、7時半ごろ仕事場へ。スポーツ新聞を読みながら、

菓子パンとウーロン茶で朝食。だいたいふだんは,こういうパターンで生活している。

今日の仕事は,Yさんからの翻訳の仕事の仕上げ。今日中にぎりぎり終わるか

どうか微妙なところ。午前中ずっと仕事して,昼食は、仕事場の近くにある尾道

ラーメンの元祖・朱華園の支店でラーメンとギョーザ。本屋でちょっと立ち読みして,

1時ごろから再開。途中30分ほどの散歩をはさんで,7時ごろ仕事完了。データを

メールで送り,請求書を投函して帰宅。夕食はサンマの塩焼きと豚汁など。

 

● 9月12日(火)
今日は,久しぶりに単価計算(1本いくら)の仕事が入っていない。そこで,週末の

出張のための資料作りをする。ストレートに金になるわけではないので,なるべく

手短に仕上げたい。昼食はセルフのうどん店・むらさきで、とろ玉ぶっかけうどんと

おかかむすび。夕方,Yさんから連絡が入り,新たに仕事が3本入る。うち2本は

合わせて5万円ほどで,丸1日あれば片付く。残りの1本は1週間〜10日くらい

かかる仕事。キリが悪いので今日は着手せず。さらに,東京の編プロ(編集プロ

ダクション)Aから仕事の打診が入る。大手の下請けの原稿書きで、やたら複雑で

長大なマニュアルつき。解読するのに半日くらいかかりそう。原稿料も不明。

仕事自体は高校生向けの教材作りなので難しくなさそうだが,とにかくこの大手・

B社は,執筆者にいろいろと細かすぎる注文をつけることで評判が悪く,この会社

の仕事をやったことのある同業者は数多いが,大半は一度やったら嫌気がさして

二度と受けない,という。それだけに,そういう嫌な仕事を受けてくれる人材は貴重

だろうから,文句を言わずに来た仕事は受ける。具体的な作業は今日はなし。

7時に職場を出る。夕食は肉じゃが・刺身など。受験生である上の娘のために,

パワーポイントで紙芝居ふうの英語学習手作りソフトを作ってやる。しかし奴は,

パソコンの前に座っているかと思えばネットで拾ったゲームばかりやっている。

 

