日記帳(2012年7月15日)

 

 

6月25日に京都旅行から帰っていらい,1日もまともな休みを取ってない。

この週末の行動はこんな感じ。きのうの土曜日は朝から普通に仕事。しかし週末に

何もしないのは寂しいので,夕方4時半ごろ切り上げて福山の繁華街の映画館へ。

1時間ちょっとの短い映画「ポテチ」を見た。仙台を舞台にして小市民たちの小さな

事件を描いた作品で,こういう映画が好きだ。スペクタクル的なのは好まない。

映画館を出て松永へ帰り,実家へ。高齢の両親の世話をするため,毎晩行っている。

30〜40分ほどかけて夕飯の片付けをして,介護度4のおばあちゃんに薬を飲ませ,

おむつを替えてベッドに寝かせる。こういうのは全然苦痛に思わない。自分がやるしか

ないし,やることは毎日同じなので。もっとも,認知症だったら話は別だろうが。

本業が忙しいのも基本的にはストレスにはならないが,締め切りに追われるのはきつい。

8時過ぎに実家を出てコンビニに寄り,適当につまみを買って帰宅。シャワーを浴びて

ゆっくり酒を飲みながら新聞を読む。家族は仕事や遊びで夜遅くならないと帰って来ない。

大津市のいじめ自殺事件についてはいろいろ思うこともあるが,話が長くなりそうなので

今日は書かない。

 

今日の日曜日(15日)も朝の7時から仕事をしていたら,8時半ごろ実家のおじいちゃんから

電話がかかってきた。おばあちゃんが腹が痛くて病院へ行きたいという。当番医を探して

診察を受けたが,特に異常はなかった。10時過ぎに仕事場へ戻って,仕事の続き。

昼頃1本上がったので,コンビニで買った冷やし中華を食べ,休憩してこれを書いている

今は午後1時ごろ。3時ごろから東京の編集者と電話で2〜3時間ほど打ち合わせる予定。

最近は毎日このパターンで,長時間電話機を握っている。もう1年半以上関わっている

大きなプロジェクトだが,とりあえず今月中には一段落しそうなので,これが終わったら

どこかで半日ほど釣りをして,汗をいっぱいかいてビールを飲みたい。

 

カープは7月に入って好調で,サンフレッチェもついにきのう首位になったが,

やっぱりサッカーより野球が面白い。野球の方が個人個人にスポットが当たり

やすく,それぞれの選手に感情移入しやすいからだ。今年のカープの選手で言うと,

カープの歴史上類を見ないとまで言われた大手術とリハビリを乗り越え,5年ぶりに

1軍登板を果たした河内投手の名前をまず挙げたい。最悪今年か来年解雇されたと

しても,本人としてはある程度納得できるだろう。ある意味感動的な復活劇だったが,

新聞の扱いがそれほどでもなかったのは残念だ。次に思い浮かぶのが白浜捕手

地元の広陵高校からドラフト1位で入団したが,たぶん1軍には一度も上がれずに

引退するんじゃないかと思っていた。しかし今年は1軍でヒットも打った。倉と石原が

引退したら,会沢と二人で1軍に定着してほしい。一番驚いたのは,文句なしに

堂林くんだ。熱心なカープファンでも,彼が今年ここまで伸びるとは誰一人予想して

いなかっただろう。そういう意味では,英才教育に徹した野村監督も偉いと思う。

しかし,今年のプロ野球で今までのところ一番印象に残っているのは,横浜の

三浦投手が150勝を達成した試合のヒーローインタビューで語った,「横浜に

残ってよかった」という言葉だ。彼のこの一言が,万年最下位の横浜ベイスターズの

ファンたちをどれだけ喜ばせたかは想像に難くない。三浦と言えば元不良高校生

みたいな外見的イメージがあるが,立派な人格者だと思う。

 

 

話は変わって。仕事の合間に読んでいるマンガの中に,こんなセリフがあった。

 

ボクの正義とアナタの正義は違います。深夜人通りも車も少ないとこを

10キロオーバーで走る車と,制限速度を10キロマイナスで走って大渋滞を

招く車。どっちが人に迷惑かけてんですかね!?

