日記帳(2012年2月4日)

 

 

久しぶりに風邪をひいた。

 

ふだんはほとんど人と接触せずに生活しているが、家族からうつったらしい。

朝起きたときちょっと変な感じだったのが、仕事をしていた午前10時ごろから本格的にヤバい

感じになってきて,すぐに帰宅してフトンにもぐりこんだ。その直後から熱がどんどん上がって、

夜には39度4分にまでなった。そういう状態でも仕事は待ってくれず、編集者から長い電話が

かかってきた。向こうは向こうで校了間近なので、厳しいのはお互い様だ。フトンに寝たまま

携帯であれこれ話したが、中身はよく覚えてない。キツかった。

あまり大きな病気はしたことがないので、こういうときくらいしか重病の人の苦労に思い至らない。

去年同い年の友人がガンで亡くなったが、闘病中はどんな心境だったろうか。風邪なら治れば

普通の生活に復帰できるが、先の見えない寝たきり生活の苦しさは想像もできない。

熱が出るとのどが渇いて、果物が食べたくなったので、カットパインを買ってきてもらって食べた。

これを食べながら、子どもの頃のことを思い出した。小学生の頃、風邪をひいて家で寝ていると、

母親がいろんな果物を食べさせてくれた。実家は八百屋なので、店に何でもあった。リンゴ、

ミカン、イチゴ、柿、梨・・・しかしパイナップルはなかった。今のように生のパインが出回るように

なったのはわりと最近(?)のことで、それまでは缶詰のパインしか食べられなかった。

缶詰の果物は今はケーキにしか使わないが、当時はほとんど病気になったときだけ食べられる

ものだった。特に桃とパインの缶詰が美味しかった。これに限らず昔はおやつに果物を食べる

習慣があったので、栗やイチジクもよく食べた。最近はどこもそういう習慣がないので、うちの

子らもテーブルにミカンを山積みしても全く手を出さない。しかしリンゴでも八朔でもイチゴでも、

フォークを刺して食べられるような形で出てくるとよく食う。どんだけ横着なんだ。

熱があるので食欲はないが、腹にほとんど物を入れてないので、つい食べ物のことを考える。

子どもの頃は、季節ごとに好きな食べ物があった。たとえば夏は何と言ってもスイカだ。

スイカを一口サイズに切って大きなドンブリに入れ、その上からかき氷(昔はどこの家にも

かき氷を作る道具があり、近所に氷の塊を売る氷屋もあった)と錬乳をかけて食べる。

食べ過ぎると腹をこわすが、夏はこれが楽しみだった。冬は干し柿と豆モチ。モチは自宅で

ついて、黒豆を入れて大きなカマボコ型にしたもの。これを薄切りにして、焼いて食べる。

秋のおはぎや春のちまき、かしわモチも好きだった。この間見た映画「山本五十六」で、

主人公から田舎から送られてきた干しイモ的なものをバクバク食っていたのが印象的だった。


30時間以上フトンで寝たおかげで風邪は治ったが、今度は腰が痛くなった。もともと腰痛持ち

だが、腰痛は同じ姿勢を続けているのが一番よくない。ずっとあおむけに寝ていたら腰に

負担がかかったのか、寝返りをうつのもしんどくなった。熱が下がって服を着ようとすると、

腰が痛くて立ったままズボンをはけない。家から20mほど離れた駐車場へ行くのにも何度も

立ち止まらないと歩けない有様で、イスに座っているのが一番楽なので仕事は開始したが、

このままではまずいので,たぶん松永で唯一の整形外科へ行った。ずいぶん昔に行ったことが

あるが,何で行ったのか覚えていない。引き出しの奥から当時の診察券が出て来て,診察日を

見ると平成7年とある。今から17年前だ。

 

病院へ行って先生の前に座ると,先生が訪ねた。

「どうされましたか」

「3日ほど前から風邪をひいて,寝込んどるうちに腰が痛うなりまして,今はもう歩くのがしんどい

くらいで・・・」

「どのへんが痛いですか?」

(後ろを向いて)「このへんです」(と背骨の下の当たり一帯を指でなぞる)

 

「筋肉痛ですね」

 

あっ,・・・・とその瞬間に,17年前の記憶がよみがえった。

そうじゃった,あのときも確か,おんなじような症状でここへ来て,この先生におんなじように

「筋肉痛ですね」いうて言われたんじゃった!

 

病院では電気治療を受けて薬をもらって帰った。たぶん一時的なものだろうからそのうち治ると

思うが,まだ痛いことには変わりない。

 

思い返せば17年前も,「これはヤバい」と思ってこの病院に来たら,ただの筋肉痛だったのだ。

そのときもたぶん今くらいの時期だった。当時の理由ははっきり覚えている。横島のタンク波止が

まだ地続きで,重たいリュックサックにいろんな道具を詰め込んで,山道を歩いて通っていた。

冬場はカップ麺を作るためのお湯をポットに入れて持って行ったりもしていたので,リュックは

相当な重さになる。これを往復40分くらいかけて持ち運びしたせいで,腰にきたわけだ。

しかしそのときは重たい荷物という理由があったが,今回はただ布団に寝ていただけで筋肉痛

になるとは・・・体の衰えは恐ろしい。腰が痛くなるたびに「今は安静にしとかないかんけど,

痛みがひいたら腹筋を鍛えよう」といつも誓う。その誓いはいつも守られないが,今回のことは

さすがにちょっとヤバいので,今度こそもうちょっと運動しようと思う。この時期は釣りに行っても

魚はあまり期待できんし、しばらくは腰痛に耐えながら暖かい部屋にこもって仕事でもしよう。

 

 

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