● 9月13日(水)
8時ごろから仕事開始。きのうもらったYさんの仕事のうち,安い方の2本を片付ける。

午前中に1本片付けるつもりが意外と手間取り,昼までに終わらなかった。昼食は

カレーのチェーン(ココイチ)で200gの夏野菜カレー。近くのブックオフで「ブリーチ」を

立ち読み。本当は,今日はそんなことをしているヒマはない。その隣のハローズで

明日の弁当の食材を仕入れ、1時ごろから仕事に復帰。散歩の時間も削って仕事して,

どうにか7時に完了。帰宅して風呂に入り,8時から1時間ほど,近所の受験生を一人

家に呼んで家庭教師のアルバイト。上の娘の友達の女の子なので高額の指導料を

取るわけにはいかず,50分ほどで1,000円。明日の昼飯代かせぎ。

● 9月14日(木)
岡山の編プロLからもらった原稿書き。8月に出した元原稿に、内容チェックが

入って戻ってきた。向こうのチェック者は、日本人2人とネイティブ1人。

日本人のチェックは大したことはなかったが、ネイティブチェックは真っ赤になって

戻ってきた。このネイティブは日本語もできるようで、日本語でコメントが書いてある。

しかーし。ネイティブの赤の大半は、納得できないものだった。この人は「間違っては

いないが、自分ならこう書く」という視点で赤を入れているようで、たとえば「関係代名詞

のwhichは、ふつうカンマの後でしか使わない」というような偏ったことが書いてある。

ネイティブが入れた赤に日本人が反論するわけにはいかない(それだとネイティブ・

チェックの意味がない)ので、言いつけどおりに全部元原稿を直しておいた。ただし、

実は元原稿自体も、提出する前に(自腹を切って)NOVA福山校へ持って行って

ネイティブ・チェックを受けている。つまり、NOVAのネイティブのお墨付きをもらった

原稿に、さらに別のネイティブが大量の赤を入れてきたわけだ。よくある話である。

ちなみにこの仕事は30万ほどで,原稿自体は1週間くらいでできるが,元原稿への

修正意見がやたら入るのでその処理に時間がかかり,あまり割がいいとは言えない。

いろんな部分で手抜きをしようと思えばできる --- たとえば,どうせ編プロの方で

ネイティブ・チェックをかけるのだから,元原稿を自分でわざわざネイティブに見て

もらう必要はない --- わけだが,間違った英語を提出するのは恥ずかしいじゃん,

という職人のプライドが,やっぱりあるわけですよ。原稿の修正作業自体は簡単だが,

それに対する執筆者としてのコメント(赤は入ったけど,元原稿は間違ってないんだよ,

という弁明)を書くのに手間取り,8時過ぎまでかかった。夜は11時ごろ寝るので,

夕飯終了が9時を回るようだと,なるべく食べるものの量を減らすようにしている。

缶ビールを1本飲んで,サバの塩焼きと切干大根のサラダをつまんで終わり。

娘に借りた,講談社漫画賞受賞作「ライフ」を読む。少女向け学園ドラマだが,

すげー怖い。しかし,読み出すと止まらない。そう言えば,わが家の女どもが今

一番夢中になって見ているTVドラマは,「不信のとき」というドロドロのお話である。

女子中学生の間でも,「マイボス・マイヒーロー」より人気があるという。

どうなんですか,これ?


● 9月15日(金)
7時前に家を出て,東京へ出張。昼食は駅の立ち食いソバ。昼過ぎに浅草の近くに

ある大きなビルの会社へ初めて行き,仕事を紹介していただいたFさんと向こうの

会社の女性2人とで打ち合わせ。具体的作業にはまだ取り掛かっていなくて,どれだけ

お金が入るかもわからない。かなり大掛かりな仕事にはなりそうだが。出張旅費も,

ホンマに出してもらえるやら。3時に終了。そのまま新宿へ。この日は小池さんがJ社の

編集者と会っていて、そこへ合流させてもらった。もともとT社から出る予定だったのが

企画が通らずに棚上げになっていた原稿(ほかに仕事がなかった5月の連休ごろに

書いたやつ)をJ社から出版してもらうべく、小池さんに熱弁をふるっていただいた。

小池さん、いつもありがとうございます。5時前に別れて山手線で新橋へ行き、仕事

仲間のMさんと二人でハモ料理を食す。Mさんからは、市販本の原稿書きの仕事が

1本入るかも。この日は神田のホテルに泊。

● 9月16日(土)
朝の7時過ぎにホテルを出て、新幹線で福山へ帰る。昼食は駅の構内のラーメン。

午後は,前日の打ち合わせの資料整理と,編プロAからの仕事のマニュアルを読む。

ためしにマニュアルに沿って原稿をちょっと書いてみたら,不明の点が山ほど出てきた

ので,こちらも長大な質問のメールを書いて送る。しかし明日から連休なので,返事が

来るのは来週になりそう。締切が9月25日なので,早く返事が来ないと困る。

夕飯は,近所の和食バイキング「露庵」へ。有機農法の野菜を中心としたヘルシー

料理が売りで,一人2千円。2千円分の料理を食べようと思うと相当に頑張らにゃ

いけんので,安上がりとは言えない。しかしデザートのスイーツがいろいろ置いてある

ので,女性客には人気があるようだ。飲み物の無料券を持っていたので,生ビールが

2本タダで飲めた。帰りに新しくできた高須の啓文社に立ち寄ったが,9月にPHPから

出た自分の本がまだ置いてなかった。「打撃王 凛」(7巻)と「さよなら絶望先生」(5巻)

を買って帰る。

 

