日記帳(2017年2月19日)

 

今年は年明けからいろいろあったが,今は普通のペースの生活に戻った。

今日はスーパーで300円ちょっとのカラ付きカキを2パック買い,2時間ほど須波で釣りをした。

予想したとおり当たりがなく,コブダイのバラシが1回だけだった。

あと1か月くらいは,ダメモトで近場でちょこっと竿を出す程度。名荷からのチヌの便りが待ち遠しい。

 

新聞や雑誌では,トランプ大統領がらみの話題が連日報道されている。

これについて感じたことを。

トランプという人の人物像について,いろんな人がいろんなことを言っている。

たとえば,ビジネスマンとしては優秀なのだから,過激な発言もディール(取引)の1つの戦術だろう,と言う人もいる。

しかしミクロの視点で言うなら,間違いなく断言できることが1つだけある。

それは,トランプ氏が一番嫌いなのは批判されることだ,ということだ。

私たちのまわりにもそういう人はたくさんいる。組織のトップがそのタイプであることも多い。

そしてそのタイプの人は,自分を批判した人間を決して許さない。その点では非常に執念深い。

かつて自分がそういう体験をしたのでよけいに思うが,要するに彼らはプライドが肥大したガキ大将だ。

北朝鮮の金正男氏が暗殺されたのも,批判的なことを言われた義弟の逆恨みであろうことは容易に想像できる。

だからそのタイプの権力者と付き合う秘訣は,とにかく「絶対に批判しない」の1語に尽きる。

そういう意味で,イスラム圏の7か国からの入国を制限する大統領令が出たとき,西側主要国の

首脳の中で安倍総理だけがネガティブなコメントをしなかったのは賢明な判断だった。

なにしろ相手は,黒いネコでも「オレが白いと言ったら白なんだ」と主張するような無法者だ。

まともな理屈が通じるはずがない。筋を通そうとしたって無駄だ。

ごまをすって実利を取るのが大人の対応というものだろう。

 

それはそれとして,トランプ大統領の経済政策について,メディアはどんな論評をするだろうかと興味を持っていた。

そして今のところ,オジサンが期待したような論評をしたメディアはほとんど1つもない。

素人の浅知恵と言われるのを承知で,オジサンはこう思う。

トランプ大統領の保護主義政策は,世界の経済と社会を好転させる契機になるかもしれない。

日本のどのメディアも「自由貿易こそが経済を発展させる」という前提で,保護貿易を批判している。

しかし,本当に素人考えで申し訳ないんだが,たとえばアメリカが「日本からの輸入車には高い関税を課す」という

保護貿易政策を採ったとしても,日本の自動車メーカーは大して困らないんじゃないかと思う。

なぜならアメリカ国内で販売される日本車の大半は,現地で生産されているからだ。

人件費の安いメキシコでの生産が関税アップで難しくなれば,トヨタやホンダはアメリカの工場を増やすだけだろう。

アメリカの方が人件費が割高なので収益率は多少下がるだろうが,会社の売り上げが減るわけじゃない。

だから自動車メーカーからの法人税収入は増え,日本の国家財政にはプラスになるかもしれない。

しかし,会社が儲かっても内部留保が増えるだけのことで,日本の労働者の賃金が上がるわけじゃない。

結局,昔の経済学が想定していた「自由貿易モデル」は,多くの企業が海外に生産拠点を置く

ようになった今日ではもはや通用しない ― この考えは間違っているのだろうか?

