日記帳(08年10月27日〜11月3日)

 

 

10月26日(日) 


午後,映画「イキガミ」を見に行く。面白かった。

原作から3つのエピソードを抜き出してつなげてあり,おおむね原作に忠実に

作られていた。ラストは「次回に続く」ふうの終わり方だったので,ヒットしたら

続編を作ろうという狙いだろう。まあ,この映画が感動的だろうということは

見る前から予想はしていた。何しろ必ず人が死ぬわけだから。映画的には,

人を殺して感動させるというパターンはちょっと安易な気がしないでもないが,

「マンガの原作と同じくらい面白い」という映画はなかなかないだけに,今回は

行って得をした気分だ。

 

話はずれるが,皆さん「容疑者Xの献身」を見ましたか?私は見ました。

これからあの映画を見に行こうという人はまずいないと思うので,ここに

あらすじを書きますが,私はあの映画は嫌いです。とても後味が悪い。

東野圭吾は,嫌いではない。デビュー作「放課後」はなかなか面白かった。

しかし今回の話,原作どおりかもしれないが,バッドエンディングである。

見る人によってはそうは感じないかもしれないが,ぼくはそう感じた。

あらすじは,こうだ。ある母子家庭の主婦が,別れた亭主につきまとわれ,

正当防衛的に自分の部屋で中学生の娘と二人がかりでその男を殺した。

そのアパートの隣室に住んでいた高校の数学教師が,彼女をかばって,

最初は犯人がわからないよう工作し(男の死体は河川敷に捨てた),

後には自分が犯人だと名乗り出る。彼がなぜそこまでするかと言えば,

彼自身が以前から彼女に対してストーカー行為を働いていたからだ。

つまり,ストーカーが相手の女性をかばって自ら殺人事件の容疑者になる,

というお話である。そこに,大学時代に容疑者と同級生で,お互いに

相手の才能を認め合っていた主人公の物理学者ガリレオが登場して,

事件の謎を解いていく。結果的に主人公は容疑者の巧妙なトリックを

見破って(トリック自体は秀逸である)事件を「解決」するわけだが,

この話を現実になぞらえて考えると,「このあと彼らはどうなるのか?」

といういや〜な感じが残る。「彼ら」とは,母親と,とりわけ中学生の娘だ。

簡潔に言えば,もし主人公がこの事件の謎を解かなければ,みんなが

「幸せ」になれていた。容疑者は自分の「愛した」女性のために犯罪者として

身を捧げることに満足し,女性は申し訳ないと思いつつも,自分が刑務所に

入れば一人きりで残されることになるであろう娘にとっては,それでよかった

と思うはずだ(彼に対する償いや,彼女自身が真犯人として名乗り出るのは,

彼が出所してから行えばよい。今は中学生の娘と二人暮しなのだから)。

そして娘は,自分も殺人の実行犯としての片棒を担いだというトラウマを

抱えながらも,とにかく母親との二人暮らしを続けることができる。

ところがだ。主人公が事件の「真相」を暴いた結果,彼らはどうなるか?

まず容疑者は,「愛に殉じる」という目的の達成を阻まれ,失意のうちに

獄中生活を送ることになる。殺人の実行犯である主婦は,当然罪を問われて

服役することになる。娘は一人残されるが,娘も殺人の共犯だから,おそらく

少年院などに入れられるだろう。当然,今の学校はやめねばならないし,

母親とも離れ離れになる。つまり,容疑者・主婦・その娘・ガリレオのうち,

この物語の最後でハッピーエンドを迎えたのは,主人公ガリレオだけだ。

ただし,忘れてはならないもう1人の人物がいる。容疑者のアリバイトリックに

利用され,容疑者に殺されたホームレスだ(つまり容疑者自身も殺人を犯して

いる)。主人公が事件を解決しなければ,殺されたホームレスは浮かばれ

なかっただろう,とは言える。だから,社会正義的には主人公の行動は正当化

されてよいのだろう。しかし,とにかくあの主婦の娘のこれから先の辛い人生が

頭に浮かんで,「事件を解決するにしても,主人公は容疑者の意を汲んで,

警察には真相を内緒にしておいてもよかったんじゃないか」と,ぼくは思った。


日曜日の夕飯は,芋煮汁,タチウオの塩焼き,ハンバーグ,レタスサラダ。

 



