日記帳(2016年6月12日)

 

今月は仕事が忙しく,今は6月末までのノルマの全部をどうこなすかで頭が一杯になっている。

とはいえ日曜日は平日の半分くらいの仕事しかしたくないので,午後はオフ。で日記を書く。

とりあえず,新刊本の紹介から。

 

「大人だから楽しい!極上クイズ&パズル」(PHP:小池直己氏と共著)

英語の本ではありません。「頭の体操」的なクイズ本です。

コンビニで売ってます。300ページちょいで税込み700円なのでお得です。

ぜひ買ってください…なのだが,この本があんまり売れても本業とは関係ないので

ちょっとなあ…的な思いも。1問だけ抜粋しておきます。

問:ある基準によって都道府県を2つのグループに分類すると,たとえば次のようになる。

A  長野・富山・岐阜・京都・福島

B  茨城・神奈川・栃木・石川・沖縄

このとき,千葉県はA・Bどちらのグループに入るだろうか?

 

 

正解はA。まあ,こんな感じです。宣伝おわり。

 

この日記帳に書いているのは「誰かが読んで,何かを思ってくれたらいい」という一方通行の

記事だが,まじめな記事はできたら高校生くらいの若者に読んでほしいな,と思っている。

彼らの頭はまだ柔らかいだろう。きちんと物を考えるための思考方法のヒントを,多少でも

提供してあげたいという親心的な動機からだ。

 

で,今日の話題は,桝添東京都知事のスキャンダルついて。

この事件の個人的感想を一言で言うと,なかなか難しい問題だと思う。

世間の多くの人は「けしからん」と思っているだろうが,その人たちに問いたい。

あなたは何が「けしからん」と思っているのか?

 

西原理恵子が週刊新潮の最後のマンガ記事の中で「自分も同じようなことをやっている。

政治家でなくてよかった」という趣旨のことを書いていた。自営業者はみんな同じだろう。

たとえばうちの会社の場合,自家用車を会社の公用車として借り上げる形を取っている。

ガソリンカードも会社のカードにしているので,車の保険代やガソリン代は会社の経費と

として落ちる。しかしその車は,常に会社の業務のために使っているというわけではない。

しかし,会社の業務と私的な使用とを明確に線引きして,引き落とされたガソリン代の

うち私的な使用部分を経費扱いから外す,というようなことをやっている会社はないだろう。

そういうグレーゾーンは,(手間の方が大きいので)実質的に黙認されているわけだ。

(サラリーマンではない)個人事業主の場合にも同じことが言える。

個人事業主は,確定申告するとき必要経費を税務署に申告する(必要経費を差し引いた

収入が所得税の課税対象になる)。だから個人事業主は領収書をこまめに保管している。

たとえば芸能人なら,日常生活で使う衣装代や食事代も全部必要経費だと言えば言える。

税務署に深刻するときは,それらの領収書を全部添付して書類を出す。

一方税務署は,1枚1枚の領収書をチェックして「これはセーフ(必要経費として認める)」

「これはアウト」といちいち判断するわけじゃない。そんなことをしたら時間と人手が

いくらあっても足りないからだ。だから「収入の○割程度以内に収まっていれば,

本人の申告した必要経費の金額を無条件で認める」という扱いをしている(はずだ。

「○割」の○に入る数字は,たぶん業種によって違う)。これもグレーゾーンと言える。

では今回の桝添さんのケースのような,たとえば「家族旅行」が必要経費として

認められるかと言えば,それは税務署的にはノーだ。

うちも時々家族旅行に行くが,その支払いを会社の経費で落としたことはない。

(普通は顧問の税理士さんが認めてくれない。西原さんのところはどうだか知らないが)

 

以上を理解してもらった上で,改めて問題を整理したい。

今回の桝添スキャンダルの内容を短く言うと,「政治資金を私的に流用した

ということだ。じゃあ,「政治資金」って何なんだ?それは誰の財布から出ているのか?

「けしからん」と思っている人は,そこのところをきちんと理解しているのだろうか?

