日記帳(2015年11月23日)

 

最近日記帳や雑記帳や英語の記事をしばらく中断していた。仕事が忙しかったので。

9月初旬から始めた本の執筆が2か月以上かかって,先日ようやく脱稿した。

発売は来年の春ごろになるだろうが,本ができたらこのHPでも宣伝しようと思う。

この連休は急ぎの仕事もないので,釣りに行ったりしてのんびり過ごしている。

今年もあと1か月ちょっとになったので,ざっと総括を。

 

来年は還暦を迎える。このトシになると,残りの人生をどう使うかを考える。

仕事はオファーがある限り続けるが,問題はプライベートだ。

フェイスブックを始めて,自分にはこの種のSNSよりホームページで情報発信する方が

向いていると改めて思った。実際,フェイスブックはほったらかしにしている。

ホームページの方が好きな理由は,「自分にしかできないこと」をしたいからですね。

フェイスブックやツイッターでお互いに身辺雑記的な情報発信を交わして友達の輪を

広げていくのも悪くはないんだが…たとえ目に見える反応がなくても,「濃い」情報を

発信して,わかる人にだけわかってもらえればいい,という方が好きだ。

これは自分の仕事とも多分に関係していると思う。

クライアントの意向に沿うことが仕事の基本線ではあるが,その制約の中でも

どこかで自己主張をしたい気持ちがやっぱりあるわけですよ。

そういう意味で言うと,「中学英語だけでペラペラ話せる」みたいな金太郎飴的な本を

書くのはいささか飽きた。もちろん仕事だから全力は尽くすが,残りの仕事人生もそう

長くはないことを考えると,誰でもできるような作業に時間を取られるのはもったいない。

自分にしかできないことで社会貢献(あるいは社会参加)したい,という欲の深いことを

考えてしまうわけです。だからこのHPに書いている「大人の英文法」という記事は,

一銭にもならないが書いていて楽しい。ここ2か月を費やして書いた本は,その記事を

さらに発展させて1冊の本にまとめたような内容になっているので,楽しい仕事だった。

 

で,舌の根の乾かないうちに身辺雑記的なことを書いてしまうわけですが。

今年は忙しくて本はほとんど読まなかった。テレビもニュース以外はあんまり見ない。

その代わり,週刊誌はよく読んだ。一人暮らしのおじいちゃんが家で退屈しないように,

新潮・文春・朝日・現代の4誌を毎週買って持って行き,読み終えたのをもらっている。

比べて読むと,各誌のカラーの違いがよくわかる。

新聞やテレビには出ない情報も多いので勉強になるが,これはダメだろうと思う記事もある。

今年一番腹が立ったのは,次の記事だ。たしか文春じゃなかったかな。

見てのとおり。この記事がどういう文脈で書かれたにせよ,完全にアウトとしか言いようがない。

何がアウトなのかを説明する気にもならない。

これと似た気分を味わったのが,11月20日のYahoo!ニュースに載った次のような記事だ。

これは記事そのものは秀逸で,ダメなのは日本政府なんだけどね。(以下は記事の抜粋)

 

国連「表現の自由」に関する特別報告者デビット・ケイ氏(米国人・国際法学者)が、

12月1日より8日まで日本への公式訪問調査を予定されていました。 

ところが、驚いたことに、つい最近になってこの公式訪問が日本政府の都合でキャンセルに

なったとのことです。 ケイ氏自身が11月18日付のTwitterでDisappointedとこのキャンセルに

ついてつぶやき、多数リツイートされるなどして既に国際的にも問題になっています。 

日本は、国連の特別報告者によるいかなる調査も受け入れるオープンな国であるという

表明を2011年に出しており、このことは国際社会から高く評価されてきました。 

ところが今回、国連の公式訪問に対して正式なInvitationを出しておいて、2週間前に断ると

いう、通常あり得ないことになったわけです。独裁国家ならいざ知らず、国連と合意した

公式訪問調査日程をドタキャンするというのは普通の民主主義国、人権を大切にする国では

ほとんど例を見ない、極めて遺憾なことです。 

特定秘密保護法や政府の言論介入など、最近の政府の対応に対しては、厳しい勧告が出る

ことが予想されますが、仮に、厳しいことを言われたくないので調査を拒んだとすれば、

あまりに幼稚というべきではないでしょうか。 

 

