日記帳(10年9月5日〜12日)

 

 

今週は金曜日から出張で東京へ行き,今日の日曜日(12日)の朝の新幹線で

帰って来た。昼過ぎに仕事場に着き,修理に出していた車を取りに行った。

ラジエーター周りを交換して,全部で7万数千円かかった。校正用のゲラが

2つ届いていたので,午後は仕事。来週は釣りに行きたい。

 

金曜日は仕事の打ち合わせを2つ。きのうの土曜日は夕方から昔の仕事仲間が

集まって新宿で酒を飲んだが,昼間は用事がなかったので映画を1本見た。

「キャタピラー」にしようかと思ったが,同じモチーフのマンガ(山上たつひこの

「光る風」)を昔読んだことがあるのでパス。あれは恐かった。「君が踊る,夏」にも

興味があったが,結局見たのは京極夏彦の小説が原作のアニメ「ルー=ガルー」。

ホンマに京極夏彦がこんなもん書いたの?と思わせるような,一口で言えば

「けいおん」をスプラッタホラーにしたような作品だった。完成度は低い。とりわけ

作品世界の設定が甘い。主人公がいなくても話が成立してしまうのが最悪だ。

 

新幹線の中で読んだ今週号の文春のマンガエッセイに,「小学生の頃,学校に

忍者が来た」という話が載っていた。生徒を数人壇上に上げて,気合で金縛りに

した,などのエピソードが紹介されたいたが・・・・うちの小学校にも来たよ,忍者!

もう40年以上前のことだ。その人は金縛りの「芸」もやったような気がするが,

一番記憶に残っているのは「瞬間的に数字を暗記する」というワザだ。黒板を背に

して目隠しをし,生徒に適当な数字を50個くらい書かせる。次に目隠しを外し,

振り向いてほんの1秒ほど黒板に目をやってまた後ろを向いて目隠しし,書かれた

数字を正確に読み上げるという,大道芸の水準を越えるワザだった。もしかしたら

よくあるマジックの一種なのかもしれないが,子どもには衝撃的だった。しかし学校が

何のためにそういう「芸人」を生徒に見せたのかはわからない。

 

全然関係ないが,1週間ほど前に,今年も「全国高校クイズ選手権」が放送された。

以前は運・知能・体力を競う一種のバラエティ番組だったが,おそらくは制作予算

を節約する都合からだろう,去年から番組のスタイルが一変して,かつて流行した

「クイズ王決定戦」のようなマニアックな内容になってしまった。出場チームは全国の

有名進学校ばかりで,結局開成高校チームが優勝した。視聴率がどうなのかは

わからないが,少なくともあの決勝戦を見れば,出場を希望する高校生が激減する

のは間違いないだろう。大人でも全く歯が立たない。

決勝戦で一番最初に出たのが,確かこんな問いだった。

 

「アケルナルは,ある星座のα星です。その星座の名前は?」

 

ぼくは高校生の頃天文部に入っていて,星座の名前は小学生の頃から全部知って

いたが,アケルナルという星に聞き覚えはなかった。しかし決勝戦に残った開成・

浦和両校(各3人組)は苦もなく正解を答え,感想を問われた一人は「これは全員

わかったでしょう」と平然と言っていた(正解はエリダヌス座)。

 

結局決勝戦で出題された10数問のうち,正解がわかったのは1問だけだった。

ちなみに上の娘も一緒に見ていたが,やはり1問だけ正解した。2人が正解できた

のは同じ問いで,「フランスで一流の調香師に与えられる『鼻』を意味する言葉は?」

というものだった(正解は「ネ」)。図らずも,オヤジも娘も別々のマンガ(オヤジの

場合は細野不二彦の「ギャラリー・フェイク」)で得た知識なのであった。一方,正解を

出した高校生は,「ひまつぶしにたまたま見ていたフランス語講座で,聞いたことが

ありました」と答えやがったのである。世の中は広い。

 

これも全然関係ないが,ちょっと(かなり)恥ずかしい話を一つ。

広島を舞台にして若い行政書士の活躍を描く人気マンガ「カバチタレ」を読んで,

社会勉強になったと感じる若者は多いと思う。オジサンにもそういうことがあった。

「カバチタレ」の中には「半金半手」(支払いの半分を現金,半分を手形にすること)

という言葉がよく出てくるが,読んでいてこれの何が問題なのかが今イチピンと

こなかったのだが,今年自分の無知を知らされる出来事があった。

うちの会社はずっと現金決済で,それまで「手形」というものに縁がなかった。

今年,ある編集プロダクションの仕事を初めて受けた際,支払いの段になって,

向こうが「うちは個人への支払いは現金だが,会社への支払いは手形を使う

ことになっています」と言ってきた。そのときは「金が入るなら何でもええわ」と

いうつもりで,「いいですよ」と答えた。しばらくして,手形が送られて来た。

それまで手形というものを見たことがなかったので銀行へ持って行くと,書類を

書かされて,金はそこに書いてあるとおり3か月後に支払われると言われた。

それから半月ほどして,その編プロから「領収書を送ってほしい」という連絡が来た。

そのとき思ったのは,「まだ金が支払われてないのに領収書を送るのはヘンじゃ

ないか?」ということだ。銀行に言ってそれを質問すると,若い女子行員では誰も

答えられず,ベテラン行員が出てきて説明してくれた。要するに「手形とはそういう

ものです」ということだ。ふだん手形を扱っている人には当たり前のことだろうが,

手形のことを漠然としか知らなかった素人は,そのときに初めて手形の本質的な

意味を知ったのだった。つまり手形とは,不渡りになったときのリスクを,

支払いを受ける側が負担するシステムだ,ということだ。下請け業者が「せめて

半金半手で」と言うのも当然だわね。商売をやっていて,こんな初歩的なことを

知らなかった自分が恥ずかしい。同時に,今まで自分が付き合ってきた会社は,

ある意味で優良企業ばっかりだったんだな,と思った。(結局この編プロには,

『手形決済はリスクを伴うので,今後はそちらとのお付き合いはできません』と

いう旨の連絡をした。仕事自体が嫌なわけではないが,うちの会社の経営判断

ということで)

 

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