日記帳(2013年4月21日)

 

 

今日の日曜日は名荷へ行くつもりだったが,天気予報が悪かったのでパス。

しかし朝起きてみたら意外と好天で,これなら行きゃえかった。しかし仕事もある。

溜まった仕事を片付けないと連休も休めないので,今日も働いている。

さらに「連休前に資料を送るので連休中にやってください」という仕事も頼まれている。

今年は多少は楽になるかと思ったが,結局締め切りに追われる生活は変わらない。

息抜きに映画でもと思ったが,今は見たいのがないし…(コナンは連休に見に行く)

 

とりとめもない話を少し。

 

民主党政権で円相場が市場最安値を記録した当時,「今外貨預金しといたら,円安に

なったら儲かるんじゃないか」と,素人なら誰でも考えそうなことを考えた。しかし素人

なので,実行するほどの熱意もない。今から思えば,実際にやっときゃよかったと…

1ドル20円の差なら,単純計算で1000ドル(10万円くらい)で2万円儲かっていた。

うちの身内に銀行員がおったらなあ。

 

アベノミクスはいつバブルがはじけるかという話もあるが,前回の政権のときに比べると

安倍さんの言動がだいぶ変わっていることは間違いない。前回は「美しい国」とかいう

浮世離れしたスローガンを掲げていたが,今回はいわゆる「将を討つにはまず馬を」

とか何とかで,経済政策で実績を挙げることに専念したのが今のところ成功している。

きのうの新聞に,女性の子育て支援などを通じて女性が働きやすい環境を整える必要が

あるという趣旨の首相談話が載っていた。安倍さんや石原さんのようなガチガチの

保守の人は,女性の社会進出を嫌うのが昔は相場だった。古きよき時代の日本では,

男が外で働いて女は家庭を守るというロールモデルがあったからだ。

しかしこのご時世で,そんなことは口にできない。「だったら男がみんな正社員になって

専業主婦を養えるくらいの給料を出せ」という話になるからだ。経済界はそんなことは

決して許さない。男と女の能力が同じくらいなら,相対的に賃金が安くて済む女性を

使った方が人件費が節約できるから,経済効率的には女性がどんどん外で働いて

もらった方がいい。ここには保守思想と経済の論理との対立があり,安倍さんは

少なくとも現時点では後者を優先したということだろう。

 

そこには,思想と現実にどう折り合いをつけるかという問題がある。

社会的思考と個人的思考のバランス,と言ってもいい。

たとえば新卒のある若者が,ある企業に入社した。ところがそこはブラック企業だった

このとき彼の頭の中には,次の2つの考えが浮かぶだろう。

 

(A) これから自分はどうしよう。(個人的思考)

(B) こんな会社を野放しにしていいのか。(社会的思考)

 

このとき彼に(B)のようなことを考える余裕がなく,(A)しか頭に浮かばなかったとしても,

それを責める者は誰もいないだろう。

 

では,次のケースはどうか。きのうの新聞に,自民党の憲法改正の草案が載っていた。

予想されたとおり現行憲法よりも国家主義的で国民に義務を課す傾向が強いものだが,

それはまあ置いておく。これについて,ある評論家がこんな趣旨のコメントをしていた。

 

「もし徴兵制が敷かれても自分は外国へ逃げるからいい,という若者もいるが,

それは自分さえよければいいという卑怯な考え方だ」

 

この人は「卑怯」という言葉を使っていたわけではないが,大筋は上のとおりだ。

この人の立場から言えば,ぼくも卑怯者だということになる。

「憲法が改悪されて,将来もし日本に徴兵制が敷かれたらどうするのか?」という

批判をする人に対しては,このように答えたい。この考え方はずっと昔から変わらない。

 

@日本に徴兵制が敷かれる可能性は,万に一つもない。

A自分は(9条も含めて)今の憲法を変える必要はないと思っている。

Bだから,憲法改正の動きに対しては,自分ができる範囲で反対行動をする。

   (たとえば「選挙で自民党に投票しない」という行動をとる)

Cそれでも憲法が改正されたら,それは国民の総意だからそれに従う。

Dその結果自分に召集令状が来たら,家族を連れて外国へ逃げる。

 

@については前にも書いたが,徴兵制を敷くには(今回の自民党案とは違う)憲法改正が

必要であり,それには当然国民投票が伴う。徴兵制に賛成する国民が過半数を超える

などということは,絶対にありえない。自分が死ぬかもしれないようなルールを作ることに

賛成する奴などいるものか。

 

Aについては,自民党案では「家族を大事にしなければならない」という条項を憲法に

入れるとしているが,勝手にすれば?と思う。現実的な影響力ないからだ。

家族を大事にしなかった奴は憲法違反なのか?それを誰が判断するのか?

