日記帳(2013年6月9日)

 

 

今日の日曜日は朝の4時過ぎに起きて,蒲刈へ釣りに行って来た。

6時ごろから三之瀬と向Cで満潮過ぎの10時半ごろまで釣ったが,

残念ながら本命の当たりはなし。リリースサイズのコブダイ・カサゴ・

ササノハベラが合わせて6匹釣れただけだった。今週も来週も東京へ

出張があり仕事が忙しくなってきたので,かぶせ釣りは秋までお休み。

これからの時期は涼しい時間帯に近場で短時間イワシやキスを狙う。

 

きのうの土曜日,テレビでAKBの総選挙が放送されていた。

アイドルの賞味期限は短いのが普通だが,あれだけ高い人気が

何年も続く秘密はどこにあるのか?と考えてみた。

AKBは,もともとは一部のコアなファンから多額の金を引き出す,ちょっと

お行儀の悪いビジネスモデルだった。ところが今や,オジサンオバサンまで

AKBのだれそれが好きだ,と言う。昔のアイドルの場合,たとえば「松田聖子が

好きだ」というファンの多くは「聖子ちゃんの○○という曲が好きだ」のように

音楽が本人の個性の構成要素の1つだった。ところがAKBは全員で1つの

曲を歌うわけだから,音楽は差別化の要因にはならない。つまりファンは

各人の顔やキャラクターだけを見て好き嫌いを判断しているわけで,

ある意味アイドルとしての純度は高いと言える。もともとのコンセプトは

「会いに行けるアイドル」で,実際に彼女らに会いに行きたいと思っている

若い男にはウケるだろうが,オジサンやオバサンは別に彼女らを生で見たい

わけじゃない。では,AKBが熱心なファン以外の「その他大勢」を引きつける

秘密はどこにあるのか?と考えてみると,結局そこには「流行に乗り遅れ

たくない」という心理が強く働いているんだろうと思う。

出版物でも同じことが言える。中身とは無関係に「100万部も売れた本なら

自分も読んでみたい(または,読んでおかないとまずいんじゃないか)」と

いう動機で本を買う人は少なくない。「AKBくらい知っとかないと」という動機で

何となく見ている人もたぶん多いだろう。「いや,自分はAKB好きだよ」という

人も,もしかしたら「まわりの人が好きなものは自分も好きになるべきだ」

みたいな潜在意識に影響されているのかもしれませんよ。いいけどね。

え?お前はどうなんだ?いや〜,自分,三次元にはあんまり興味ないです。

 

 

前の日記に安全保障の話を書いたとき,書き忘れたことがあるので補足を。

「日米安保体制を絶対視していいのか?アメリカがいざというとき日本を

確実に守ってくれるという保証があるのか?」という意見がある。

大丈夫。北朝鮮が日本にミサイルを撃ち込んでくる可能性が絶対にないのと

同様に,アメリカが非常時に日本を軍事的に「裏切る」可能性も絶対にない。

ここでもまた,アメリカの立場に立って考えてみればわかる。たとえば中国が

日本に攻めてきたとする。このとき,アメリカが安保条約を破って「日本に

軍隊を派遣しない」という判断を下すだろうか?それは絶対にない。

理由はこうだ。その日中戦争の結果,日本が完全に中国に吸収されるのなら

まだいい。しかし結果的に日本という国が(たとえ敗戦国であったとしても)

残ってしまったらどうなるか?日本人はおそらく「やっぱり自分の国は自分で

守らなければだめだ。軍隊を作ろう。中国もアメリカも敵だ」と考えるだろう。

軍事力を持った日本を敵に回すことのリスクは,先の大戦の比ではない。

国の規模にかかわらず,下手をすると中国軍より日本軍の方が怖い −

とアメリカは考えるだろう。その結果,「裏切りの代償が大きすぎるので,

裏切らない方が得策だ」という結論に至ることは間違いない。

そう考えると,日本の右翼と呼ばれる人々は,存在しているだけで日本の

国防に一役買っていることになる。彼らは「スキあらば再軍備を」的なことを

考えている。国民にとってはいい迷惑だが,そういう勢力がいる以上,日本に

軍隊を作る「言い訳」を与えてはならない,とアメリカその他の諸外国は考える。

そこには「右翼がいるから日本の平和が守られている」というパラドックスがある。

右翼思想は好きじゃないが,右翼勢力は(法を守る限り)いてもいいのかもしれない。

 

