日記帳(2015年10月12日)

 

今回は,カープの話

生活のサイクルと微妙に合わないのでなかなかテレビ観戦できず,ラジオで聞くことが多い。

結果から言うと,4位になったのはファンとしては残念だったが,チームとしてはよくやったと思う。

戦力的に優勝できる力はあったかもしれないが,計算通りにいかなかったのは仕方ない。

個々の選手の成績については,とやかく言わない。数字に表れた結果が本人の実力だろう。

選手起用や作戦も特に問題なかったと思う。緒方監督には当分カープの監督を続けてほしい。

カープは,いろんな意味で「いい球団」だと思う。

たとえば横浜。中畑監督はまだ続けたかっただろうが,新聞報道によれば来期のコーチ陣を

自分が選んだスタッフで固めたかったらしい。しかし球団がそれを認めなかったのが辞任の

主な理由だと言う。いわんや,三木谷オーナーの「野球ゲーム」につき合わされている楽天の

監督や選手は気の毒でならない。カープではそんなことは決して起こらない。

今年のドラフト1位の野間が緒方監督の希望で取った選手であるように,球団が監督を

全面的にバックアップする体勢が整っている。それで負けたら監督が責任を取ればいい。

そういう意味で,楽天のチーム運営は最低だ。実質的にオーナーが監督の仕事をしているのに,

最下位になってファンを失望させても本人は責任を問われない。会社が赤字になっても社長が

平気な顔をしているのと同じで,組織モデルとして間違っていると思う。

緒方監督は,人格的にもなかなか立派だ。金本がFAで阪神に移ったとき,球団側が

ほぼ同期の緒方には将来の指導者(監督?)手形を切ったのに自分にはその確約が

なかったので腹を立てたのがFAの理由だ,という報道を前に読んだことがある。

金本のことはともかく,緒方に監督の道を歩ませた球団の判断は正しかったと思う。

比較するようで悪いが,今年のテレビ中継の中で山本浩二が,代走で出た赤松が

牽制球でアウトになったとき「ボーンヘッドですね」と言っていたのを聞いて失望した。

この人は監督時代に選手をそんな目で見とったんか,という意味で。

常識的に考えて,代走で出た選手が牽制で刺されるのが不注意なミスであるわけがない。

投手とのぎりぎりの勝負に負けただけの話で,打者がアウトになるのと何ら変わらない。

緒方監督は,選手がどんな失敗をしても決してその選手の悪口を言わない。

全部自分の責任だ,と言う。これは管理職として非常に大切な資質だと思うが,

よそのチームの監督を見ても,こういう態度ができる人はほとんどいない。

投手起用にしてもそうだ。前任の野村監督は,最初は大野コーチに投手交代の権限を委ねて

いたが,結局自分で決めるようになった。今のところ緒方監督は畝コーチに主導権を渡して

おり,これもなかなかできることじゃない。ただ畝コーチのチョイスは,シーズン序盤に終盤での

逆転負けが続いたせいで石橋を叩いて渡るような投手起用になりがちだったのは理解できるが,

もう少し「使えるリリーフ投手を増やす」方向で試してほしかった。中盤以降,点差の開いた

勝ちゲームで飯田や西原を使うチャンスもあったが,大瀬良と中崎に頼りすぎた感じがする。

大瀬良は来季は先発に戻るだろうが,今村・中田を使いすぎて故障させた前例があるのだから,

来季は中崎の負担を減らしてほしい。

ついでに言うと,田中の「本塁打取り消し」の誤審があったときの,松田オーナーのコメントも

なかなか立派だった。およその内容は「今後は気をつけてもらいたいが,担当審判はあまり

気に病みすぎないように」という大人の対応だった。カープファンの中には松田オーナーを悪く

言う人が多いことは知っている。ただ,人間は成長するものだ。松田さんも昔はダメダメだったかも

しれないが,近年はそうでもないと思うよ。三木谷氏なんかよりよっぽどマシだと思うけどね。

 