10月27日(月)
娘の弁当は,きのうの残りのハンバーグ,からあげ(市販),豚肉・キャベツ・ピーマン炒め,

卵焼き,栗ご飯。仕事は先週の続き。あと10日ほどかかりそう。昼食は自宅できのうの残り。
夕食はハヤシライス,小松菜と厚揚げの煮物,きのうの残り。



10月28日(火)
娘の弁当は,牛肉ともやし炒めの卵のせ,トンカツ(市販),小松菜のごまあえ,ハム,イモ天。

昼食は自宅でハヤシライスの残り。夜は豚肉のゴボウ巻き,春雨・ひき肉・ニラの炒め物,

ワカメとキュウリとチクワの酢の物,スジカツオとハマチの刺身(スーパーで298円の2割引き)。

スーパーは夕方6時から7時ごろ一斉に割引のシールが貼られるので,仕事帰りに買いに

行くと夕食代が節約できる。ちなみに夕方の買い物で使う予算は,1日平均2,000円くらい。

これで家族3人分の夕食と翌日の娘の弁当,自分の朝食をまかなう。食材だけの値段は

もっと安いが,毎日料理していると調味料などの補充にけっこう金がかかるのだな。



10月29日(水)
日帰りで東京へ出張。新宿の喫茶店で,年内発売予定のTOEIC対策単語集の打ち合わせを,

Be社の担当のKさん,共著者のYさん・Mさんと。この本は3人の共同執筆だが,実質は

有名人であるYさんの名前を借りては売ろうという狙い。Yさんは自信があるという口ぶりだが,

この分野での実績がないBe社の営業がどれだけ頑張ってくれるかが問題。Yさんの目算どおり

10万部くらい売れてくれたら最高だが,初版が5千部程度とあまり多くないので,最低3万部

くらいは売れてほしい。帰りの新幹線の中ではいつも通り酒を飲んで帰る。しかし仕事が

詰まっているので,翌日に差し支えるほどには飲まずに・・・と思って500mlの缶ビール1本・

水割り缶2本・幕の内弁当・乾き物のつまみを2つ買って乗り込んだところまでは覚えているが,

その後の記憶が・・・・車内で酒を買い足したらしいんだが・・・・

10月30日(木)
弁当作りはヨメにバトンタッチして,朝はゆっくり7時過ぎに起床。朝食はバナナ1本とヨーグルト

とお茶。昼食はかけウドンにかきあげをトッピングしたら,かきあげの油がもたれてなかなか

ノドを通らず。午後になりようやく酔いがさめてきたが,仕事の能率はふだんの7割くらい。

夕食は当然酒抜きで,トウフと白菜と豚しゃぶしゃぶ肉で水炊き。ご飯を軽く1杯。

明日提出の原稿があるので,体調を整えるために夜は10時過ぎに就寝。


10月31日(金)
いつもの時間に起きて,娘の弁当作り。ご飯は焼き鳥丼ふうに(鳥もも肉と冷凍しておいた

つくねをフライパンで焼き,市販の照り焼きのたれをからめてご飯に乗せる)。玉子焼き・

チンゲン菜の炒め物・市販のコロッケとエビフライ。朝食は220kcalの菓子パンと70kcalの

ヨーグルトとお茶。午前中,黙々と仕事して原稿を1本アップ。昼食は味噌ラーメン。

午後は仕事の続きと,銀行へ行ったりカキを回収に行ったり。夕方6時半に仕事場を出て

買い出し。夕飯は,最近買った圧力ナベでヨメが作っていた関東煮があったので,軽く

ポトフ(トマト味。鶏肉・じゃがいも・にんじん・たまねぎ・キャベツ入り)と大根・ワカメの

サラダを作る。あと,スーパーで買ったカキフライ。夜は仕事の続きを1時間ほどやり,

明日に備えて10時半に就寝。以下,「釣り日記」に続く。


◆給付金のこと
キミたち,「朝三暮四」という中国の故事を知っているかい?サルを飼っていた老人が,

エサ代を減らそうとして「これからはドングリの実を朝に3つ,夕方に4つやることにする」

と言ったが,サルは「少ない」と怒った。そこで「じゃあ,朝に4つ,夕方に3つやろう」と

言ったら,サルは大喜びしたそうな。「そりゃあ,現金がもらえたら嬉しいですよ。でも,

酒飲んで終わっちゃうかな」とテレビのインタビューに答えとった若いサラリーマン!

