日記帳(2014年11月16日)

 

英語に fair-weather friend という言葉がある。「天気のいい日(だけ)の友だち」,つまり

相手が順調なときにしか付き合わず困ったときには見捨てるような,頼りがいのない友人と

いう意味だ。中小企業への銀行の融資の姿勢を「天気のいい日だけ傘を貸して,雨の日には

取り上げる」と揶揄することもある。

 

だいたいオジサンはね,「コイツは人としてダメじゃ」というようなことはめったに思わんのね。

特に,いろんな意味で弱い立場に置かれた人がどんなに悪いことをしても,「気の毒になあ」と

思うことはあっても「けしからん」とは決して思わない。あるいは国会議員がセクハラやじを飛ばしても,

それは本人がそういう文化の中で育ったための必然的な結果であって,人格の問題だとは思わない。

しかし,そんなオジサンが,「ああ,こりゃ,ないわー」という感想を持ったニュースが最近1つあった。

コイツが自分の身内なら,ぶん殴ってやりたいと思う。

 

 

阪神を退団してカープに復帰する新井貴浩だ。

 

7年前,当時カープの四番打者だった彼はFAで阪神に移籍した。

そのときの移籍の理由が「弱いチームで野球をしたくない」からであったことは,本人が直接語った

わけではないが,カープファンなら誰でも知っている。当時の彼の行動を一言で言えば,座礁した

大型船の機関長が,ほかの船員や乗客を見捨てて沈みかけた船から逃げ出したようなものだ。

もしかしたらチーム内の人間関係とか別の理由があったのかもしれないが,苦境にあえぐチームを

見限って逃げ出したことには違いない。彼以前にもFAで移籍した選手は大勢いたが,みんな

「環境を変えて選手として上のレベルを目指したい」という前向きな動機だった。しかし新井の

場合はそうではなく,「弱いチームから逃げ出したい」という心が記者会見で露骨に表れていた。

それが,今でも多くのファンがカープのFA選手の中で新井だけを嫌っている理由だ。

しかし,当時の彼の行動はまだ許せた。「強いチームで野球がしたい」という気持ちは選手なら

誰でも持っていることは理解できるし,ある意味で「弱者の苦渋の選択」と言えなくもない。

 

だが,しかし。今回の復帰は話が別ですよ。既に野球選手として成功している人間の行動として,

今さらカープに復帰しようというのは,節操がないにもほどがある。「弱いチームで野球するのは

いやだ」という選手が元のチームに復帰する大義名分があるとしたら,それは「もう弱くないから

(戻ってやってもいい)」ということなの?ふざけるな!この fair-weather friend が!

 

よくも悪くも温情主義のオーナーが新井に声をかけたのは,別に悪いとは思わない。

むしろ立派かもしれない。緒方監督も心中思うところはあるだろうが,大人の対応をしている。

新井は「自分がカープに戻っていいのかどうか悩んだ」と言っているが,7つも年を食ったのに

まーだわからんとかお前は!と言うしかない。去年大竹がFAで去ったとき,彼は「カープ戦だけは

負けたくない」と語った。そんな彼を悪く言うカープファンは,全くいなかった(はずだ)。

大竹(を含め今までカープからFAで出て行った選手たち)と新井との違いはそこにある。

「悩みました」と口にするのは「悩んだんだから許してほしい」と周囲に言い訳しているのと同じだ。

その女々しい態度に,ファンは怒っているのだ。それがコイツには一生わからんのだろうなあ。

 

カープから声をかけられた時点で,「ありがたいお話ですが,今さら自分がカープに戻るわけには

いきません。他の球団からのオファーを待ちます。もしどこからも来なければ引退します」と,彼は

答えるべきだった。また,どうしてもカープに戻りたいというなら,第一声は「カープファンの皆さん,

7年前の裏切りを許してください」とファンに謝罪するべきだ。それが人の道というものだろう。

 

新井貴浩という一人の人間が実生活の中でまわりの人たちからどう評価されているのかは知らない

(もしかしたら多くの人に愛されているのかもしれない)が,今回のコイツの行動は…ホンマに…

人として間違っとるよ,キミは!

 

  (ただし来年のシーズンが始まれば,選手としての新井は応援するよ)

 

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