日記帳(11年9月5日〜9月11日)

 

 


改めて思うに,今年ほど働いたこと今まで一度もなく,これからもないだろう(たぶん)。

今日の日曜日も,朝の6時半ごろから仕事をしていた。休みが取れないのでせめて

日記でも・・・と書くことはナンボでもあるが,時間がないので軽い話を。

 

1か月前ごろは,新物のサンマが3匹750〜780円くらいだった。今は流通量が増え,

1匹120〜150円くらいで買える。先日家で新サンマの塩焼きを食べたが,今年食べた

魚のうちで一番じゃないかと思えるほど美味かった。このサンマもたぶん東北で水揚げ

されたものだと思う。サンマの値段がたとえ例年より多少高くても,その分が義援金に

回るなら毎日でも買いたい。ニュースでは海に流出した放射能の値を兆の上の単位だ

とか言っているので,妊婦さんは気をつけた方がいいかもしれないが,オジサンは全然

平気だ。この年でサンマを10匹か20匹食って寿命が縮まる可能性なんか気にしない。

釣りに行けずおいしい魚を食べる機会がなかなかないので,せめて旬のサンマくらいは

好きなだけ食べたい。

 

 

話は変わって。

 

先日,枕元に置いておいたメガネをうっかり踏んでしまい,フレームがちょっと歪んで

レンズがずれた状態になった。1日のほとんどの時間をパソコンに向かっている身に

とって,メガネは大事な商売道具だ。視覚に多少違和感があるので,近くのショッピング

センター内にある大手メガネチェーンへ壊れたメガネを持ち込んだ。

 

若い店員が出てきたので,説明してメガネを預けた。

待つこと5分ほど。店員が戻って来て,言った。「これは直りません。レンズを留める

ネジの溝がつぶれていてフレームを動かせないので,全部取り替えるしかないですね」。

しかし,全く同じ型のフレームがないので,もっと小さいフレームに交換するしかない,

という。いくつかのフレームを見せられたがどれも今のメガネの6割くらいの幅しか

なく,はみ出す分はレンズを削らなければいけない。レンズを削ると焦点の中心が

ずれて,多少違和感が出るかもしれない・・・・のだそうだ。取り替えるフレームには,

25,000〜30,000円くらいの値札がついていた。

 

「ちょっと考えてみます」と言ってその店を出て,今度は地元の小さなメガネ店へ

行った。壊れたメガネはもともとこの店で買ったのだが,最初にそこへ行かなかった

のには理由がある。「もう店がないんじゃないか?」と思ったからだ。壊れたメガネを

買ったのは十数年くらい前のことで,当時の店主はけっこうな年だった。あの人は

たぶんもう現役を引退しているだろう・・・・・・・しかし,その店はまだ営業していた。

店のたたずまいは昔と変わらない。変わったのは,近くにあった本屋とか洋服屋とか

お菓子屋などの「○○店」がほとんど姿を消したことだけだ。

 

まだ昼間は暑い時期だが,店には冷房は入っておらず,扇風機が回っていた。

「ごめんください」と声をかけると,奥の部屋からぽっちゃりしたお兄さんが出て来た。

さっき行ったメガネチェーンの店員より一回りくらい上だろうか。たぶん,引退した

親父さんの息子だろう。「このメガネは,ずっと前にここで買うたんですが・・・」と,

先に別の店へ行ったことは言わずに,「直りますか?」と聞いてみた。お兄さんは,

「ちょっと見せてください」とメガネを持って,奥の作業場へ入って行った。

 

今度は,待つこと20分くらい。お兄さんがメガネを持って出て来た。

「直りました。ネジは新しいのに変えときましたから」。

お兄さんは汗びっしょりで,額からポタポタしずくが落ちている。

「直りましたか?いやー,ありがとうございます。修理代は・・・?」

「新しい部品を使うたわけじゃないんで,タダでええですよ」

(そうは言われても,あんたのその汗に,お金を払わんわけにはいかんよ・・・)

サイフを出したが,あいにく千円札が1枚しか入っていない。1万円札を出して

おつりももらうのも何かなあ・・・と思って,少なくて申し訳なかったが千円札を

渡した。お兄さんは,サービスだと言って使い捨てのメガネふきの束をくれた。

 

Tメガネの若い店員を悪く言うつもりはない。技術がなければ直らないものは直らない。

でも,後から行った地元のメガネ屋さんのお兄さんのような「職人さん」が,あらゆる

商売でだんだん少なくなっているのは寂しい。年寄りの数が増えているのでメガネの

需要はあるだろうが,あの店はどれだけお客が入るんだろうか。店の経営は楽では

ないかもしれないが,頑張ってほしい。そして,今となっては夢の世界の話でしか

ないのかもしれないが,われわれが子どもの頃にそうであったような,コミュニティの

中でそれぞれの分野の専門家たちがお互いに商品やサービスを提供しながら

お金が回っていくような,地産地消的生活のサイクルがいつか復活しないだろうか,

といつも思いながら,それとはあまり関係のない仕事に今日も追われている。

 

 

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