日記帳(2013年7月21日)

 

 

今日の日曜日は,午前中は福山のNovaで仕事がらみのネイティブチェックを受けた。

その後イトーヨーカドーで昼食をとり,本屋とケーキ屋とスーパーに寄った。

きのうがヨメの誕生日だったのを完全に忘れていたので,今日は自前のケーキでも

作ろうかと思ったが,夕飯の支度もあるのでパス。夕方ちょっと海でも見に行くつもり。

 

新刊本の見本刷りがきのう届いた。この本には格別の思い入れがある。

 

「英語教育村の真実」(南雲堂)  〈860円+税)

※次の週末(7月26〜27日ごろ)から書店に出回ると思います。

 

タイトルから想像できるとおり,一種の暴露本だ。内容は5章に分かれている。

 

第1章  文部科学省の罪

第2章  英語入試問題の罪

第3章  英語教師の罪

第4章  英語出版物の罪

第5章  英語入試問題の改善案

参考資料  入試に出題された悪問の例

 

英語を全く知らない人にはちょっと読みづらいが,現時点で中学3年生くらいの

英語力がある人にはお勧めできる。ここでは,本作りの内幕を書いてみたい。

 

本を書くためには,出版社に企画を通さねばならない。

そのためには,まず編集者のアンテナに引っ掛かるような企画を出す必要がある。

ただし無名の著者が飛び込みで企画や原稿を持ち込んでも,まず通らない。

たとえ編集者が面白いと感じても,営業担当者が難色を示すからだ。

営業は「その本を出したらなぜ売れると予想できるのか」という根拠を,編集者に

対して求めてくる。ターゲットとなる読者の数が多いことは1つの必要条件だが,

パイが多ければそれだけ競争相手も多い。たとえばTOEIC対策本は英語出版物の

中でかなりのシェアを占めているが,星の数ほど本が出ているので,この分野で

ヒット作を作るのは他のジャンルよりむしろ難しいだろう。

「この本は売れるはずだ」という一番わかりやすい根拠は,著者の知名度や話題性だ。

第2の方向性として「よく売れている本に似た本を出す」という戦術がある。これは,

早ければ早いほどよい。2匹目のドジョウまでは捕まえられる可能性があるが,

3匹目,4匹目となるとだんだんサイズ(市場)が小さくなり,網の目をすり抜けてしまう。

そうした条件を満たせない場合は,内容面のインパクトが勝負になる。暴露本はその

タイプに入るが,リスクもある。暴露本の著者は,異端扱いされやすいということだ。

「佐藤教育研究所」というただでさえ怪しげな肩書きの人物が,日本で英語に関係

する仕事をする「村人」たちを批判しまくっているという構図は,「この人は何者?」と

いう疑念を読者に抱かせるのに十分だ。そういう目で見られるのはちょっと辛い。

引き合いに出して悪いが,研究社の辞書をボロクソにけなした本がベストセラーに

なって世に出たS島という人がいる。ここで弁解しておきますが,私はああいうタイプの

アジテーターではありませんから。日本の英語教育に恨みがあるわけではありません。

自分もそれで飯を食っているわけで。ただ,「英語教育村の真実」という本の中で私が

語っていることは,大学その他のアカデミックな世界にいる人には絶対に書けない

内容です(業界内のしがらみに縛られるから)。私はどこの親分の下にいるわけでも

ない一介のフリーランサーなので,思ったことをそのまま書けるわけです。

途中で文体が変わってますね。すいません。

 

ぶっちゃけたことを言えば,ワシらごとき無名の著者には,「自分の好きなように

原稿を書く」という自由はあまりない。版元(出版社)の意向や企画の趣旨に沿う

ことが前提なので,気が進まないことを書かざるを得ないこともままある。

しかしこの本は,最初から最後までフリーハンドを与えてもらった。

南雲堂さんには大いに感謝している。「南雲堂は大学生向けの教材をたくさん作っている

出版社なので,大学の悪口を書いた本を出すのはまずいんじゃないですか?」と,

編集のKさんと酒を飲みながら企画の話をしているときに尋ねたところ,

「そのへんは割と融通が利く会社なので大丈夫です」と言われた。それで気が楽になって,

日頃から持っている日本の英語教育に対する不満をぶちまけた…と言うと語弊があるな。

実際はもっとマジメな内容です。現状の問題点を分析して解決策を示すという,ある意味

オーソドックスな作りになっていると思います。

 

とは言え,好きに書かせたもらえた原稿が本になるのは格別に嬉しい。

願わくば,そこそこ売れてほしい。印税がどうこうとかの話ではなく,より多くの人に

自分の主張を聞いてほしいと思うのは当然だ。

最近テレビに出まくっている安河内哲也さんの推薦文もあるし,特に英語業界の人には

読んでほしい。一般読者の皆さんも,教養のアップと英語の勉強のために,ぜひ一度

手に取ってみてください。よろしくお願いします!

 

※実際に買っていただいた方へ: p.56に He never says bad thing about others. という

   文がありますが,下線部は things のミスタイプでした。お詫びして訂正します。

 

日記帳の目次へ戻る