日記帳(2014年7月6日)

 

 

最近仕事が忙しく,週末もだいたい仕事場で過ごしている。

釣りも今は端境期なので,せいぜい気分転換に仕事が一段落した夕方ごろに

近場で1〜2時間ほど竿を出す程度。映画も面白いのやってないし。

梅雨が明けると日中は外へ出る気も起きんので,まともな釣りができるのは

早くても8月の下旬ごろからだろう。

 

仕事の合間の気分転換に,最近新聞を賑わせている集団的自衛権の話を少し。

いろいろと思うことはあったが,いくつかの項目に分けてまとめてみたい。

 

(1)反対論を唱える人たちについて思うこと

 

賛成の意見も反対の意見も中身は多種多様であって,その中には共感できるものも

あればそうでないものもある。反対論者の主張について言うと,たとえば

 

・憲法改正が難しいからといって,解釈を変えて実質的に「改憲」するのはアンフェアだ。

・平和憲法を通じて築いてきた日本の対外的信用に傷がつく。

・テロに巻き込まれる危険が大きくなる。

 

これらの主張には納得できる。一方,「戦争には反対だ。集団的自衛権を認めると

日本が戦争に加わる可能性が高まる。だから今回の決定には反対だ」という単純な

三段論法にはあまり共感できない。こういう思想は,えてして思考停止を生むからだ。

原発しかり,反核運動しかり。あるものを「絶対悪」だと自分の中で定義づけた上で,

「悪いものは誰が何と言おうと悪い」と考えることは,ものすごく楽な作業だ。

だから怠け者(=考えることを怠ける人)は,そういうふうに考えたがる。

賛成論者たちだって,戦争に賛成しているわけじゃない。少なくとも賛成論者の主張を

理解した上で,「それでも自分は反対だ」と主張するのなら,それはそれでいいと思う。

 

ただし,安倍総理は自民党の総裁であり,これだけ好き勝手なことができたのも,

国民の多数が選挙で自民党に投票したからだ。安倍さんがタカ派であることは誰でも

知っていることだから,自民党に投票した人の多くは「政治的なマイナス面が多少あっても

自民党が政権を取ることによる経済的なプラス面の方が大きい」と判断したのだと思う。

事故のリスクを承知で経済効果を期待して原発を誘致する自治体の発想と同じだ。

だから,集団的自衛権の解釈が変わったことがもし悪いと言うなら,それは国民の

(選挙による)判断の結果だということを忘れてはならない。自分たちで選んだ国会議員

たちが決めたのだから,有権者はその判断に対して自分で責任を取らなければならない

つまり,国民は今回の与党の決定を受け入れるべきだ。文句があるんだったら,次の

選挙で自民党に投票しなければいい。ただしその行為は,かなり高い確率で「経済より

政治を優先する」という選択をするに等しいわけで,その選択を避けて「やっぱり自民党に

投票しよう」と思う人には,今回の決定を批判する資格はない。自分が選んだ政治家や

政党が,すべて自分の思うように行動してくれるなどと期待するのは虫がよすぎる話だ。

 

 

(2)自分が今回の決定に反対する理由

 

「おまえはどうなんだ」と問われるなら,今回の決定には反対だ。

現実的な損得勘定については,正直なところよくわからない。

もしかしたら,こうやって戦う姿勢を誇示する方が中国に対する牽制になるのかもしれないし,

尖閣諸島に自衛隊を送り込むのにも好都合かもしれない。アメリカにも恩を売れる。

ただ,自分が反対する理由は,もっとばくぜんとした不安のようなものだ。

経緯を見れば明らかなように,今回の問題は安倍総理の「独断」ですべてが決まった。

安倍さんの思想は完全におじいちゃん(岸元総理)の洗脳を受けており,いわば宗教と同じだ。

好意的に見れば安倍さんは保守派が喜びそうな「親[祖父]孝行」を果たしたとも言えるだろう。

逆に,新興宗教の教祖さまが権力を握って自分の個人的な思想を実現させたとも言える。

そう考えると,安倍首相は自分の個人的思想を実現するために国会や憲法を蹂躙したという

とらえ方もできるわけで,そこが一番引っ掛かる。反対論者はもちろんその点も指摘している。

いわく,立憲主義の否定だと。もちろんそういうことなんだが,一人の権力者が我を通そうと

するのを誰も止められないという状況が,ナチスドイツみたいで気持ち悪いわけだ。

 

