日記帳(2015年6月14日)

 

最近仕事が忙しくゆっくりできるのは夕食のときだけなので,新聞を読みながらビールを飲んで,

1時間くらいかけて夕食をとっている。このところ新聞には安保関連法案の記事や論評が毎日載っている。

新聞や雑誌で多くのがいろんな意見を言っているが,ワシと同じことを考えている人は誰もおらんのか?

と思ったので,ここに書いておきたい。

まずオジサンの基本的な姿勢としては,安保関連法案と,この法案によって安倍総理がやろうとしている

ことには反対だ。その理由はただ1つ。自衛隊が海外に出る機会が増えれば,日本が戦いの当事者として

相手から敵視される可能性が高く,そうすると日本の一般市民が国際テロリスト集団の標的になる可能性が

増えるからだ。仮にそのリスクに見合うリターンとして「日本の国益を守る」あるいは「国際平和への積極的

貢献によって日本が国際社会で名誉を得る」という点を法案推進派や安倍総理が挙げたとしても,その

損得勘定は割が合わない(リスクの方が大きい)と思う。

上のようなことは,多くの人が指摘している。違うのはここから先だ。この法案に反対する多くの人々の

意見が,オジサンには「自分の思想の押し付け」に映って仕方がない。とりわけ「自衛隊員が海外で

戦争に巻き込まれて死ぬ危険が増す」という理由で法案に反対することには共感しない。

災害救助の場合でも自衛隊員が身体的危険にさらされることに変わりはない。

「ケガをしたり死んだりするのが怖い」と考えるような人は,そもそも自衛隊には入らないだろう。

今日の中国新聞には,ある識者がこんな趣旨の意見を載せていた。

「戦後自衛隊員が海外で命を落とさなかったのは,憲法9条があったからだ。その歯止めを失って

日本の自衛隊員がアメリカの戦争に巻き込まれれば,多くの自衛隊員が死に,その結果自衛隊への

入隊希望者が激減し,徴兵制の復活につながりかねない。」

言っちゃ悪いが,こんなのはただの妄想にすぎない。詳しい理由はここでは省くが,日本に徴兵制が

復活するようなことは絶対にない。「絶対」という言葉がきつすぎるなら,「徴兵制復活の可能性」は

「年金の支給額がゼロになる可能性」と同じくらい低い,と言っておこう。

そこで,「徴兵制の復活はない」という前提で考えてみよう。安保関連法案(あるいは憲法改正)によって,

自衛隊が海外で「戦争」に加わる可能性は十分にあるだろう。そうなったとき,A君という若者がこう

考えたとする。「自分はいわゆる負け組で,この先民間企業に正社員として就職できる可能性はまずない。

だったら自衛隊に入ろう。給料は保証されるし,仮に海外の戦争で死んでも,社会貢献できれば本望だ」。

今「安保関連法案に反対」と主張している人々は,このA君に対してどんな言葉をかけるだろうか。

「君は自衛隊に入るべきではない」とは言えないだろう。それはA君個人の生き方に対する過干渉だ。

では,A君と同じ思いで自衛隊に入隊した若者たちが,死をも覚悟して海外の戦争に参加したとして,

損をするのは誰なのか?A君たちを派遣する国も,A君たち自身も,損はしない。ただし冒頭で述べた

とおり,そうやってA君たちが戦って自分が死ぬのは勝手だが,それが引き金になってテロリストたちが

兵士(自衛隊員)ではなく日本国内の一般市民に危害を加えたら誰が責任を取るんだ?という主張は

成り立つ。要するに,「戦争するなら軍人同士でやってくれ。それならオレたち一般市民は反対しない。

でも,オレたちまで巻き込むのなら,戦争はやめてくれ」というのがオジサンの基本的な立場だ。

同じようなことを考えている人も多いはずだと思うんだが,そういう意見は新聞や雑誌で見たことがない。

ちなみに,先の識者の意見の中に「危険が増せば自衛隊への入隊希望者が減る」とあったが,

実際にはそんなことは起こらない。危険が増えれば当然,自衛隊員の給料は高くなるはずだから。

たとえば「死ぬかもしれませんが,年収1千万で自衛隊に入りませんか?」と誘われたとき,その誘いに

乗るかどうかは各人の判断であり,他人が指図するようなことじゃない。

「本人が死んだら身内が悲しむ」なんてのも,大きなお世話だ。

そこまで考えると,この話と原発反対論との接点が見えてくる。原発は,なくて済むのなら,ない方がいい。

では,なぜ日本に原発がなくならないのか?その1つの理由は,原発を受け入れる自治体があるからだ。

しかし,その自治体の住民ではない人に「あなたたちは原発の立地を認めるべきではない」と主張する

権利はない。実際に今でも原発の立地を認める自治体があるのは,住民たちが(多数決の結果として)

「多少の事故のリスクは覚悟の上で,補助金がほしい」と判断したからだ。

それと同じように「多少の命の危険は覚悟の上で,給料目当てに(あるいは自己実現の手段として)

自衛隊に入りたい」と思う若者を,誰が批判できようか。

まとめよう。安保関連法案や憲法改正に反対する合理的な理由があるとするなら,それは

「私たち一般市民の危険が増すから」ということに尽きる。

それ以外の理由は,自分の思想の押し付けにすぎない,とオジサンは思う。

 

ついでに余談を1つ。前にも書いたが,オジサンは憲法改正には反対だ。しかし,「憲法9条を世界遺産に」

という運動。あれはやめてほしい。日本の恥だ。同じ思想の仲間内で盛り上がるのは勝手だが,外国に

向けてこれを発信したら,「あんたら,何言うとんの?」というふうにしか思われないと思う。

第二次世界大戦後,日本が戦争に巻き込まれなかったのは,「憲法9条のおかげ」では決してない。

正しくは「憲法9条+日米安保条約」のおかげだ。だから世界遺産登録を目指すなら,この2つがセットで

なければならない。子どもでもわかると思うんだがなあ。

 

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