 

最近「ブラック企業」(今野晴貴・文春新書)という本を読んだ。

いろんな情報が入っていたが,一番印象に残ったのは次のような説明だ。

ブラック企業は「正社員を大量に雇用し,使える者だけを残してあとは切り捨てる」

という経営スタイルをとっているところが多い。それだけなら,どこの企業でも

多かれ少なかれ似たような現実があるし,倫理的にも問題にはならないだろう。

ところが今の日本では,「出来が悪い」という理由で正社員の首を切ることはできない。

そこでブラック企業は,「会社が首にした」というのではなく「本人が自主的に辞めた」

という形で社員を整理する。そのためのプロセスとしてパワハラその他の反社会的

行為が半ばマニュアル化しており,第一段階としては本人をうつ病にして休職させる。

休職期間が過ぎて本人が復帰しては意味がないので,少し休んだくらいでは回復

できないくらいのダメージを与える。結果的に本人は復職できそうにないという理由で

自分から退職を願い出る。そうやって退職した若者は,当然うつ病が治っていない

から他の会社にも雇ってもらえない。するとたちまち生活保護者に転落する。

生活保護は税金から出るので,ブラック企業自体の腹は痛まない。

つまりブラック企業とは,端的に言えば「多くの若者を入社させ,その大半をうつ病に

してから社会に戻す」という,いわば「生活保護者生産装置」のようなものだ,という

趣旨のことが,この本には書いてある。ちなみに,この本でブラック企業と名指しで

書かれているのは,ウェザーニュース,大庄,ワタミ(週刊誌でもよく出てくる)などだ。

また実名は挙げられていないが,明らかにユニクロと思われる会社の過酷な待遇も

詳細に説明されている。読んで気分が明るくなる本ではないが,一読に値する。

 

ついでにもう1冊。これは最近3年間くらいに読んだ本の中で一番面白かった。

世界が絶賛する『メイド・イン・ジャパン』」(川口盛之助・ソフトバンク新書)という本だ。

内容は,モノづくりの世界で日本人の独特の感性を生かした新製品が世界市場で

博している人気の高さと今後の展望を解説している。たとえば「ツンデレ」テレビという

商品がある。携帯サイズのワンセグテレビ受像機で,チャンネルや音量を変えるとき

女の子の声で反応する機能がついている。(以下はこの本からの説明の抜粋)

 

このテレビを購入してしばらくの間,つまりまだ初対面の頃は,声の主である女の子は

人見知りしてツンツンしています。チャンネルを変えようとすると,「ちょっとお,見てるん

だからチャンネル変えないでね」などと生意気です。

これがしばらく使ううちに,「本気(マジ)ぃ?ま,ちょうど飽きたところだから,チャンネル

変えていいわ」に変わり,さらに使い込むと「チャンネル,変えまーす。えいっ。」などと

デレデレ状態に変化します。

 

だから何なんだ?と普通の人は思うかもしれないが,これはすごいことだ。

女の子の声が出るという機能は,テレビそのものの性能とは全く関係がない。

一方,その機能がついた分だけ製作経費はかさむわけだから,当然価格にも跳ね返る。

車や携帯にはうざったいくらいいろんな機能がついているが,それらは基本的に使えれば

便利なものであり,本体の価値を高めている。しかしこのテレビの音声反応は,テレビの

機能を高めるという目的を持っておらず,純粋な「遊び」でしかない。その結果値段が

上がってもそのテレビを買う人がいるということは,極端に言えば機械の性能をアップ

させなくてもアクセサリーの方で付加価値を高めれば売れるということであり,そこには

限りない工夫の余地とビジネスチャンスがある。「痛車」もしかり。あんな恥ずかしい車に

乗るやつの気がしれない,と思う人も多いだろうが,痛車はカスタムカー業界で過去に

例を見ないほど急速に成長しつつあり,海外にも広がっているという。これも日本人で

なければ出てこなかった発想だろう。この本にはこういう「モノ作りの最前線」の話題が

たくさん入っていて,情報を得るという面でも役に立つが,それにも増して筆者の文章が

すばらしい。自分も物を書く仕事をしているので,伝えたいことをどんな言葉にすれば

最も相手の心に響くのかに関心がある。この本の文章は大いに参考になった。

 

ちなみに,ツンデレテレビの「声優」は,もちろん釘宮理恵である。

 

 

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