そもそも仮にそういうケースがあっても,裁判を起こせないだろう。

訴えによって利益を得る者がいないからだ。親に虐待された子どもが裁判を起こすと

いうケースは,憲法に規定があろうとなかろうと今でもできる。

要するに自民党案は,自分たちが大事に思っている思想を紙に書いて残したいという

情熱,あるいは欲望に基づいている。社長が部屋の壁に書道の作品を掲げたがるのと

根は同じだ。好きにやらせておけばいい。誰も迷惑しないのだから。

天皇を国家元首にするという案についても同じだ。それによって明治時代のような

社会が復活するわけじゃない。憲法を変えたくらいで世の中が変わるんだったら,

誰も苦労はしない。組織をまとめる立場の人は,「何もしないでおくと内部の人間の

考えがバラバラになってしまう」という強迫観念を持つものだ。社長が朝礼の訓示で

「もっと仕事の効率を上げろ」と言うのを黙って聞いている社員はみんな,「いちばん

非効率なのはこの朝礼だろ」と思っている。まあ,それくらい許してやれよ。もちろん

政治家と国民の関係は,社長と社員の関係とは全然違う。しかしその政治家を

選んだのは自分たちなんだから,その責任は国民自身が取らないとね。

 

Bについては,さっきの「もし徴兵制が敷かれたら」うんぬんの批判をした評論家に

対する反論としての意味を持つ。あなたの頭の中には社会的思考しかないのかも

しれないが,そっちの方がよほど無責任じゃないんですか?

あなたの言っていることは,ブラック企業に入社して悩んでいる若者に対して,

「こんな会社を野放しにしておいていいのか」という(社会的)思想を持て,と

強制しているのと同じです。あなたは自分の息子がそういう立場に置かれたとき,

息子に同じことを言いますか?

 

個人的思考と社会的思考のバランスは,人によって異なる。

概して言えば,庶民は前者を,エリートとニートは後者を重視する(半分冗談です)。

ぼくはどちらかと言えば個人主義的で,現実路線の考え方をする人間だ。

大切なことは,「社会思考派」は「個人思考派」に自分の意見を押し付けては

いけないということだ。逆はない。個人思考派は基本的に他人の意見に無関心だ。

 

思想を語ること(つまり議論をすること)によって現実が変わるわけじゃない。

思想を語るのが好きな人は,次の2つのタイプに大別できるかもしれない。

 

・現実に大きな不満はなく,ひまつぶしに思想で遊んでいる人(エリート)

・つらい現実を見たくなくて,思想に逃げ込んでいる人(ニート)

 

仕事でもそうだが,「社長のわがままは何とかならないのか?」といくら愚痴っても,

それで現実が変わるわけじゃない。いやなら会社を辞めるしかない。今自分にできる

ことをやるしかない,と割り切るのがまっとうな社会人の発想だろう。憲法改正が

いやなんだったら,自分にできる範囲で反対するか,国外逃亡するしかないじゃないか。

 

Cについては,我々の社会は多数決の原理で成り立っているのだから,相対的に最も

多くの人が賛成して決まったことには従うしかない。TPPしかり,原発の再稼動しかり。

結局,日本という国が「身の丈にあった暮らしでいい」という思想に染まる時代が来る

ことは,たぶん未来永劫ないだろう。それが我々の全体としての国民性なのだから。

そのことが安倍政権下ではっきりした,と言ってよさそうだ。個人的な思いはあるが,

結局みんなの総意でそういうふうに世の中が動いていくのだから,それに合わせて

生きにゃしょうがあるまい。
 
人気マンガ「もやしもん」の9巻に,さりげなくこんな情報が出てくる。(菌同士の会話)
 
「農業って日本の国民総生産516兆に対して1.6%の8.2兆しか生産額がないんでしょ」
「会社で言うとソニーや日産くらいだよ」
「それを農業従事者以外の農協職員30万や農水省他も含めると,ほぼ日本の1割位の
人で取り合ってるんだよ」
 
TPPに関しては,新聞やニュースなどを見る限り,農業関係者以外のほとんどの人が

参加に賛成する図式だった。それでもモメたのは上のような事情があるからだろう。

しかし,やはり1割は9割には勝てない。結局日本の社会を経済的に支えているのは

製造業であり,そちらの利益を優先することをより多くの人が望んでいるのなら,

多数決で決まったことに従うのが筋だろう。
 
Dについては,ここで社会的思考と個人的思考のバランスの問題が出てくる。

憲法改正なり徴兵制なりを自分の問題としてとらえるなら,「もし徴兵制が敷かれたら

自分はどう行動すべきか?」と誰でも考える。ブラック企業に入社した若者と同じだ。

その答えとして「国外へ逃げる」という結論を出した若者を,誰が責められようか。

オレだって外国へ逃げちゃうね。自分が死んだら家族が悲しむからね。

国に対する責任より家族に対する責任の方が,オレにとっては重いから。

あなたは違うの?

 

その前に徴兵制が敷かれないための努力をすべきだ?そのとおり。選挙はそのために

ある。自民党に入れたら徴兵制が復活するリスクが増える,しかし日本経済にとって

(ひいては自分の生活にとって)プラスだ。○○党に入れれば徴兵制が敷かれることは

なさそうだ,でもまた不況になるかもしれない。さあ,どっちを選ぶ?

 

選挙に限らず,我々は生活の中で常にこういう選択を迫られている。

他人がどう行動すべきか,なんてことを考えているヒマはない。

憲法改正には反対だって?で,あなたはその思いを自分でどう処理したいの?

自分にできないことを頭の中で考えてたって仕方ないでしょ。

その場その場で自分にできることをやるしかないでしょ。

それが社会人というものでしょ。

 

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