最終更新日: 2001/01/28

雑記帳 (わが街・松永編-B)


 

● 2000/11/8(水) 亥の子のこと

¶先週の土曜日,「亥の子」で子供らの付き添いをした。亥の子はこの地方の秋の伝統行事で,キリスト教圏で言うとハロウィンのようなものに当たる。旧暦10月の最初の亥の日の夜に,子供らが子供会単位で地域の家々を訪問して一種のおまじないを行い,現金やお菓子などをもらう(今年は亥の日が平日だったため,子供らの都合に合わせて土曜日にずらした)。広島県全域で行われているかと思ったら,必ずしもそうではないらしく,県内の知り合いでもこの行事を知っている人は半分くらいしかいない。

¶ご神体というか,道具として,漬け物石くらいの大きさの重い石を使う。この石に10本ほどの縄(長さ2mくらい)を放射状に結び,子供らはその端を持つ。訪問した家の戸口で,「亥の子さんの歌」を歌いながら,縄を上下させて亥の子石を何度も地面に打ちつける。歌は,その家に幸運が来るように,という趣旨の数え歌で,音をそのまま文字にすると次のようになる(地域によって多少バリエーションがある)。

いーのこさんのしりを にでゆでたてて <意味不明>

いちーでたわらをふんびゃーて <一で俵を縛って>

にーでにっこりわーろーて <ニでにっこり笑って>

さーんでさーきょーつーくって <三で酒を造って>

よぉーつよのなかよいように <四つ世の中良いように>

いつーついつでもほがらかに <五ついつでも朗らかに>

むーっつむじょうのないように <六つ無情のないように>

ななーつなにごとないように <七つ何事ないように>

やーっつやしきをひろめたり <八つ屋敷を広めたり>

ここのつここらでくらをたて <九つここらで蔵を建て>

とぉーでとっくりおさめたり <十で徳利収めたり>

○○がはんじょーするように <○○(家)が繁盛するように>

はんじょーせーはんじょーせー <繁盛せい繁盛せい>

¶ぼくらが子供の頃,この行事は子供にとって秋祭りよりも大きな楽しみだった。現金が手に入るからだ。当時は子供の数も多く,亥の子の夜にはあちこちで子供らの嬌声が聞こえた。自分らの子供会のエリアを越えて,よその町内まで遠征したりもした。1軒の家を何組もの子供らが訪問することになるが,ご祝儀をもらえるのは最初のグループだけなので,とにかく「早い者勝ち」だった。家々ではおはぎと膾(なます)を作って,子供らに振舞う。実家が食料雑貨店だったこともあり,亥の子の済んだ夜にはうちの実家に子供らが集まって,回収した現金を山分けしていた。

¶今では,亥の子もだいぶ様相が変わった。子供の数が減って,しかもなぜか男の子の数が少ない。昔はほとんど子供らだけで歩いていたが,今は付き添いの大人の方が数が多いくらいで,数え歌も大人が歌ってやる(子供らは人数が少ないので遠慮して歌わない)。回収した現金は子供会の予算に繰り入れられ,子供らの懐にはわずかなご苦労賃しか入らない。そもそも,ご神体が石ではなくった。ふちのついた鉄球に穴をあけてロープを結んだもので,これを子供会役員が代々持ち回りで保管している。訪問先もアパートが増えたため,町内の半分くらいの家しか回らない。車の往来も多くなったので,大人が交通整理してやらないと事故が起こりかねない。秋祭りやゲタリンピックと同じように,参加者以外の部外者に「今日は特別の日」という思い入れがなくなってしまったことも寂しい。今の小学生の子供らの記憶の中に,「生まれ育った町」の思い出が何か残っていけばいいが・・・と思う。  


 

● 2000/10/15(日) 秋祭りのことなど

 今日は町内の祭りに駆り出された。夏の夜店もそうだが,秋の祭りも昔に比べると熱気がない。祭りと言えばお神輿で,これは大人の有志がかつぐ。子供らはだんじり(山車=右の写真)を引っ張る。しかし,子供の数が減ったせいで,山車を引っ張る綱が昔に比べると50mくらい短くなったそうだ。大人の方も,山車を引っ張る子供を持つ親以外は祭りそのものにあまり関心がなくなっている。実は今年,うちの子供会は山車を出すのをやめようか,という話さえあった。祭りの準備は10年以上も特定の有志のブループが行ってきたが,最近は周囲の協力が十分得られず,苦労するだけで達成感がない,というような理由だった。もっともな話だと思う。地域の伝統行事と言えば聞こえはいいが,実際は祭りには毎年何らかのモメゴトがつきまとっている。価値観が多様になったために,昔のように「地域住民が心を一つにして」というようなわけにはいかない。子供の方も,昔は山車を引くだけで十分祭りをエンジョイしていたが,近年は単に惰性で参加しているように見える。子供には祭りの途中で何回かお菓子が配られるが,「こんなもんいらない」という声が非常に多い。これからは,子供を引きつけるような特別のイベントが必要かもしれない。たとえば賞金つきのクジを出すとか。近頃のガキは菓子より現金を欲しがるので。ちなみに,山車には毎年趣向をこらした人形を乗せる。今年は「柔ちゃん人形」だったが,子供らは「ださーい」と言う。誰のためにとうちゃんらが苦労して準備したと思うとるんじゃ,えー?

 もっとも,自分の子供時代を振り返っても,祭りの山車のことはあんまり記憶にない。地域のイベントで一番印象深いのは,「亥の子」である。なにしろ現金収入があるから(集めたお金は今は子供会の予算に組み入れられるが,昔は子供らで山分けしていた)。亥の子のことはまた後日。広島県以外の人には意味不明ですいません。県内でも知らない人もあるかも・・・

祭りの合間を縫って,海(松永湾)を見に言ってみたが,「網立て」はやってないようだった。残念。

ついでにドンゴロスに入れて海に浸けてあるカキを確認しに行ったら,何者かに奪われていた。ロープが刃物のようなもので切られていて,ドンゴロスごとなくなっている。めったに人の来ない場所の,見つかりにくい石垣のすきまに入れておいたのに・・・。しっかし,あんなもん盗ってどうするんだろうか。まだカキは食えるほど身は入っていないし,だいいちこんな湾奥のカキはたとえ冬場でも汚染が恐くて食えたもんじゃない。単なるイタズラだろうか。それとも,よこしまなかぶせ釣り師に偶然発見されたのだろうか。まさかなあ。

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