(3)テレビの報道を見て思ったこと

 

ニュースステーションで古舘キャスターが,国会審議の時間が短すぎるという点に関して,

「賛成派も反対派も,日本の安全保障のためにどうしたらいいかという点では一致しているの

だから,もっと議論を深めるべきだ」という趣旨のことを言っていたが,全く的外れだと思う。

根っこの思想が違うのだから,いくら議論したって溝は埋まらない。そもそも,議論によって

何かを決めるというプロセスは,少なくとも国会では機能しない。多数決の結果は目に見えて

いるので,反対する側は国会中継や報道を通じて自分たちの主張に賛同してくれる国民を

増やすことが主な目的になる。しかしそれは今日では国会でなくてもできることであって,

テレビのバラエティ番組に国会議員が出演して持論を語る方がよっぽど有効だろう。

多様な議論が出るのはいいことだが,国会はパフォーマンスの場の一つにすぎないという

ことは意識しておくべきだと思う。

 

 

(4)世論調査を見て思ったこと

 

朝日と読売の世論調査の結果が違うという話もあるが,ちょっと前の調査結果で驚いたことが

1つあった。それは,いわゆる「歯止め」の規定が有効に機能すると思うか?という質問への

回答結果だ。反対論者の多くが「ノー」と答えたのは理解できるが,集団的自衛権の行使を

認めることに賛成する人々の中に「イエス」と答えた人がかなりいたことは意外だった。

そもそも賛成派の多くは,たとえば国連軍の活動に参加した際に日本の自衛隊だけが

「うちは武力行使できません」と言っても通用しない,という理由から,集団的自衛権の

行使に賛成しているはずだ。しかし現状の歯止め規定では,たとえ国連軍に参加しても

その軍隊の一部として活動することはできない。だから日本が軍事面でも国際社会の

一員としてまともに働こうと思ったら,歯止めはもっと広げないといけない。

政府も当然そう考えているだろうし,この歯止めは将来なし崩し的に広がる可能性が高い。

賛成派にとってそれはむしろ好ましいことだろう。歯止めが有効に働くという期待(?)は,

どこから出てくるのだろうか。

 

 

(5)今回の決定の教訓

 

今回の件は,逆の意味で国民に1つの教訓を与えていると思う。

それは,「総理大臣がその気になれば何でもできる」ということだ。

ただし「アメリカの機嫌を損ねない限り」という条件はつくが。

たとえば原発をなくすべきだと考える人(他の何よりもそれが優先だと考える人)たちは,

そういう思想を持つ人物を総理大臣にすることを目指せばいい。そうすれば,今回と同じ

ように総理の鶴の一声で,日本中の原発を10年以内にゼロにすることも可能だろう。

同じようにたとえば「非常勤で働く人たちの最低時給を千円にする」という主張をする人が

総理になれば,それも一発で実現するだろう。逆に言うと,誰がどんな主張をしようと,

その人が総理にでもならない限り,とんがった理想を実現するのは難しいということだ。

その判断は国民一人一人にできるわけだから。かつての橋本さんのようなカリスマ性の

ある政治家が現れ,一時的な人気に便乗して総理大臣になり,永続的な縛りのある

法律を強権で決める,というプロセスが夢物語ではない,ということを教えてくれたという

意味では,今回の件は反対派にとっても多少の救いがあるんじゃなかろうか。

 

 

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