日記帳(11年3月28日〜6月12日)

 

 

気がつけばこの日記も,2か月以上書いてなかった。無理もない。

今年は,今までの自分の人生で一番忙しいんじゃないかと思うほど働いていて,

おかげでうちの会社の売り上げも過去最高になりそうだ。金勘定の心配がないのは

有難いし,休みを潰して仕事をすること自体は全然平気だが,ずっと締め切りの

プレッシャーに追われ続けるのは精神的に多少きつい。今日の日曜日(6月12日)も

朝から普通に仕事をしているが,同時並行で数本の仕事をこなしていてどれもケリが

ついてないので,どのくらいノルマを消化できているのかよくわからない。

 

生活に多少のメリハリをつけるために,先週の日曜は1本映画を見た。

今話題になっている「プリンセス・トヨトミ」だ。悪くはなかった。ただ,もうちょっと

馬鹿馬鹿しい(いい意味で)内容かと思ったら割とマジメだったのが多少物足りない。

それと,プリンセスは出るには出たが,プリンセス自体はさほど活躍するわけではなく,

内容とタイトルがちょっとずれとんじゃないの?という感じもした。まあタイトルは

インパクト重視でつけたものだろうし,三次元のプリンセスに興味はないが(笑)。

 

それで思い出したが(?),AKB48。どうなんですか,あれは?

うちのバカ娘は大ファンだそうだが,投票権ほしさにCDを買い漁って,券だけ

抜かれたCDが即日中古市場に大量に出回るというのは,どう考えても健全じゃ

ないでしょう。オマケのカードを集めさせる商法はビックリマンやそれ以前の時代から

ずっとあるにはあるが,騙されるのが子どもではなくていい年をした兄ちゃんたちで

あることが,なんか切ない。不穏当なたとえだが,認知症の老人に高額の布団を

売りつけているようなものだ。国民的アイドルとマスコミはもてはやすが,商売根性の

方があからさまに見えて気分がよくない。「本屋大賞」にも共通のものを感じるのだが。

 

 

以下,東北大震災がらみの話題を。

 

5月に東京へ出張したときのこと。東京は直接の被害を受けたわけではないので

街中の様子は特に変わってはいなかったが,東京駅のエスカレーターは止まっていた。

ある出版社へ打ち合わせに行ったら,「オフィスは冷房温度を高く設定してあって少し

暑いので,向かいの喫茶店へ行きましょう」と言われて,行ってみたらその喫茶店も

冷房が入ってなくて窓が全部開けっ放しになっていた。誰に強制されたわけでもないし,

喫茶店は冷房を入れてなければ客が減るおそれもあるのに,皆えらいなあ,と思った。

さすが日本人と言うべきか。

 

別の出版社では,もともと6月ごろに出るはずだった本が,震災の影響による紙と

インクの不足で秋ごろまで延期させてほしいと言われた。それは別に問題なかったが,

その後しばらくしてその出版社から,「震災以降会社の売り上げが落ちているので,

出版を棚上げさせてください。別の出版社から出したいということならデータは全部

提供します」という趣旨のメールが届いた。全く予想していなかったわけではないが,

そこまで深刻な状況とは・・・とちょっと驚いた。この本は600ページを越す大著で,

原稿の執筆に2ヶ月近くを要した。本が出なければその労力が無駄になるわけで,

うちの会社の売り上げにも影響はある。版が完成していてあとは刷るだけだから,

他の出版社へ持ち込めば出してくれる可能性は十分ある。しかし,そういうふうに

する気は全く起こらず,「版のデータはそちらで保管しておいて,出版できる状況に

なったら出してください。完全に出版を中止するという判断をされたら,その時点で

データをもらえればけっこうです」という返事を出した。

 