昔の自由貿易の素朴なイメージは,おそらくこんな感じだと思う。

@トヨタが日本で生産した自動車をアメリカに輸出する。

Aアメリカでの売り上げが伸びればトヨタの利益が増える。

Bその利益がトヨタの社員に還元される。

しかし今日では,Bのプロセスが機能しない。

だからトヨタという会社がいくら大きくなっても,日本国内の社員には大きなメリットがない。

だったら海外の生産拠点を日本国内へ戻せばいいかと言えば,ビジネスとしてはそうはいかない。

人件費その他の高い日本で車を作ったら会社の収益が減り,国際競争力が下がるからだ。

グローバル化する世界経済の中では,外国企業に勝たないと会社が存続できないというリスクがある。

だから企業は少しでも安い労働力を求めて生産地を外国へ移す。結果,国内の労働者の賃金は上がらない。

そうなると結局,一番の元凶は経済のグローバル化だということにならないだろうか。

私たちの身近でも,全く同じことが起きている。

かつて(1960年代ごろまで)は,日本中に地域的な経済コミュニティーがあった。

うちの実家は八百屋だが,近所には肉屋も魚屋も洋服店も文房具店も喫茶店もあった。

どこの町も基本的に住宅と商店(と農地)で構成されており,その中でお金が循環していた。

しかし1970年代以降,各地に大きなスーパーが建つようになった。

自営業は廃れて,会社勤めをする人ばかりになった。

それでも1980年代後半のバブルの頃までは,会社員は給料も高く身分も安定していた。

しかしその後世の中は不景気になり,現在の勤め人は給料が低く身分は不安定だ。

なぜこんなふうになってしまったのだろう?と考えると,

地域内で循環していたお金が外へ出て行くという構図が進んだからだと思う。

「外」とは,都会に本拠を置く大企業だ。

これでは地域が衰退する一方だ。それを食い止めるために出てきた1つの思想が,地産地消だ。

地産地消とは,地域内でお金を循環させようという試みにほかならない。

では聞くが,

トランプ大統領のやろうとしていることは,国を挙げての地産地消運動ではないのか?

彼のスローガンは,Buy American and hire American.(アメリカ製品を買い,アメリカ人を雇おう)だ。 

これを保護主義だと批判する人は,日本の地方都市による地産地消運動を同じように批判するのだろうか。

経済に疎いオジサンには,トランプ流の保護貿易主義と地産地消運動との違いがわからない。

保護貿易は経済のグローバル化に対するアンチテーゼだ。

したがって「保護貿易はよくない」と主張する人は,経済のグローバル化を肯定していることになる。

しかし,経済のグローバル化は私たちを幸せにしてくれただろうか。

グローバル化によって動く金の額は確かに増えただろうし,その意味では経済は成長しただろう。

しかしそうして増えた金は,グローバル企業が国際競争を勝ち抜くための備蓄に回るだけであり,

労働者にはほとんど還元されない(当然トリクルダウン効果などというものはない)。

だったら,行き過ぎたグローバル化をこのあたりで見直し,各国が自国の中でお金を循環させながら

地道に豊かになっていくというスローライフ的な経済成長の方がベターではないだろうか。

もちろん,各国が国内で生産した特産品を外国へ輸出するのは奨励されるべきだ。

そのようにして稼いだ外貨はダイレクトに労働者に還元される。

それが自由貿易の本来のあり方だろう。

グローバル化が進みすぎた今の世界で自由貿易にこだわるのは,自分で自分の首を絞めるようなものだ。

トランプ政権は,基本的に自由貿易よりも保護貿易主義がベターだと考えている。

だからアメリカの経済運営がもし一定の成果を挙げたなら,それは保護主義,すなわち地産地消主義の勝利を意味する

そういう意味で,オジサンはトランプ政権の経済政策の成否に大きな関心がある。というか,トランプ大統領を応援したい。

アメリカは資源が豊富だからうまくいったとしても,資源の乏しい日本は自由貿易を進めるしかない,と言う人もいるかもしれない。

しかし,人口ではメキシコより少ない世界11位の日本が経済力(名目GDP)では世界3位というのが,そもそも異常なのだ。

要するに,欲張りすぎだ。明治時代の成功体験の幻影をいまだに追いかけていると言ってもいい。

かつて日本は,「経済成長=国民の生活水準の向上」という幸せな時代を経験した。

しかし今日では経済成長が自己目的化してしまい,何のために成長しなければならないのかが問われている。

むしろ経済が成長すればするほど,国民は不幸になるというパラドックスに陥っているように見える。

その事態を招いた大きな要因は,行き過ぎたグローバル化だとオジサンは思う。

だから,アメリカの保護主義政策には成功してほしい。

日本が自由貿易にこだわるのは,極論すればすべての国の関税がゼロになれば自分たちが「勝てる」と思っているからだ。

しかし,勝者がいれば当然敗者も生まれる。

たとえばある国が日本に対して貿易赤字を抱えるとしたら,それは日本からの輸入品がその国の産業の成長を妨げたということだ。

そう考えると,自由貿易で黒字を積み重ねるということは,自分だけが一人勝ちして他国の人々を不幸にするという面がある。

自由貿易自体は否定しない。しかし,徹底した自由貿易の行き着く先は,「勝ち組」による搾取でしかないように思う。

少なくとも日本の大企業には,安い人件費を求めて生産の拠点を外国へ移すのはやめてほしい。

大企業には社会的責任というものがある。自分たちだけ儲かればよい,というものではない。

無茶な注文だとはわかっている。しかしその無茶な理想を追求する方が,単なる金儲けよりよほど面白いと思うがなあ。

そしてこれからのアメリカの政策が,進みすぎた経済のグローバル化に歯止めをかける役割を果たしてほしい。

がんばれ,トランプ!

 

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