この件に関する政府のダメさは,記事の最後の「あまりに幼稚」というコメントに集約されている。

実務とか政治上の判断とかの問題じゃない。発想の「子どもっぽさ」が決定的に見苦しいのだよ。

改めて清原の記事の何がアウトなのかを言うと,この写真にも雑誌編集者の「子どもっぽさ」が

あからさまに現れているからだ。何が子どもっぽいのかは説明しない。わかる人には言わなくても

わかるだろう。

 

どの週刊誌にも,たくさんのコラムが掲載されている。

その中で面白いのは,偏った意見を堂々と語っている人たちだ。

「大放言」(百田尚樹)は今年のベストセラーの1つだが,あれと同じだ(買ってはないけど)。

タイトルに「放言」とついているくらいで,本人も自分の意見が偏っていることは承知しているし,

読者もそれを承知でエンタメとして読む。ここには作者と読者との健全な関係がある。

ただ,マスコミが発信する情報は全部が真実ではないので,面白いけれどある意味で危険な

記事も,特に雑誌のコラムにはたくさん含まれている。

その典型が新潮の最後の方に載っている「変見自在」(高山正之)だろう。

これもタイトルからして偏った(国粋主義的な)内容なんだが,読み物としてはすこぶる面白い。

ところが,(たぶん)事実ではないことを,あたかも事実のように書いていることがよくある。

たとえば沖縄は江戸時代に薩摩藩に占領されたことがあったが,そのとき「琉球の民衆はみな

薩摩に感謝した」とこの人は書いていた。そんなわけないだろう,と普通の人なら思うはずだが,

信じる人も中にはいるんだろうなあ。

でも,総じて新潮のコラムは嫌いじゃない。特に好きなのは「十字路が見える」(北方謙三)だ。

おじいちゃん化したハードボイルド作家のギャップと文体が楽しい。「だんだん蜜味」(壇蜜)にも

書き手の文才を感じる。巻末の「週刊鳥頭ニュース」(佐藤優・西原理恵子)も秀逸だ。

新潮とは逆の路線の朝日では,「しがみつく女」(室井佑月)が面白い。こちらはかなり

左寄りの政治姿勢が鮮明で,現政府に批判的な人はみんな共感するだろう。

文春では「そこからですか!?」(池上彰)「言葉尻とらえ隊」(能町みね子)が好きだ。

現代では「わき道をゆく」(魚住昭)「官々愕々」(古賀茂明)かな。

 

