日記帳(11年2月7日〜3月27日)

 

 

このところ仕事が多忙で日記帳を更新する時間も取れず、まだ月末締め切りの仕事を

2本抱えていてスケジュール的にはピンチだが、とりあえず今日のノルマは終わったので

久しぶりに日記を書く。

 

東北で震災が起きて連日テレビに被害の状況が出ていた頃、とりあえず自分に何が

できるかを考えると、思い当たるのは募金しかなかった。地震から2日後ごろにはもう

コンビニに募金箱が置かれていたのですぐにでも行動を起こすことはできたが、問題は

金額だ。被害の状況や自分の懐具合から、直感的に頭に浮かんだのは「1万円」だった。

ただ、コンビニの募金箱に1万円入れるのは目立つし、1回入れたら「これでノルマ完了」

という気分になるのが嫌なので、千円札で少額の買い物をしてお釣りを全部募金すると

いう方法を取ることにした。コンビ二だけでなくファミレスなどにも募金箱があったので、

お釣りは全部そこに入れた。いちいち計算はしてないが、今までに募金箱に入れた額の

合計はだいたい1万円近くになると思う。これで責任を果たしたということはないが、

「政府(あるいは国民)は〜すべきだ」みたいな評論家的なことを考えるばかりで実利的な

行動を何もしないのは一番いけないことだと最初から思っていたので、とりあえず自分に

できるだけのことはした、という思いはある。

 

そうなると次は、「社会全体として被災地の人たちに何ができるだろうか?」と考えることに

なる。頭の中で考えるだけだから、自分一人が考えたところで何が解決するわけでもないが、

今までのところ一番腹立たしかったのは、プロ野球の開幕時期の変更のことだ。この件に

ついては、セリーグの球団経営者・選手会・マスコミのすべてに腹が立つ。彼らはみんな

自己中であり、「被災地の人たちのことを考えて」というのは言い訳にすぎないように映る。

「被災地の人たちのために何ができるか」を第一に考えるべきだという視点から言えば、

彼らには全員、同程度の罪があると思う。

 

先日の中国新聞に、カープの球団本部長へのインタビューが載っていた。球団サイドの

主張は従来と同じで、「(被害を受けておらず)試合ができる環境にあれば、少しでも早く

開幕するのが望ましい」と書かれていた。しかしこの記事には、誰もが思い浮かぶ1つの

質問が、おそらくは意図的に避けられていた。中国新聞社がカープ球団に配慮したのだ

ろうが、それは読者に失礼というものだ。

 

その質問とは、こうだ。

 

「セリーグ(あるいはカープ)が開幕を早くしたい最大の理由は、おカネの問題ですか?」

 

確信を持って言うが、セリーグの各球団が開幕時期を早めたかったほとんど唯一の理由は

「おカネの問題」にあることは間違いない。しかし、スポーツ紙も含めて、そのことに言及

している記事は今のところ読んだことがない。真実を隠そう、あるいは追及せずにおこう

という意図がマスコミ側にあるとしたら、彼らも同罪である。

 

では、上の推測の確信の根拠はどこにあるのか?--- この件に多少でも興味を持った

人なら、万事丸く収まる解決策を簡単に思いつくことができると思うし、現にそういう

アイデアを持った人はいただろう。しかしこれも、報道では一切見た覚えがない。

 

そのアイデアとは、こうだ。

 

「セリーグの開幕は(当初の予定どおり)3月下旬とする。ただし、一定期間(たとえば

パリーグ開幕以前)に行われる試合の収益金の一部をチャリティーとして被災地に送る」

 

このアイデアに、少なくとも一般のファンが異論をはさむのは難しいと思う。実際問題として

地震の数日後にはうちの近所のツタヤは大盛況だった。テレビが地震のニュース一色だった

ので、退屈した人たちがビデオやマンガを借りに行ったためだ。そういう人たちは、「好きな

野球を見られて、しかも人助けにもなる」と思えば、進んで球場に足を運ぶだろう。しかし、

こんなにもナイスなアイデアが実現する可能性はまずゼロだろう。なぜなら、球団経営者は

「儲けたカネ(入場料)はびた一文失いたくない」と考えているに違いないからだ。そうで

でなければ、「公式戦を(半)チャリティー試合にする」というアイデアが少なくとも検討の

俎上に上がらないのはおかしい。試合の日程を変更すればチケットの払い戻しなど大きな

手間と費用がかかる。そのこともセリーグが早期開幕を目指した一因だろうが(ナベツネの

影響力の話は置いておいて)、そういう事情が透けて見えるのに、「被災地の人たちに

勇気を与えるために」などと被災者をダシに使うのは、人として間違っている。

もっと言えば、セリーグは当初「節電のために9回で試合を打ち切る」という案を出したが、

これもファンに思い切り失礼な話だ。彼らの本音は「5回で試合を打ち切ってもいい」だろう。

入場料は取ってあるのだから、試合さえ成立すればどこで終わっても球団は損をしない。

「9回打ち切り」は一見電力事情に配慮したかのように思えるが、実際にはそっちの方が

(電気代が浮く分)球団にとって得だから簡単に決めたのに違いない。

 

チャリティー試合のアイデアは、もしかしたら水面下では検討されたのかもしれない。しかし、

このアイデアが実現しないであろうもう1つの重要なファクターがある。プロ野球選手会だ。

球団側は当然、「収益が減れば選手の年俸も減らさざるを得ない」と選手会に打診する

だろう。選手会がそこでいくばくかの妥協をすれば、この案は実現する可能性もある。

しかし彼らは彼らで、決してその案を呑まないだろう。「年俸はびた一文下げてはならない」

というわけだ。実際、年間試合数(144試合)を減らすことができるのなら、球場の維持費を

差し引いても、開幕日を後ろにずらすことに大きな支障はなかっただろう。しかし選手会は

144試合にこだわった。試合数が減れば年俸が下がっても文句は言えないからだ。

最終的にセリーグの開幕が4月12日に決まったとき、球団サイドは「12月にずれ込んでも

試合をやる、と選手会が言ったことが大きかった」と語った。これは嘘ではないだろう。

つまり選手会はそれ以前には、「試合数は減らさない(だから年俸も下げない)。しかし

日程は(過密日程になっても)予定通りに消化する」と主張していたのだろう。球団側は

それでは困る。ダブルヘッダーだと2試合で1試合分の入場料しか入らないからだ。

つまり球団側と選手会側の対立は、一言で言えば経営サイドと労組の金銭闘争であり、

どっちも偉そうなことを言えた義理ではない。彼らが最も大切にしたのが「自分の金勘定」

であったことは、恐らく疑う余地がない。そして、マスコミがそうした事情を報道しないのは、

「同じ業界内の仲間意識」のようなものが働いているからだろう。世の中はそういうものだ、

とシニカルに論評する人もいるだろうが、ダシに使われた被災地の人たちのことを思うと

心が傷むのだよ。

 

(以下、後で追加)

 

野球に限らず、「みんなが楽しめて、なおかつ被災地のためにもなる」ような社会的な

仕組みを作るアイデアはいくらでもあると思う。たとえば週間少年ジャンプの値段を

一定期間だけ10円値上げしてその分を被災地への義援金として送れば、単純計算で

1冊を100万人が買えば1千万円、1か月で4千万円になる。これなら子どもでも手軽に

被災地のために行動を起こすことができるし、社会参加のきっかけを与えるという

教育的効果も期待できると思う。儲けている大きな会社ほど、そういう仕組みを作る

ことに熱心であってほしい。プロ野球は日本で一番人気のあるスポーツなのだから

なおさらだ。

 

日記帳の目次へ戻る