SKYWARD総合英語解説

第13章(冠詞)

 

◆本書ではtheの用法を便宜的に5つに分けています(p.438)。

このうち,「対比のthe」(一般的には「総称のthe」,「一億人の英文法」では「ピンとくる!the」)を説明します。

(例題)次の2つの文のtheの働きの違いを説明しなさい。

@I went to the bookstore today.(今日本屋へ行った)

AI went to the convenience store today.(今日コンビニへ行った)

(正解例)SKYWARDの用語で言えば,@のtheは「状況のthe」である。一方Aのtheは「状況のthe」または「対比のthe」である。

@は「君も知っている(私(たち)がいつも行く)本屋」の意味。話し手は「どの本屋を指すのかが相手にもわかるはずだ」と考えている。

一方Aは「君も知っている(私(たち)がいつも行く)コンビニ」(状況のthe),「あるコンビニ」(対比のthe)の両方の意味を表す。

後者の意味ならa convenience storeとも言うが,対比のtheを使うと「コンビニという種類の(ある)店」という意味になる。

 

では,この違いはどこから来るのか? それは,

★万人が共通のイメージ(形)を思い浮かべるかどうか

の違いです。「本屋」からは,共通の形の店舗のイメージは思い浮かばない。しかし「コンビニ」と言えば,誰もが同じ形の店構えを想像できる。

そのように共通のイメージが思い浮かぶ名詞は,前にtheをつけて「〜というもの」(総称)の意味を表すことができます(play the guitarやover the radioなども同様)。

SKYWARDでは,「同じグループに属する他のものとの対比」を意識して使うtheを包括して「対比のthe」と呼んでいます。

たとえば「夏」や「東」は抽象概念ですが,the summer,the eastと言います。

これらのtheは,他の季節や方角との対比を意識して,その中の1つを指す(特定する)ために使われています。

the convenience storeのtheも,いろんなタイプの店の中から「コンビニという形態の店」を特定する働きをします。

the summerのtheは「唯一のthe」と考えることもできます(the sunのtheと同じ)。

しかし「夏に」はin summerとも言うのに,あえてtheをつけてin the summerと言う背景には,「ほら,(あなたも知っている)例の夏という季節ですよ」という心理があると思われます。

the Japanese language,the death penaltyなども同様。languageやpenaltyは可算名詞だから,単数形で使うときは前に冠詞が必要です。

しかしaを使うと「複数のもののうちの1つ」がイメージされます。「日本語」という言語や「死刑」という(種類の)刑罰は1つしかないから,(対比の)theを使うわけです。

たとえばthe catが「ネコ一般」(総称)を表す場合,(ネコにはいろんな種類があるが)典型的なネコの形をイメージしてtheが使われています。

SKYWARD流では,the catに限らずthe summerやthe Japanese languageなどの抽象物も「同じグループに属する他のものとの対比を意識したthe」と説明します。

 

【補記】上記の★は,より正確に言えば次のようになります。

「万人が共通のイメージ(形)を思い浮かべるはずだ」と話し手が考えているかどうか

つまり「対比のthe」を使うかどうかは話し手の意識に左右されます。「あるコンビニに行った」はaで表す,というネイティブもいます。  

 

◆theの用法を理解し,自分で使いこなすためには,実際の英文中で使われているtheが上記の5つの用法のどれに当たるかを考えるのも効果的です。

Mr. Chico Mendes is one of my role models. He was born in the Amazon region in 1944 to a poor Brazilian family that had farmed rubber from rubber trees for many generations. They loved the rainforest and used its resources in a way that did not destroy it. However, mining companies and cattle ranchers started destroying the Amazon rainforest which is more than 180 million years old. They burned and cut down hundreds of thousands of trees, endangering the living environment of the people there. Chico began a movement that organized ordinary workers to oppose those harmful practices.

訳:チコ・メンデスさんは、私のロールモデルの一人です。彼は1944年にアマゾン地域で、何世代にもわたってゴムの木からゴムを栽培してきたブラジルの貧しい家族のもとに生まれました。彼らは熱帯雨林を愛し、その資源を破壊しないように使っていました。しかし、鉱山会社や牧畜業者が、1億8000万年以上の歴史を持つアマゾンの熱帯雨林を破壊し始めたのです。何十万本もの木を燃やし、伐採し、そこに住む人々の生活環境を危険にさらしたのです。チコは、一般の労働者を組織して、こうした有害な行為に反対する運動を始めたのです。(DeepL翻訳)(センター試験より)

下線部のthe Amazon rainforestのtheは,@(指示のthe)またはB(唯一のthe)と考えられます。

言い換えればこのtheは,C(予告のthe:あるいは後方照応のthe)ではありません。

このtheが「後ろの修飾語によって限定されている」という理由で使われているのなら,アマゾンには「1億8000万年以上の歴史を持つ熱帯雨林」とそうでない熱帯雨林があることになります。この文はそういう意味ではありません。

つまり,この文のwhich以下はthe Amazon rainforestに対する補足説明であり,規範文法で説明するならwhichの前にコンマを入れるべきだと言えます。(実際にはこの文のように継続用法のコンマが省略されることはよくあります)

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