2000/02/12 更新

ここでは,カキの採取方法から使い方まで詳しく説明します。

(1)カキの採取方法 

 

● カキは,潮が引いているときに浜や波止で採取します。釣具店に行くと潮位の入った潮見表がもらえるので,これで干潮の時刻を確認します。大潮のときは干潮時の潮位が0〜50cmくらいになりますが,だいたい潮位が150cmくらいまで下がれば,カキの採取が可能になります。小潮のときは干潮前後,大潮のときは干潮の2時間前くらいから採取できます。

● カキを採るのに使う道具は,ポリバケツ(家庭で掃除などに使う普通の大きさのもの),カナヅチ,クギヌキ,軍手,長靴といったところです。

● 採取する場所は,ゴロタ浜(右の写真のような,小石が点在する海岸)または敷石のある波止です。波止の場合,潮が引いたときに敷石が露出する,つまり波止の下に降りられることが条件です(備後地方では,かぶせ釣りのできる波止の半数くらいは,現地でカキが調達できます。ゴロタ浜なら,田島の北岸一帯で採取可能です)。波止がなくても,たいていの場所なら護岸の石垣にカキがついているはずです。カキの生育状況は場所によって違います。身の十分詰まったカキが採れる場所とそうでない場所とがありますので,あちこち回ってみて,自分の採取場所を決めてください。

● もしゴロタ浜と波止の両方で採取が可能なら,次の点も考慮するとよいでしょう。

 

採取場所

採取方法

使い方

ゴロタ浜

岩についたカキを,カナヅチでたたき落とす。

カラが重いので,カキを速く沈めたいときに使う。

波止の岸壁

岸壁に張り付いたカキを,クギヌキではがす。

カラが軽いので,カキをゆっくり沈めたいときに使う。

● ゴロタ浜で石に付着したカキを採るときは,カナヅチで石の方を叩くと,その衝撃でカキがはがれます(カキの方を叩くとカラが割れやすいので注意)。波止の岸壁に張り付いたカキは平べったいものが多く,また波で流される心配がないため,カラの薄いものがほとんどです。この場合,カキをカナヅチで叩くとカラが割れてしまうので,クギヌキで引き剥がすようにして採ります。また,波止のカキは身がカラッポのものも多いので,身の入ったカキを選んで採ります。カキのカラは非常に鋭いので,採取の際は必ず軍手をはめておきましょう。私は一度,足をすべらせてカキガラの上に素手をつき,手の平が血まみれになったことがあります。

● どうしても採取が難しいときは,最後の手段として,波止の岸壁に付着しているカキを上から採る荒業もあります。下に落としダモ(または柄のついた玉網)を受けておいて,カキを上から棒のようなものでこそげ落とします。サシエとして使えるカキはあまり採れませんが,マキエにする分なら十分採れます。

サシエ用のカキは,できるだけ丸いものを採っておきます。平らなカキよりも丸いカキの方が身が詰まっており,中心部分が小さいので魚の掛かりもよくなります。マキエ用のカキは,波止の岸壁に塊でついているものでかまいません。カラの隙間に小さなカニや虫がたくさん入っているので,カキの身はあまり入っていなくても,カラを砕いて撒けば十分マキエになります。

● カキの量は,冬場なら半日でバケツ(家庭で掃除などに使う普通の大きさのもの)に1杯が目安です。ハゲ(ウマヅラハギ)が活発にエサを取るときは,その倍くらい用意しておく必要があります。

● 狙う魚によっても違いますが,サシエ用のカキの大きさは,カラの大きさがゴルフボール(あるいはにぎり寿司)くらいのものがベストです。身は,ワタの入った白い部分の大きさが,親指の第1関節から先くらいになります。ただしコブダイ狙いのときは,できるだけ大きなものを使います。なお,使うカキの大きさは,人によって違います。広島県内でもイカダのかかり釣りでは,贈答用ほどもある大型のカキを使って,左右から2本のハリを身に埋め込むような釣り方もあるようです。私の場合は1本バリですので,小ぶりのカキを使っています。


 

(2)カラの割り方 

● カキには,表(丸くふくらんだ側)と裏(平らな側)とがあります。裏を下にして置いたとき,貝柱は左側上部にあります。まず,この貝柱の位置が判断できるようになってください。また,カラを割ってハリを刺すための道具として,カナヅチ(片側の先端がノミのように扁平になったもの)切り出しナイフを用意します(⇒かぶせ釣り事典(道具編)

● カキのカラを割る方法は,2通りあります。第1の方法は,裏(平らな側)を下にして置きます。ちょうど扇を広げた形のようにカキを置くことになります。この状態で,扇の頂点(上の縁の真中)をカナヅチ(先端が扁平な側)でたたき,スキマをあけます。この上部のスキマからナイフを入れて,刃先を左にすべらせると,貝柱に当たります。貝柱をナイフで切ると,片方のカラが外れます。このとき,平たいカラに沿ってナイフと入れると平たいカラが外れて,丸いカラの中に身が埋め込まれたような状態で残ります(右の写真)。逆に,丸いカラに沿ってナイフを入れると丸い方のカラが外れて,平たいカラの上に身が乗っかったような状態になります。状況に応じて,この2つを次のように使い分けます。

カラの残し方

使い方

丸い(重い)方のカラを残す

カキを速く沈めたいときや,エサ取りが多いときに使う。

平たい(軽い)方のカラを残す

カキをゆっくり沈めたいときや,食いが渋いときに使う。

 