おまえら,政府にサル扱いされとんぞ!


◆麻生総理のこと
秋葉原の若者諸君。キミらは本当にあの麻生という人物を見て「自分らの仲間」と

思うんか?おまえら,仮にも秋葉原の住人なら,あんなヤツに感情移入したらいけん。

キミらが仲間意識を感じる人物は,ほかにおるではないか。そうだ。石破茂だよ。

風貌も,語り口も,趣味も,彼こそぼくたちが(笑)シンパシーを感じるべき人物だろうがよ。

麻生なんか,ただのミーハーじゃないか。政治的主張のことは知らんよ。

オタクたちよ,石破サンをもっとプッシュしようぜ!


◆「チンポム」のこと
広島の地方紙に載ったマイナーな話題ですけどね。まあ,次の記事を読んでくれたまえ。

全部,中国新聞のオンライン記事からの抜粋だ。


10月22日(水)
21日午前、広島市の上空に「ピカッ」の白い文字が飛行機で描かれた。東京の芸術家集団が、

平和を訴える作品制作として原爆を意味する言葉を表現したという。だが、市民や被爆者からは

「不快だ」「気持ち悪い」との声が上がった。市現代美術館(南区)も関連の現場に立ち会っており、

その判断にも批判が出ている。目撃した市民によると、小型機がスモークを出しながら飛行し、

一帯に「ピカッ」の文字が浮かんだ。西区の女性(28)は「『ピカドン』を連想させる。不気味だった」

と不安感を訴えた。企画したのは芸術家集団「Chim↑Pom(チン↑ポム)」。独自にチャーター

した飛行機は午前7時半から正午まで、断続的に上空を飛行。5回にわたり「ピカッ」と描いた。

メンバーは平和記念公園(中区)から、原爆ドームと文字を一緒に収める構図で写真とビデオを

撮影した。11月から市現代美術館で開く作品展に向けた創作活動という。リーダーの卯城竜太

さん(31)は「被爆者を傷つけたとしたら心が痛むが、若者と戦争を知らない世代の関心を呼び

たかった」と主張する。これに対し、広島県被団協の坪井直理事長(83)は「独り善がりの

パフォーマンス。平和の訴えにはつながらない」と憤る。
※この記事には写真がついており,青空をバックに白い煙で「ピカッ」と描いた文字が映っていた。


10月23日(木)
東京の芸術家集団が広島市上空に原爆を意味する「ピカッ」の文字を描いた表現行為で、

学芸員が関連の現場に立ち会った市現代美術館(南区)の原田康夫館長は22日、

「学芸員が知っていながら止めなかった。おわびしたい」と陳謝した。芸術家集団にも謝罪

するよう促した。市、美術館を管理する市文化財団、美術館がこの日朝、対応を協議。

市民局の島本登夫局長と酒井義法財団理事長が、美術館の神谷幸江学芸担当課長に

「被爆者の感情への配慮が必要だった」と口頭で注意した。近く被爆者団体に謝罪する方針も

決めた。この後、原田館長が、芸術家集団「Chim←Pom(チン←ポム)」のメンバーを美術館に

呼んで市民に謝罪するよう求めた。了承したリーダーの卯城竜太さん(31)は「自分たちなりに

時間をかけて(方法を)考えたい」と話した。


10月24日(金)
広島市上空に原爆を意味する「ピカッ」の文字が描かれた表現行為で、企画した芸術家集団

「Chim←Pom(チン←ポム)」の代表が24日、市役所で被爆者7団体の代表に会って謝る。

これに先立ち市と美術館を管理する市文化財団も謝罪。市現代美術館(南区)の学芸員が

関連の現場に立ち会った経緯を説明する。市民局文化振興課は「著しく礼を欠く行為。

学芸員が止めておらず、おわびすることを決めた」としている。


10月25日(土)
東京の芸術家集団が広島市上空に原爆を意味する「ピカッ」の文字を描いた表現行為で、

市現代美術館(南区)の学芸員が「ゲリラ(的手法)でやるのがいい」と助言していた可能性が

浮上した。24日、集団「Chim←Pom(チン←ポム)」のリーダー卯城竜太さん(31)が被爆者

団体に謝罪した後、明らかにした。記者会見での卯城さんの説明によると、飛行機を使って、

煙で描く方法を提案したところ、予告をしないまま実行するよう学芸員から勧められたという。

「事前に被爆者の方々と話をしてイメージを膨らませたかったが、学芸員にゲリラでやるのが