そして,中国新聞の「球炎」だ。

昔に比べれば多少ましにはなったが,まだまだトンデモ記事がちょくちょく見られる。

ここの担当だった小西という記者は今は野球以外の記事を書いているようだが,その記事は

なかなかいい。「やればできるじゃん」という感じだ。ところがカープの担当になると,熱く

なりすぎるんだろうね。どの記者も我を忘れているとしか言いようのない駄文を書いてしまう。

たとえば,ヤクルトとの試合に負けた翌日に,「ヤクルトは走者を進めるチームバッティングが

できていたが,カープの選手はただ打っていただけだ」という趣旨の記事が載った。

ところが事実は違っていた。優勝が決まった後で同じ中国新聞に載った記事によれば,

ヤクルトの真中監督は走塁面では選手に注文をつけるが,打撃は基本的にフリーに打たせて

いたそうだ。3ボールからでも自由に打っていいし,走者を進めようとして無理に右打ちする

必要もない。相手投手は右に打たせないような球を投げてくるのだから,方向を決めずに

素直に打った方が安打の確率は高まるというわけだ。実に理にかなっている。

この話のポイントは,記事を書いた記者が,「普通に打った結果がたまたま進塁打になった」

という事実を「チームの結束力のたまものだ」と自分の脳内で勝手に解釈したことにある。

そういう脳内変換は多かれ少なかれ誰でもやっていることで,プライベートな場なら問題ない。

居酒屋でカープ談義をしている友人同士が「緒方はダメじゃのう」とか「あそこは○○じゃのうて

△△を出すべきじゃろう」とかぐだぐだ言うのは全然かまわない。

でも,新聞の野球コラムは,「説得力」というものをきちんと考えて書いてほしい。

たとえば,こんな記事だ。山本という記者が9月24日に書いていた。

前日の試合でカープは0対6でヤクルトに負けている(先発は黒田と館山)。

 

9月24日の中国新聞「球炎」

こんな試合を見せ続けるのなら,クライマックスシリーズ(CS)を辞退してもらってかまわない。

打てない,守れないならば応援するが,覇気がないのは耐え難い。

掛ける言葉が他には見当たらない。「闘志なき者は去れ」

神宮球場の観衆は3万2278人。前日の今季最多を更新した。

優勝を期待するヤクルトファンに負けないほど,左半分は真っ赤に膨らんだ。

「せめて3位」を望む大声援。広島の主催試合も200万人突破は確実である。

あまりにもあっさりした大敗はファンへの裏切り行為に等しい。

2年連続のCSはでは,シーズン終盤の勢いの大切さを実感した。

残り10試合で4勝だった昨季はファーストステージ敗退。

6勝の阪神が5勝の巨人を制して日本シリーズへ進んだ。

ここで投打がかみ合わないならば,進出したって実りはない。

ここまで133試合,個の力で連勝しても,一体感で難局を乗り越えたシーンがあっただろうか。

ベンチも選手もどこか他人任せ。そんな野球はもうこりごりである。

残り10試合。CS圏内に滑り込むには,一致団結して勝ち続けるしか道はない。

熱意と気迫と執念があるのなら。まずはプレーで示せ。

 

どこからツッコミを入れていいのやら。まんま2ちゃんねるだが,1つだけ言っておく。

「覇気や闘志や一体感がない」というのがたとえば横浜や中日なら,まだわからないでもない。

この時点でその2チームは5位か6位が確定しており,チームとしての目標がないから選手や

監督のモチベーションが上がらない,ということも(プロならあってはならないが)ありうるからだ。

しかしカープはこのとき阪神と熾烈な3位争いをしており,勝ちたい気持ちも,勝たねばならないと

いうプレッシャーも確実に強かったに違いない。つまり選手や監督が「手抜き」をすることには

動機(必然性)がない。したがって上の記事は,記者の脳内で捏造されたフィクションにすぎない。

スポーツ欄の記事を書くくらいだから,この人もたぶん若いころはスポーツマンだったのだろう。

そして指導者から「技術よりも根性の方が大切だ」的な洗脳を受けたのだろう。

だから「熱意と気迫と執念」なんていう得体の知れないものが野球の勝敗を決めるという

ある種の宗教に染まっているのは,本人の責任ではないのかもしれない。

だけどね,山本さん。あなたが書いたこの記事を,選手たちの家族も読んでいるかもしれないよ。

自分の夫や父親がいわれのない非難を浴びた家族は,何と思うだろうね。告訴してもいいくらいだ。

もっと厳しいことを言うなら,あなたはカープを愛しているからこそ厳しいことを言うのだと自分では

思っているのかもしれないが,ひいきチームが負けたという事実をありのままに受け入れられずに

選手や監督に八つ当たりしているだけの弱い人間だということを自分で認めているようなものだよ。

物を書くという行為は,ある意味で自分の生き様をさらすということだ。

愚痴が言いたいなら酒の席ででもやってくれ。「球炎」は読者の投書欄じゃないんだから。

 

 

日記帳の目次へ戻る