日記帳(2012年3月4日)

 

 

東京は先日大雪だったらしいが,西日本の寒さは峠を越したようだ。

金曜日に今週のノルマがほぼ終わって,この週末はちょっとゆっくりできるはずが,

あいにくきのうの土曜日は娘が仕事で車を使っていたので,どこへも行けず。

仕方がないので午前中は仕事の仕込み(データ整理)をやって,午後は仕事場の掃除。

今は日曜日の午前9時。今日は2〜3時間仕事して,午後は映画にでも行く予定。

 

毎年4月には,「カープ今年はいけるんじゃないか」と期待してCSのプロ野球セットを

契約するが,たいていはシーズンが終わる前に解約してしまう。それ以前に去年は

仕事が多忙で,ほとんどテレビを見る暇がなかった。今年も期待はしているが,

昔ほどには野球を見ても興奮しなくなった。理由の一つは,現場の人たち,つまり

選手や監督に感情移入するようになったからではないかと思う。

 

単なるファンなら,たとえば「石原みたいな打てんキャッチャー使うな」とか,

「岸本や大島なんかずっと二軍でええわ」みたいなグチをこぼしていればいい。

しかし選手の立場に身を置き換えて考えると,みんな生活をかけて頑張って

仕事をしているわけで,成績が下がったから仕事やめます,というわけには

いかない。まして監督は部下たちの生活に対する責任を負っているのだから,

実力が劣る若手を将来性に期待して優先して使ったりするのは難しい面がある。

そんなことをすれば目の前の勝利の確率が下がるだけでなく,選手のモチベーション

にも悪影響を与えかねないからだ。だからもし自分が監督だったら,たとえドングリの

背比べであっても,やっぱり現時点で一番能力の高い者をレギュラーにするだろう。

ところが,ファンとしてはそれでは面白くない。「東出がレギュラーやっとるうちは,

カープが優勝するのは無理じゃろ」という話になる。ないものねだりをしても仕方が

ないが,ファンは無責任だから「会沢や岩本や堂林は将来の主力になるんじゃけ,

ポテンシャルの高い選手にもっと経験積ましたれや」という気になってしまう。

そのへんで気持ちが行ったり来たりすると,純粋に目の前の勝った負けたを

楽しむ心境ではなくなってしまう。

 

そういう固い話は置いといて言えば,今年は去年よりは期待できるだろう。

とりあえず投手力がアップしたので。それと,巨人以外の他チームの戦力が

下がっているように思うので。カープで期待したい選手は,会沢と中崎。野村は

黙っていても好成績を上げるだろう。堂林は今年の成績で先が見えるだろう。

二軍で2割5分を切るようだと,鈴木の二の舞いになりそうだ。他球団では,

ヤクルトの上田と山田に注目している。彼らはいずれリーグを代表するような

選手に育つだろう。天谷と交換トレードで阪神の上本くれんかなー。

 

 

先週の週末はずっと仕事で,日曜日の夕方に漫画の単行本を数冊買った。

その中の1冊「萌え死にはディナーのあとで」(浜田ブリトニーの業界レポート漫画)に,

「アニメ声優はどのくらい儲かるか」という話がある。それによると,声優のランク,

簡単に言えば時給は,自分で決めるのだそうだ。たとえばある声優が有名なアニメで

重要な役を受け持ったとする。代わりはいないので,彼や彼女はその気になれば

自分の自給をいくらでも吊り上げることができる。ところが,そうやってランクが

上がると,別の仕事の声がかからなくなる。製作予算内に収めるために,時給の

高い声優は敬遠されるからだ。だから仕事をもらうために自分のランクを下げる

声優もたくさんいるという。商売人が物の値段をつけるのと全く一緒だと思った。

 

何しろ経済には無知なので,ゆうべも夕飯を食べながら娘(20代前半)とこんな

会話をした。

「AIJで何千億円も消えたのは,結局誰が払うん?」

「たぶん最後は税金を投入するんじゃろ」

「そんなことせんでも,お金を印刷すりゃええじゃん」

「そんなことしたらインフレになるじゃろ」

「なんで?」

「発行量が増えたらお金の価値が下がって,今まで100円で買えとったもんが,

千円出さんと買えんようになる」

「そしたら,お金が増えたらいけんの?外国で日本の製品が売れて,外国のお金が

日本へいっぱい入って来ても,お金は増えるじゃろ?そしたらインフレになるん?」

「知らんわ!経済学者に聞いてくれ!」

 

………みたいな。

 

全然話は変わりますが。先日,「日本数学会という団体が,(算数の)『平均』の概念

を問う問題を大学生に解かせたら,約4分の1が間違えた」という記事が新聞に

載っていた。小学生でも解けるこんな問題だ。

 

生徒100人の身長の平均が163.5cmだった。この結果から確実に正しいと言える

ことには○,そうでないものは×を付けなさい。(3つとも合っていれば正答)
(1)身長が163.5cmより高い生徒と低い生徒はそれぞれ50人ずついる。
(2)100人全員の身長を足すと16350cmになる。
(3)身長を10cmごとに区分けすると,「160cm以上で170cm未満の生徒」が最も多い。

試しに,帰省していた下の娘(大学2年生)に解かせてみた。

出した答えは「(1)○,(2)×,(3)×」。あほかー!