英語に,fair weather friend(好天時の友人)という言葉がある。都合のいいときに

だけ近づいてきて,利用価値がないと判断すると離れて行くような,「いざという

ときに頼りにならない友人」のことを言う。自分は,そういう行動は取りたくなかった。

幸い今年はうちの会社にはコンスタントに金が入って来ているので,1冊くらい本が

出なくなっても当面大きな影響はない。それよりも,出版しさえすれば本の制作経費

(ここまでに相当かかっているはずだ)を多少でも回収できるはずなのに,それさえ

できない窮地に追い込まれているその出版社を見限るような,仁義にもとる真似は

したくない。結果的に「売掛金」が回収できなくても,それはそれで仕方がない。

商売にはよくあることだ。目先の損得勘定だけで行動するとかえって後で損をする,

ということも。その出版社の皆さんには,「頑張ってください」と言うしかない。

 

 

話は替わるが,数ヶ月前に地デジのテレビを買ったのだが,そのリモコンをいまだに

自分では一度も触ったことがない。それくらい,テレビを見なくなった。一番大きな

理由は忙しいことで,幸か不幸か野球を見る暇もほとんどない。寝る前にネットで

結果を見て,「あー,また負けとるわ」と思う程度だ。ここ1か月くらいは夕食後も

自宅のパソコンで仕事をしていて,寝る前に20〜30分ほどグーグルのニュースや

ユーチューブを見る。その中で,歌手の斎藤和義が歌う反原発ソングを聞いた。

 

斎藤和義「ずっとウソだった」

http://www.youtube.com/watch?v=int79udDqMo&feature=related

 

これに関連して,反原発発言がもとで仕事をキャンセルされたと話題になった

タレントの山本太郎の映像も見た。

 

山本太郎「ボクのたいせつなもの」

http://www.youtube.com/watch?v=urowwwJrOs4

 

彼らの行動に対しては,「中途半端な知識で断定的なことを言うな」と批判する人もいる。

その批判自体は,理性的に考えればそのとおりだと思う。しかし,心情的には斎藤くんや

山本くんを悪く言いたくはない。彼らは自分の情熱に忠実に従っただけであり,往々にして

世の中を動かすのはそうした素朴な情熱だ。

 

そして,次のような動画も見た。

 

橋本知事(大阪府)

http://www.youtube.com/watch?v=Lyt37Dtx-u0&feature=related

http://www.youtube.com/watch?v=IaD7ZGQQLBU&feature=related

 

竹原元市長(鹿児島県阿久根市)

http://www.youtube.com/watch?v=rEyDt_Xg6WY

 

正直,紙に書かれた情報を読むだけでは,橋本氏や竹原氏に対して悪い印象を持つ

人の方が多いと思うし,ぼくもそうだった。しかし上のような動画を見ると,この人たちは

この人たちなりの情熱をもって,何かを発言したり行動したりしようとしていることがよく

わかるし,彼らがおそらくは世間で思われているような「バカ」ではないことも明らかだ。

知識や経験の程度や種類は違うにせよ,上に挙げた4人の「情熱」の質は,みんな

共通していると思う。そういう意味で,ぼくは彼らに必ずしも賛成はしないが,共感はする。

こうやってユーチューブで現実の社会に生きる人たちの営みを見ていると,テレビで

予定調和的なドラマやコメディーのようなものを見るのが時間の無駄に思える。

最近テレビを見なくなったのには,そういう理由もある。

 

しかし,相変わらずマンガは読む。今年の「このマンガがすごい」で1位の票を集めそうな

マンガは今のところないが,おそらく今後,東北の震災に関連するマンガ作品が出てくる

だろうし,それが世間の話題を集めることになるだろう。ただし,フィクションではない。

東北の震災や原発事故をテーマにしてフィクションを描けるような勇気のある作家は

まずいないだろう。あるとすればノンフィクション,つまり実体験を描く作品だ。

東北出身のマンガ家は大勢いる。今のところリアルタイムで地震に会ったという内容の

作品を発表した人はたぶんいないが,たとえば「月刊少年マガジン」で佐佐木勝彦

震災後の故郷(岩手県)に帰ったときの経験を連載している。この種のマンガ作品が,

「星守る犬」のようなヒット作になる可能性は十分にあるだろう。

 

 

しばらく釣りに行くのは難しそうだが,マンガとユーチューブで息抜きしながら,何とか

この仕事の山を片付けて,秋のシーズンに備えたいと思っている。

 

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