最終更新日: 2001/03/13

雑記帳(食い物編)


● 2000/3/13(火)  〜味の記憶〜

¶ 子供の頃の食い物の味を,ふと思い出した。三つ子の魂百まで。子供の頃に初めて口に入れたものの味の印象は強烈で,今も何となく舌が覚えている。考えてみると,当時の食い物はロクでもないものが多かった。別に貧しいからではなくて,ぼくらが子供の頃は昭和30年代後半の高度成長真っ只中。世間は昭和元禄の好景気に沸き,まだ公害という言葉も存在しなかった。

¶ うちの実家は八百屋(食料雑貨店)なので,子供相手のいろんな駄菓子を売っていた。当時の一番人気は甘納豆。厚紙にタテヨコ30個くらい,お年玉の袋みたいなのがノリで貼り付けられて壁にぶら下げてある。1個10円でその袋を買うと,中には砂糖をまぶした甘納豆が10粒ほどと,クジが1枚入っている。クジは1等賞からハズレまであり,風船やプラモデルやおもちゃのピストルなどが景品でもらえた。あと駄菓子で言うと,ハマグリの内側にニッキを塗ったもの・試験管に入ったどぎつい色の寒天・胸焼けしそうなベビースターラーメン(即席ラーメンを油で揚げて袋づめしたもの。バリバリかじって食べる)・半分は砂糖でできているのではないかと思うくらい甘いフェリックス(当時テレビで放送されていたアメリカ漫画の主人公のネコ)のフーセンガム。サイコロキャラメルというのもあった。サイコロの形の箱にキャラメルが2個入って1円。1個50銭のキャラメルということになる。それから,ワタナベのジュースの素。小さな袋に入った粉末ジュースで,正しくは水で溶かして飲むのだが,めんどくさいので子供らはそのまま粉末をなめていた。口の中は当然オレンジ色に染まる。どれもこれも添加物と発色剤のかたまりのようなシロモノで,今なら発売禁止になりかねない。

¶ 主食について言うと,カレーはグリコのワンタッチカレー(当時まだボンカレーはなかった)。即席ラーメンはサッポロ一番か出前一丁,もしくはソーメンを太くしたような福島ラーメン(もちろんカップヌードルはまだない)。弁当には丸美屋のエイトマンふりかけ。果物も,うちの店で売っているせいもあってよく食べた。今の子供はあまり口にしない干し柿やイチジク,ビワ,ザクロ。ずっと小さい頃は,畑でとれたサトウキビをかじっていた記憶もある。

¶ 日常の食事は,今より刺激の少ないものだった。肉はクジラ肉が一般的で,幼稚園の頃のスキヤキの肉は今で言うモツだった。ソーセージは魚肉。寿司も子供の頃は食べた記憶がないし,ハンバーグなんかふだんの食卓には決して乗らなかった(うちだけか?)。それだけに,小学校5年か6年の頃,店で売るようになった「グリコのハンバーグ」を食べたときの印象は強い。「リノール酸入り」といううたい文句でいかにも健康によさそうなCMが流れていたが,食べてみると何とも言えない「添加物臭」みたいなのがあった。もっとも子供だから,そのヘンな味の理由はわからない。よく食わされたマグロ缶などのカンヅメ食品の独特の味も,それが普通だと思っていた。だいたい洋食には縁がなかったので,小学校の調理実習で作った「野菜サラダ」の味も強烈だった。何と言っても,あの「フレンチドレッシング」というやつ。サラダ油と酢をまぜて作る,と家庭科の教科書には書いてあった。何かの間違いだろう,と思った。果たして食ってみると,はっきり言って人間の食うもんじゃない,と思った。その原体験のせいか,今でもフレンチドレッシングは好きになれない。そもそも「野菜サラダ」なんてシャレた食い物じたい,ふだんは食べたこともなかったのだ。

¶ そう言えば,小学校高学年の頃,学校行事だか子供会行事だかで数日間,三原の仏通寺へ強制的に「座禅」を組みに行かされた。その最後の日,それまで精進料理ばかりだったので,お寺の方が気を使ったのか,おやつに珍しいもの(?)を出してくれた。それが,コーラとチーズだった。それまでコーラもチーズも口にしたことがなく,初めての感想は「人間の食いもんじゃない」(こればっかり)。特にコーラ。その後コーラは飲めるようになったが,大学の頃コーラの飲みすぎで歯がボロボロになったという奴の話を聞いて以来,あまり口にしていない。