テレビはあまり見てないが,「下町ロケット」は面白い。娯楽作品としてわかりやすいし。

今録画が溜まっているのは,NHKの「映像の世紀」(旧作の再放送)だ。新作の方はまだ

最初の方しか放送されていないので,これからを楽しみにしている。

TVアニメは…やっぱり「アルスラーン戦記」かな。「乱歩奇譚」や「UN-GO」も雰囲気は

いいが,話がややこしい。「Classroom Crisis」は最後の3回の盛り上がりがよかった。

ネットで見られるアニメは,短いのが手軽でいい。たとえばこれ。

「てーきゅう」  https://www.youtube.com/watch?v=s4haH0CAK48

「あいまいみー」  https://www.youtube.com/watch?v=ezkKsx5QD0c

劇場アニメでは,今年は「バケモノの子」を抑えて「心が叫びたがってるんだ」に1票。

「バケモノの子」は直前の2作(サマーウォーズ・おおかみこどもの雨と雪)に比べると

物語の着地点が見えにくく,わかりやすい感動にやや欠けるところがあった。

「ここさけ」は最初の10分くらいを見て「これは当たりだな」と思った。10代・20代の

人が見たら必ず感動するだろう。そのほか劇場アニメでは「寄生獣」「コナン」「百日紅」

「攻殻機動隊」「台風のノルダ」を見た。最後のやつ以外は,払った金の価値はあった。

今年見た実写映画では,「ビリギャル」「エイプリルフールズ」「天才スピヴェット」は

予想以上の出来だった。「イニシエーションラブ」は主演の前田あっちゃんが頑張っていた。

龍三と七人の子分たち」は悪くはなかったが,もうちょっと演出の仕方があった気もする。

「HERO」「日本の一番長い日」「メイズランナー」などは,まあ予想したような映画だった。

「テッド2」は字幕で見たがスラング満載で,吹き替え版ではどう訳していたんだろうか。

ちなみに今年見たうちで最悪だった映画は,「アンフェア」の最終回に当たる1本だ。

主人公(篠原涼子)は警察官で,警察・検察の内部の闇を知ったことから,国家権力中枢の

悪の組織から命を狙われる。彼らは主人公の同僚たちを白昼銃殺するような冷酷な集団だ。

主人公は検察に父親を見殺しにされた若者と協力して秘密情報を世間に公開しようとするが,

最後の最後で,その若者が検察側の手先であり彼女の情報を盗もうとしていることを知る。

では,若者はなぜ憎いはずの検察の手先となったのか?その理由を本人はこう語るのだ。

「あなた(主人公)の情報を手に入れれば,検察は父の裁判をやり直して,父の無実を

晴らしてくれる,とぼくに約束してくれたから」

― おまえはアホか!警官を次々に殺すような悪人どもが,そんな約束を守るわけないだろう!

彼らがおまえから秘密情報を手に入れたら,真っ先に消されるのはおまえじゃ!

そんなこと,小学生でもわかるぞ!― というわけだ。

話の意外性と引き換えにすべての説得力が失われるという,本末転倒のダメシナリオだった。

 

週刊誌のマンガはほとんどジャンプしか読まないので…ジャンプで言うと,まずこれ。

Galaxy Gangs(馬上鷹将)

この作者は,新人作家7人が毎週1本ずつ読み切りを発表して,人気投票でトップになると

連載ができるという企画に参加した1人だった。結局トップにはなれなかったが,この絵は

高く評価する。「ヒーローアカデミア」の堀越くんのように大化けする可能性を感じた。

改造人間ロギイ(三木有)

この絵もハイセンスで好きだ。単行本2巻で打ち切られたが,再挑戦して大成してほしい。

フルチャージ!家電ちゃん(こんちき)

技術が格段に高いわけじゃないが,バランスが取れていて万人受けするいい絵だと思う。

この作品はオンラインで見られる。  http://plus.shonenjump.com/

 

以下は今年買った単行本から。

アマリリス(福島鉄平)

この人は,こういう路線に行けばいいのにと思っていた通りの道を進んで,ある意味で

敗者復活戦を勝ち上がった。おめでとうと言いたい。

臆病の穴(史群アル仙)

ネットで最初に見たときの印象が強烈だった。

   http://tap.akitashoten.co.jp/

単行本には作者のあとがきマンガが載っていて,それが作品の一部になっている。

作者は女性でまだ若い。これからどんな成長をするか楽しみだ。

カタワレノワレワレ/SONG BOOK(ノッツ)

「カタワレノワレワレ」は4コママンガで大河ドラマを描くという珍しいスタイルで,

作者の技術の高さに感心した。「SONG BOOK」と合わせて,叙情性も今風で心地よい。

枕魚(panpanya)

絵柄に独特のムードがあるが,ややワンパターン。長くまとまった作品も描いてほしい。

アトム・ザ・ビギニング(カサハラテツロー)

これは放っておいても人気が出るだろう。万人受けする面白さがある。

僕だけがいない街(三部けい)

去年から人気のある作品だが,今年読んだ中ではこれがベスト1だった。

プロレス狂想曲(ニコラ・ド・クレシー)

これが今年のワースト1。金返せ!と強く言いたい(ブックオフで売るけど)。

帯に錚々たるメンバー(松本大洋,浦沢直樹ら)が推薦人として名を連ねて

いるので買ってみたが,とんでもない代物だった。

面白いとか絵がどうとかいう以前に,話が全く未完成のままで終わっている。

作者の都合なら作者が責められるべきだし,出版者が「打ち切り」の形に

したのなら出版社が悪い。読者に対して失礼すぎるんじゃないのか。

 

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