 

もしかして,ゆとり教育のせいか?と思って,上の娘にも解かせてみた。

姉の答えは「(1)×,(2)×,(3)○」。…言葉がない。

姉いわく,「(1)は違うじゃろ。平均の身長(163.5cm)の子が一人もおらんことに

なるじゃん」。あー,もう,しゃべるな!

 

ここまで来たら,ヨメにも解いてもらおう。

果たして,ヨメの答えは…

 

「2番!」

 

いや,そういう質問じゃないし…

 

「ほしたら,(1)×,(2)○,(3)×」

 

正解!すごい!(失礼だね)

 

「いや,この前新聞で読んどったけ。新聞見てなかったらわからんかったわ」

 

あ,そうですか。

…もしかして,○○が○○○○いるのはうちの家族だけですか?

 

 

また話は全然変わって。

漫画雑誌「グランドジャンプ」に連載されている「妹のジンテーゼ」という作品がある。

萌え系の女の子がたくさん出て来る今風の漫画だが,「ジンテーゼ」とは何ぞや。

この漫画は「もしドラ」と同系統の作品で,ちょっと知的なテーマを漫画にしてみました,

みたいな内容だ。漫画の登場人物の説明によれば,ジンテーゼはドイツの哲学者

ヘーゲルが提唱した言葉で,テーゼとアンチテーゼという対立する2つの概念を

第3の概念(ジンテーゼ)を新たに作ってまとめることを言うのだそうだ。詳しくは

知らんよ。漫画にはそう書いてある。

 

さて,そこで。鞆の架橋問題だ。湯崎知事はたぶん,ジンテーゼでこの問題を解決

したいのだろう。知事はまだ結論を出していないが,ぶっちゃけ実質的にはもう

決まりだろう。山側トンネル案だ。今までの経緯を見れば,それしかあるまい。

 

記憶に頼っておさらいしておくと,主な論点はこんな感じになる。

@住民は9割以上が,港を埋め立てて橋を架ける案に賛成している。主な理由は,

  交通の緩和,駐車場の拡充,高潮対策の3点(だと思う)。

A少数の住民と外部の識者(たとえば宮崎駿)は,歴史的景観を保護する観点から,

  埋め立てに反対している。

B福山市は港を埋め立てる方針で,知事の許可を待っている。

C知事は埋め立て賛成派と反対派の会合を提唱し,その中で弁護士団を使って

  両者の言い分を整理して発表した。

Dその主な内容は,次のようなものだ。

  (a)埋め立て架橋は景観に影響を与える。

  (b)交通を緩和する効果は埋め立てでも山側トンネルでも大差ない。

  (c)経費は,埋め立ての方が約20億円少なくて済む。

 

ポイントは,Dの(b)だ。これを承諾した(あるいはこれに反対しなかった)時点で,

埋め立て派の「負け」は決まったようなものだろう。駐車場や高潮対策は,必ずしも

港の埋め立てとセットである必要はない。経費に関しては,これを理由にして知事が

埋め立てを選択することは絶対にないと断言できる。なぜなら,経費の比較は前から

わかっていたことであり,ここまで議論を引き延ばした理由として筋が通らないし,

何より「安いから埋め立てます」で(全国の)反対派が納得するはずがない。自分の

株が下がるだけだろう。

 

だから,この問題の結論に関してはあまり興味はない。知事の言うとおり,トンネルで

交通が緩和できて,それとは別に町の整備の予算もつくのなら,誰も文句を言う

筋合いはないはずだ。しかし。仮に知事が山側トンネルを選択する決定を下した場合,

埋め立て賛成派からは猛烈な批判がわき上がるだろう。その最大の理由はたぶん

「実際に暮らしている住民の意志を無視した」というものだろう。

 

もちろん,第三者的に言えば,その主張は間違っている。住民の意志が最優先される

のだったら,知事の判断など不要だからだ。何のために知事が判断するという制度に

なっているかを考えれば,結局「住民の意志より優先すべき要因もある」からだとわかる。

 

ジンテーゼの概念は,物事を論理的に考えることができて初めて成立する。

湯崎知事や,知事の手足となった弁護士たちは,そういうタイプの人間だろう。

しかし現実には,論理では動かない人の方が多い。人々はしばしば,論理よりも

前例とか,意地とか,人間関係とか,理屈とは無関係の行動規範を優先する。

それを批判するつもりはない。それが人間というものだろう。

だから湯崎知事がどんな結論を出したとしても,多くの人はそれに反発し,マスコミも

(彼らに言わせれば民意の代弁者として)それに同調するだろう。

しかしぼくは,鞆の埋め立て問題に関する限り,湯崎知事の一連の行動を評価する。

もっとも,知事が山側トンネル案を選択することが前提ではあるけれど。自分は鞆の

住民ではないからどっちでもいいんだが,この流れで知事が埋め立てを選択したら,

それは違うだろ?と思わざるを得ない。

 

ちなみに実際のジャンプの漫画では,現実のある課題に対して,一人の女の子が

賛成派と反対派の両方が満足するような妙案(ジンテーゼ)を出す。しかし別の

女の子がそれを却下する。「なぜ?」と提案した女の子がたずねる。その答えは,

「だって,ここはジャンプだよ。戦わきゃ!」 ---- 実社会もまさにその通りだね。

 

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