¶ しかし,子供の頃の味の記憶で一番印象深いのは,「お子様ランチ」なのだ。当時,日曜日に「福山へ電車で遊びに行く」のが子供にとって一番豪華な娯楽だった。松永と福山は電車で2駅(10分ほど)しか離れていないが,心理的な距離は今よりはるかに遠くて,松永の子供にとって福山は「都会」だった。福山駅から天満屋へ行って買い物をしたり屋上で遊んだりして,天満屋かその付近のレストランでお子様ランチを食べる。当時,洋食屋は「グリル」と名乗るところが多かった。そのグリルで食べる料理は,ふだんヤキイモやら豆モチやら食ってる子供にとって,別世界の食べ物だった。スパゲティもハンバーグもエビフライもそこでしか食べられないごちそうであり,特に胸焼けするようなキツい油で揚げられたエビフライにかけられたオレンジ色のソースが,子供の口にはちょっと濃厚すぎる感じでもあり,しかしもう1回食べたいと思わせるような,不思議な味だった。

¶ 今の子供の食べるものは,当時とはだいぶ違う。きのうスーパーで買って来たソーセージを食べた娘らが口をそろえて「このソーセージ,まずい」と言う。確かにそれはあまり美味くなかった。こいつらは「すし丸(回転寿司)のおすしには飽きた」とか「モスのハンバーガーはまずい」とか生意気な口をきく。小学生のくせにダイエット意識も強く,野菜の煮物はきらいでも野菜サラダは食う。今の子供が大人になったら,われわれよりも味にうるさくなるかもしれんなあ,とも思う。しかし,今ではほとんど口にできなくなった鯨カツや魚肉ソーセージや芋ケンピやポン菓子(米粒に砂糖をまぶしてポップコーンのように加熱して作った菓子)に我々が感じるような味覚のノスタルジーを,今の子供らは将来すし丸の寿司や天霧のうどんや吉野家の牛丼やマックのハンバーガーに感じたりするのだろうか。


● 2000/5/28(日)  〜娘の運動会の弁当を作ったこと〜

小学生の二人の娘の運動会の弁当を作るようになって3年目。去年は土曜日の夜から作り始めて10時間(!)かかったので,今年はきのう(土曜日)の午後1時から作り始めたのですが・・・のべ13時間くらいかかってしまいました。いつも完成するのは運動会当日の昼前で,当然午前中のプログラムは全部パス。私にとって子供の運動会とは,弁当の制作を通じて自己の存在理由を確認する稀有の機会なのです(笑)。苦労の跡を誰かに見てもらいたので,以下に公開いたします。(おむすび[これだけは女房に作ってもらう]は省略。料理は写真の右上から時計回りで紹介しています。煮豆とローストビーフのみ市販品です。)

 ・春巻 (中身:春雨・ニラ・にんじん・干ししいたけ・きくらげ・たけのこ・豚肉)

 ・コロッケ (中身:牛コマ肉・ベーコン・たまねぎ)

 ・メンチカツ (中身:あいびき肉・キャベツ・たまねぎ・パン粉)

 ・鳥肉唐揚げ

 ・野菜の素揚げ/唐揚げ (さつまいも・レンコン・しいたけ・ピーマン)

 ・牛肉の有馬炒り (牛肉・糸こんにゃく・しめじ)

 ・厚焼き卵 (にんじん・干ししいたけ・みつば入り) 

 ・白菜/レタス包みシューマイ (中身:あいびき肉・白菜・干ししいたけ・たけのこ)

 ・煮豚 (ゆで玉子入り)

 ・にんじんとアスパラの豚肉巻き

 ・ウインナソーセージ

 ・つくね (鳥ひき肉・ごぼう・にんじん・白ごま入り)

 

 ・土佐酢和え (たこ・小松菜・えのき・しめじ)

 ・ポテトサラダ (じゃがいも・きゅうり・たまねぎ・にんじん・ベーコン)

 ・果物 (キウイ・オレンジ・ぶどう)

 ・抹茶ゼリー

 ・茶巾絞り (かぼちゃ・煮豆)

 ・ごぼうとツナのマヨネース和え 

 

 ・ハムとポテトサラダとサラダ菜のサンドイッチ

 ・ベーコンエッグとレタスのサンドイッチ

 ・ローストビーフとサンチェのサンドイッチ

 

 ・コロッケとメンチカツのオープンサンド

 ・フルーツサンド (中身:キウイ・オレンジ・クリームチーズ)

 

 

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