実はこれを書いている自分自身,よくわかっていない。

ネットで調べると,政治資金の主な原資は,大きく言えば次の2つのようだ。

(A)個人や企業が政治家に提供する金(政治献金,政治資金パーティー)

(B)税金から支払われる金(政党交付金)

(A)に関しては,たとえば政治家X氏が,自分の支援者から政治献金をもらい,

それをどう使おうと本人の勝手だ。X氏がそれを私的な目的で使った場合,

彼に金を出してやった支援者が「けしからん」と言うのはわかる。しかし部外者に

とっては,自分の懐が痛むわけじゃないのだから批判する理由がない。

一方,X氏が(B)の性質のお金を私的な目的で使った場合,それは明らかに

「税金の無駄使い」だから,責められて当然だ。

つまり,今回の桝添知事の行為に対する「けしからん」という感想が,もしも

次のロジックに基づくのであれば,一応は納得できる。

@桝添知事が家族旅行などに使った金の原資は,税金である。

A家族旅行などは政治活動とは言えないから,税金の無駄使いである。

では,@は事実なのだろうか?ここのところがよくわからない。

税金である政党交付金は,国会議員には配分されるだろうが,都知事である

桝添さんにはどのくらい渡っているのか(あるいはそもそも桝添さんは政党交付金を

もらっているのか)が,ネットで調べてもよくわからないからだ。

次にAだが,本当に「家族旅行は政治活動ではない」のだろうか?

会社の経理にも「福利厚生費」という費目があり,たとえば社員旅行は会社の経費で

落ちる。そこには「社員旅行を通じて社員間の親睦が深まれば,それが会社の業績

向上につながるはずだ」という,一応もっともらしい理由付けがある。だったら,

桝添さんの場合も「家族旅行によって心身をリフレッシュすることが,政治家として

よりよい仕事をするのに役立つ」という理屈が成り立ってもいいんじゃないだろうか。

ことほど左様に,何が政治活動かを逐一判断するのは難しいし効率が悪い。

それはちょうど,最初に書いたように何が会社の必要経費かを判断するのが難しいのと同じだ。

世間では「政治資金規正法は(政治資金の使い道を制限していない)ザル法だ」という

批判が強いが,次のような理由からあえて「ザル」にしてあるんじゃないかと個人的には思う。

(1)何が政治活動で何がそうでないかの線引きは難しく,法律で縛るのは技術的に無理だ。

(2)線引きを厳しくしても,逐一それをチェックするだけの人員がいないので効果がない。

     (その人員を確保しようとすれば,それが逆に税金の無駄使いになりかねない)

(3)政治資金には税金と私的な寄付金が混在しており,後者は基本的にどう使おうが自由だ。

 

もう一度繰り返すけれど,今回のスキャンダルの最大にして唯一のポイントは,

「桝添さんが私的に使ったとされる金の原資は税金なのか?」

ということだ。その答がイエスなら,世間の非難には一定の正当性があるだろう。

しかしその答がノーなのだとしたら(つまり政治献金を私的に使ったのだとしたら),

部外者に桝添さんを責める資格はないと思う。一般に家族旅行や子どものマンガの代金が

民間企業の経費として落ちることはないが,それは煎じ詰めれば「脱税」になるからだ。

今回の桝添さんのケースはそれとは違う。

自分の金庫に入っている政治資金の一部が税金だったとしても,桝添さんは

「今回家族旅行などに使った金は,税金ではなく自分個人への寄付金の方です。だから

寄付してくれた支援者にはお詫びします」と言い訳することもできそうな気がするのだが。

 

最後にもう1つ。法律家なら誰でも,今回の桝添さんの行為を「法律的にはセーフ」と言うだろう。

政治資金規正法には,政治資金の使い道に関する制限がないのだから。

桝添さん自身が雇った法律家だから本人に有利な発言をした,というわけじゃない。

「法律的にはセーフかもしれないが,道義的に許されない」と批判するのは自由だ。

しかしそれがエスカレートして辞任要求の世論が形成され,結果的に桝添さんが辞任する

ことになったら,それは法治国家としてどうなの?と言わざるを得ない。

法律よりも世間の感情の方が強力なら,法律なんかいらないじゃないか。

だから,桝添さんを「悪玉」にして世間の憎悪をあおり立てることが,結果的に国民の規範意識を

蝕み,その場限りの情緒に左右されてファシズム化しかねない危険な思想を拡散させかねないと

いう問題意識を,マスコミには持ってもらいたいとオジサンは思うのだな。

一人一人が何を思うかは,その人の自由だ。でも,みんなが言っていることは本当に正しい

のか?と冷静に考える習慣をつけておく方が,長い目で見れば自分のためにも国のためにも

なると思うがね。

 

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