いい」と話した。美術館が表現行為に深く関与している可能性が浮上し、市市民局は、

美術館の神谷幸江学芸担当課長に調査を口頭で指示した。記者会見に先立ち、卯城さんは

市役所で被爆者7団体のうち5団体の代表者と面談した。「大変不快な思いをさせてしまい

ましたことを深くおわび致します」と陳謝した。

最初の記事が出たとき,「たぶん,こいつら(チン←ポム。以下めんどくさいのでチンポム)の

売名行為じゃろうなあ」と思った。名前からしていかにもうさんくさい連中が,軽いジョークの

つもりでやったんじゃろ。怒られて当然よ。テレビのローカルニュースにも被爆者団体の人が

出てきて,「ショックで体調を崩した」というような話をしとったし。


--- しかし,事態が一変したのは(いや,世間的には何もなかったが),翌日のこの記事である。

10月26日(日)
第7回ヒロシマ賞(広島市など主催)に選ばれた中国人現代美術作家の蔡國強さんが25日、

広島市中区の太田川河川敷から黒色花火を打ち上げ、原爆犠牲者への鎮魂と平和への

願いを表現した。午後1時から90秒間、1200発を次々に打ち上げた。原爆ドーム後方上空に

黒煙の固まりが生まれ、迫力ある演出に平和記念公園などで見ていた市民からは拍手が

上がった。市内上空に「ピカッ」の文字を飛行機で描いた芸術家集団「Chim←Pom

(チン←ポム)」リーダーの卯城竜太さん(31)も訪れ、「鎮魂のメッセージが伝わってきた。

告知して市民に見てもらう努力が必要と再認識した」と話していた。
※この記事も写真つきで,原爆ドームのバックの空に,まさに原爆を思わせる真っ黒い煙の

ような花火が打ちあがっていた。

こら,ちょっと待て!

「ピカッ」がダメで黒色花火ならOKという判断の基準を,きっちり説明してくれ。

黒い花火の方が,写真で見る限りよっぽどナマナマしいじゃろーが。

あれを見て体調崩した年寄りも,おるんじゃないんか?

--- この一連の出来事の真相や背景は,意図的かどうかは知らないが,少なくとも中国新聞

紙上では説明されていない。ちなみにネットで検索すると,チンポムは2007年の現代美術館の

公募展で大賞を取っているので,たぶん学芸員とも美術館とも仲がよかったのだろう。「ゲリラ」

うんぬんについてはお互いに責任逃れをしている感じもするが,そんなことはどうでもいい。

新聞記事だけから判断する限り,「ピカッ」と黒色花火との間の違いは,「事前に告知したか

どうか」の違いでしかない(あるいは現代美術館の賞と「ヒロシマ賞」との政治的力関係の違い?)。

しかし,誰に「告知」するのか?被爆者団体か?あんたらが芸術活動に「許可」を出すのか?

もしあんたらがそういう判断をしたのなら,「ピカッ」がアウトで「黒雲」がOKな理由を説明してくれ。

それに,仮に事前の「告知」があったとしても,市民全員に知らせるのは不可能だから,いきなり

眼の前の空に原爆を思わせるような黒い花火が上がったら,驚いたり不快に思ったりした市民も

いたに違いない。何が「迫力ある演出」だ。何が「拍手が上がった」だ!

 

26日の中国新聞の記事中のチンポムのリーダーのコメントも,いかにも新聞社に頼まれて

(あるいは命令されて,あるいは自己保身のために)つじつま合わせをしているようで不愉快だ。

この件には被爆者問題のタブーが凝縮されているようで,中国新聞社にも,被爆者団体にも,

現代美術館にも腹が立った。しかし,一番「ふざけるな!」と思った相手は,チンポムだ。

「ピカッ」が悪いわけじゃない。おまえら,仮にもアーティスト集団じゃろーが!とんがった名前に

恥ずかしいとは思わんのか?クリエーターとしてのプライドはないんか?金でも積まれたか?

「一部の市民の方々に不快な思いをさせたことは謝ります。しかし,それとは別に,我々の

パフォーマンスに対して芸術的な評価をしていただくようお願いします」と,どうして言わんのか!

看板おろせ!おまえら,チンポムついとんか!

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