かぶせ釣りのベテランの中には,この説明に違和感を覚える方も多いと思います。というのは,「カラを割る面積はなるべく小さくする」というのが,かぶせ釣りのセオリーとされているからです。しかし,私の経験から言うと,カキのカラをほんの少し割り,わずかにのぞいた身にハリを埋め込む,というやり方は,基本的に魚の活性が高いときにのみ有効だろうと思います。その方法には,2つの欠点があります。第1に「誘いがかけられない」ということ,第2に「中層の魚を釣ることができない」ということです。第1点については,カラを割る面積が少ないほどカキ自体の重さはカラの分だけ大きくなるので,底についたカキを持ち上げようとすると,ハリが飛び出てしまいます。つまり,じっと待つしか手がないわけです。また,沈む速度が速いため,中層を泳ぐ魚(ウマヅラハギ・メジナ・ウミタナゴなど)が狙えません。もっとも,始めからチヌだけをターゲットとして,他の魚には見向きもしない,というなら別ですが。私としては,カラを割るときに失敗することもほとんどないこの第1の方法を,特に初心者にはお勧めします。

● カラを割る第2の方法は,よりオーソドックスなものです。先ほどとは逆に,裏(平たい側)を上にして置きます。その中央またはやや下に,カナヅチの扁平な面を横向きに当てて,軽く叩きます。すると,平たいカラの下半分が外れます(上半分は貝柱がついているため残ります)。マッチ箱を半分開いたような感じで,中のカキのワタ(右の写真で赤く塗った部分)が露出します。ここにハリを刺すわけです。これが,かぶせ釣りでの最も普通のカラの割り方です。エサ取りが多いとき,あるいはハゲ(ウマヅラハギ)を釣るときは,この割り方がベストです。カキの身の露出部分を小さくすればするほど,ハリ掛かりの確率は高くなります。しかし,第1の方法でも,ワタの部分に正しくハリが入っていれば,ハゲ以外の魚なら十分釣れます。「魚に積極的にアピールして,できるだけ当たりが多く出るようにする」ためには第1の方法が,「当たりは少なくても,当たった魚は確実にハリに掛ける」ためには第2の方法が,それぞれ優れているということです。どちらを選択するかはそのときの状況によりますが,2つの方法を使い分けるのがベストだと思います。下の写真を参考にしてください。一番左は小ぶりのカキのふくらんだ方のカラを外して身を最大限露出させたもので,食いが悪いときやグレなどの中層魚を狙う場合に適しています。右の3つは平たい方のカラを割ったものですが,身の露出部分を少しずつ小さくしています。魚の食いが活発なときは,右端のような割り方がベストです。

 


 

(3)ハリの刺し方 

● 初心者の中には,ハリが外れないようにと硬い貝柱にハリを通す人がいますが。これは絶対禁物です。ハリは,最も柔らかいワタの部分に刺し込みます。できるだけワタの奥にハリを埋め込むように刺してください(軽くチョン掛けするような刺し方だと,ハリが外れやすくなります)。言葉で説明するのは難しいのですが,私のやり方は,ナイフの先でワタをめくって,ワタの下からハリを刺し,カラを左に1回転させて,ワタの中央にハリ先が来るようにします。もう1つ大切なことは,「ハリ先を露出させない」ということです。ハリの軸は露出していてもかまいませんが,ハリ先がカキの外に突き出た状態では,魚はほとんど掛かりません。右の写真はわかりやすいように色つきのハリスを使ったものですが,カキの身の中央下部にハリ先が埋まった形になっています(下に伸びた茶色い糸がハリスです)。

● ハリを1本にするか2本(以上)にするかは,人によって,また使うカキの大きさや狙う魚によって違います。ただ,私の場合は,常に1本バリで通しています。基本的に小ぶりのカキを使うので,ハリを2本刺すスペースがないためです。また,たとえカキの身を全部露出させたとしても,魚が真っ先に食いつくのは,最も柔らかく栄養のある,ワタの部分です。だから,ワタの中央に正しくハリ先が入っていれば,1本バリで十分だというわけです。


 

(4)カキの落とし方 

● かぶせ釣りは「足元で釣る」のが基本です。したがって,カキはマキエ・サシエとも足元に集中します。ただし,当たりがないときは少し工夫が必要です。まず,ある程度の潮流がある場合は,少し遠くに投入してみます。マキエのカキが底を流れて,ポイントが遠くになっている可能性があるためです。このときは,できるだけ重いカキを使います。逆に全く潮が流れていなくて当たりがない場合は,魚の活性が低いと考えられます。このときは,できるだけ軽くて小さなカキを使って,ゆっくり落とし込んでやります。ちょうど落とし込み釣りと同じ感覚で ,岸壁すれすれにゆっくりカキを落としてやると,カサゴ・アイナメ・ウミタナゴなどがヒットすることがあります。

● 中層の魚を狙うときは,上で説明したように「軽くて小さなカキをゆっくり落とす」のが基本です。チヌなど底の魚を狙うときも,流れがゆるいときは「ゆっくり落とす」のが効果的です。一般に魚は上から落ちてくるエサに興味を示すので,カキがあまり早く着底してしまうと魚が寄って来る時間的余裕がなくなるからです。


 

(5)余ったカキの保存方法 

● 余ったカキを捨てて帰るのはもったいないので,私の場合はドンゴロス(麻袋)にカキを入れて波止の岸壁に吊るしておくか,海岸の石垣のすきまに保存します。こうすると潮に浸かっているので,1か月でも2か月でも保存できます。

● 冬場なら,車のトランクの中にそのまま入れておいても1週間程度なら大丈夫です。ただし凍結に注意。真冬に露天の駐車場に車を停めてトランクにハダカでカキを入れておくと,カラの中の水分が凍ってシャーベットみたいになってしまいます。上から毛布のようなものをかぶせておく方がいいです。なお4〜5月ころは気温が高く傷みが早いので,2〜3日しかもちません。特に5月の連休以降は,トランクの中に放置しておくと腐敗したカキの臭いでものすごいことになってしまうので,注意しましょう。