 

ああ,ここにもオレと同じことを言っている人が…という感じ。

「ごっこ」(小路啓之)の主人公が,正論を吐く近所のオッサンに向かって吐いた

セリフである。ただしこの主人公自身は30歳の引きこもりニートで,やがて殺人犯に

なるのだが。

 

「週刊文春」に連載されている劇団ひとりのコラムに,こんなエピソードがあった。

 

ある日喫茶店に入りコーヒーを注文した彼は,来る途中で買って歩き食いした

アメリカンドッグの棒を握っていたことに気付く。「すいません。これ捨ててもらって

いいですか?」。ウエイターはあいまいな返事をして棒を受け取り,奥へ消えた。

数分後,注文を持ってきたウエイターが言った。「あのぉ,個人的なゴミは

やめてもらっていいですかぁ?」

 

コラムではこのあと,「アメリカンドッグの棒ぐらい良いではないか」的に話が続いて

いくのだが,これを読んで思ったのは,このウエイターの対応をどう思うか?と

いう質問に対する答えは,各人の人生経験の種類の違いを反映するかもしれない

ということだ。

 

たとえば公務員だったら,「ウエイターの対応は正しい」と答えるかもしれない。

自分も2年ほど役所に勤めていたが,その経験から言うと,役所の人間が一番

大切にしなければならない一般的なモラルは「公平性」だと言っていいだろう。

市民はみんな平等に税金を負担しているのだから,Aさんに対する対応と

Bさんに対する対応とがその都度違っていたら「不公平だ」というクレームが出る。

そこで公平性を保つためには,「規則ですから」と言うのが一番手っ取り早い。

そう言われれば誰も反論はできない。しかし,それでみんなが納得するのだったら,

劇団ひとりのこのコラムは一つも面白くないことになる。

 

では,自営業者ならどうだろうか。ぼくがこの店の喫茶店のマネージャーだったら,

そのウエイターに対して「個人的なゴミは受け取れない」的なことは絶対に言わせ

ないだろう。なぜなら,客を平等に扱うことは喫茶店経営の目的ではないからだ。

客商売の目的とはお金を儲けることであり,その目的に沿う最も合理的な接客を

選択するのが当然だ。お客を不愉快にさせるなど論外であり,客に喜んでもらえる

ならいくらでもルールをねじ曲げたってかまわない,と普通の経営者は考える。

野村証券のインサイダー情報の漏洩事件を見てもわかるだろう。これはもちろん

論外の犯罪だが,あの事件が大きな問題になった理由は,1つには「お金が

からんでいる」からだ。金がらみになると,たとえ1円だろうが問題視されることは

覚悟する必要がある。たとえば店主が「今日はカープが買ったからコーヒー代を

10円割引します」と言ったとしたら,それを喜ぶ人もいるだろうし,不公平感を

覚える人もいるだろう。別の理由は,インサイダー取引の背後には「悪意」があり,

ルール違反の程度が大きいことだ。一方,特別な悪意のない客が「捨てといて

くれない?」と差し出したアメリカンドッグの棒ごときに店のルールを持ち出す

ような事なかれ主義は,客商売では基本的に通用しない。このコラムに出てくる

ウエイターの対応を,ある人は適切だと言い,別の人は不適切だと言うかもしれない。

どっちの見方が正しいかという問題でない(また,店のルールの法的根拠うんぬん

の話ではない)ことは言うまでもない。

 

要するにルールというのは,ケースバイケースで「守らなければならない度合い」

が違うということだ。道端にお金が落ちていた。そのお金が100万円だったら,

ネコババすれば確実に犯罪者扱いされるだろう。しかしそのお金が10円,

あるいは1円だったらどうか?そのコインを拾って自分のポケットに入れる行為が

仮に法的には犯罪であっても,だからといってそのコインを交番に届ける人はまず

いないだろう。そしてその人は,そのとき「見つからなければルールを破ってもいい」

なんてことは決して考えてはいないだろう。さらに「道で拾った10円玉を自分の

ポケットに入れるような奴は,ルールを守れない社会的不適合者だ」なんてことを

思う人も,普通の社会人の中にはまずいないだろう。つまり,そういうことだ。

 

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