● 9月17日(日)
6時半起床。台風が接近している割に外は弱風。しかし、釣りに行く予定はなし。

仕事場へ行き、軽く仕事。このあと午前中は海へ水を汲みに行き、1時間ほど水槽の

掃除とクーラーの取り外し。魚を全部海へ放し、昼食(コンビニのお好み焼き)。

昼過ぎがちょうど干潮なので、水槽に入れる小魚を採りに近くの干潟へ。浅瀬を網で

すくうと、ハゼやカニやエビが入る。ハゼはマハゼ・ドロメ・アカオビシマハゼ・サビハゼ

が採れたが、マハゼはすぐ成長するのでパス。ハゼ類を10匹ほどと、エビカニを多数

持ち帰り、水槽へ放す。留守の間に、S社から宅急便が届いていた。内容校正用の

ゲラだが、お金がもらえるんだか何だかよくわからない。こういう仕事は早めに片付け

たいので、夕方7時までびっちり仕事。夕飯はスキヤキ。台風は今夜再接近する様子。

9時からのテレビドラマで,現代日本の若者がタイムスリップして昭和20年の同年代

の特攻隊員と心が入れ替わる,という話をやっていた。娯楽性が強くて,例年8月に

各局で作られるドラマとは毛色が違っていたが,それなりには楽しめた。ただ,「戦争

当時の生活や人間の気持ちは,あんなもんじゃなかった」という批判はあるかも。

それはそうと,ちょうど出張中に地元に新聞に,うちの娘らの中学の教師が警察に

捕まったという記事が出た(全国ニュースでも取り上げられた)そうだ。その記事は

見てないので,下の娘から聞いた内容を書くと,中学の運動部の顧問の教師が,

以前から生徒に体罰を与えていて,一人の生徒が不登校になったという。学校へ

行きたくない理由を親が問いただすと,体罰だけでなく「全裸で立たされた(のか

走らされたのかよく知らないが)」のが大きな理由らしい。確か岡山県でも,わりと

最近同じような事件があったはずだ。「指導中に興奮してつい殴ってしまう」という

ケースは,もちろん悪いことには違いないが,ありがちなことだと想像はできる。

しかし,「全裸にする」という神経は全く理解できない。その指導者自身が,昔

同じようなことをされた可能性はある。だとしたら,それは不幸の連鎖としか言い

ようがない。それにしても,その中学生が受けた心の傷は,察するに余りある。

しかも,娘によれば,「校長先生が『君たちは本当のことを知っておくべきだ』とか

言うて,朝礼で全校生徒の前で詳しい説明をした」という。もちろん,全裸うんぬん

の話も含めて。校長はさらに,その場にはいない本人について「みんな,今回の

件では彼をそってしておいてあげるように」というようなことを言ったのだそうだ。

 

いっぺん死んで来い!

 

ちょっとはモノを考えーや,校長!

校長の愚かさをここで逐一説明はしない。

被害者の中学生が立ち直ることだけを,心の底から願っている。

 

● 9月18日(月=祝日)
午前10時ごろから,ヨメと上の娘(高3)を車に積んで,娘の受験先の候補の一つ

である某大学へ,現地の下見に行った。自宅から車で2時間弱。今日はもともと

オープンスクールの予定だったが,着いてみたら台風で中止。しかし受付はあり,

大学の職員らしい人が応対してくれた。ところがこれが,ほとんどキャッチセールス。

「今日ここでAO入試の申し込みをすれば,無試験の面接(しかも受験者からの質問

を大学側が受けるだけの形式)一発で合格できる」のだという。ただし,専願に限る。

要するに「今うちの大学へ入る意思表示をしてくれたら,無条件で合格させてあげる」

と言われたのに等しい。嬉しいような情けないような・・・しかし娘は,その大学の外観

が気に入らないらしく,ここには来たくない,と言う。おまえ,ゼイタク言える身分か?

こないだの模試の判定,CとDとEばっかりじゃったろうが。

--- ただ,正直なところ親の目から見ても,あんまり雰囲気のいい施設ではなかった。

正門にびっしり張ったクモの巣を,まず何とかした方がいいと思う。

というわけで,来週はまた別の志望先を現地視察に行くことになっている。

 

夕飯は,帰る途中で買って帰ったフジグラン(神辺)の惣菜。

明日からの仕事が溜まっているので,ちょっと頭を整理する。

Yさんからもらっている翻訳の仕事が1本。所要日数は1週間〜10日。

編プロAからの高校生向け問題集の原稿書きが3本。1週間くらい。

同じく編プロAからの別口の原稿書きの仕事。執筆要領は未着。

編プロLの内容校正の仕事。1〜2日。

Fさんからの大口の仕事。具体案はもう1回出張して打ち合わせ。

これらの合間に,小池さんに企画を通してもらった市販本の原稿書きが1本。

今回のは内容の密度が濃いので,1か月くらいかかるだろう。

 

こんな感じで,仕事は次から次へ入って来てはいる。

これくらい仕事に囲まれた状況の方が,精神的には落ち着く。

 

「うつうつひでお日記」の作者・吾妻ひでおの往時を知るファンにとっては,まさか

あの人が食うに困るほど逼迫した生活を送っていたとは想像もできない。

しかし,家出やうつ病やアルコール中毒で苦しんだ時期を経て,今はまた陽の

当たる世界へ戻って来ている彼を見ると,長い目で見ると苦しい時期が永遠に

続くようなことはない,と実感できる。明日からまた,頑張って仕事せにゃ。

 

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