SKYWARD総合英語解説 第3章(受動態)
英語学習本によく見かける「この分野はここを押さえておけば簡単」という類の説明を私は好みません。 薬袋善郎先生の「黄リー教(基本文法から学ぶ英語リーディング教本)」の冒頭に 「本書は,読者をわかった気にさせて,気持ちよくさせることを目的とした本ではありません」 とあります。私も基本的に,そういう姿勢で本を書いています。
SKYWARDのChapter3(受動態)の解説動画では,次の3点を示しました。 A 受動態は「be動詞+過去分詞」で「〜される」の意味を表す。 B 「能動態のS=受動態のO」という関係がある。 C 受動態を使う際にはしばしば「和文和訳」が必要になる。 https://www.kirihara.co.jp/swtg_movie/#01
私の経験では,「日本語と英語を対応させて考える」という思考習慣を完全に捨て去ることのできる英語学習者はほとんどいません。 だからSKYWARDでは,(ダイレクトに英文を作るのは大半の日本人には難しいという前提で)「日本語を英語に直す」という手順で英文の作り方を説明しています。 @試合は中止になった。→試合は中止された。(和文和訳)→The
game was canceled. A予定は変更になった。→The schedule changed. /
The schedule was changed. Aでは「予定は誰かが変えるものだから受動態が正しいのでは?」と思うかもしれませんが,能動態も可です。 B私たちは誰かに後を付けられているんじゃないだろうか。 →I’m afraid we (×are followed / 〇are being followed)
by someone. このような間違いが発生するのは,「〜されている」という日本語に次の3通りの意味があるからです。 (1)習慣的に〜されている (2)〜され終えている (3)〜されつつある(←B) Bでare followedが間違いなのは,対応する能動態(Someone follows us.)からわかります。 このfollowsは習慣的行為を表すから「今,誰かが後をつけている」の意味にはなりません。一方, Cドアに鍵がかかっている。→ドアに鍵がかけられている。→〇The
door is locked. 「英文→和文」の順に考えた場合,The door is
locked. には2つの意味があります。 (1)ドアには習慣的に鍵がかけられる。(Someone
locks the door. という能動態に対応) (2)ドアは(今)鍵がかけられた状態だ。(対応する能動態はない。lockedは形容詞) このことから,lockedのような語は過去分詞と形容詞の性質を併せ持つことがわかります。 下の例のinvited・delayed・canceledはすべて形容詞です。 (p.113) たとえばI’m
invited to her wedding. は,上記(2)と同様にShe invites me to her
wedding.
という習慣的行為を表す能動態には対応しないからです。 別の言い方をすると,locked・broken・closedなどは「〜されている」の意味にもなりますが多くの場合は形容詞であり,「完了した行為の結果としての状態」を表します。 このように過去分詞の形容詞化が進むほど受動の意味が弱まり,crowded,married,locatedなどは受動の意味はほぼゼロです。 このように,受動態を使いこなすには,日本語の意味をていねいに仕分けして考え,過去分詞と形容詞のグラデーションを意識する必要があります。 「『〜される』は〈be+過去分詞〉で表せばいい。これだけを覚えておけば受動態はOKだ」という簡単な話ではないのです。
受動態を発信(書く・話す)の観点からとらえると,「受動態を使わずに表現できないか?」と問い直すことも大切です。 これには情報構造,つまり「自分が最も伝えたいことは何か」を考える必要があります。 たとえばby(〜によって)の後ろにあるものは,基本的にその文の中心的な情報になります。 〇(a)John likes anime. / ×(b)Anime is liked by John. →(b)は「アニメは(他の人ではなく)ジョンによって好まれている」という不自然な意味になる。 〇(a)He loves Beth. / △(b)Beth is loved by him. →him(人称代名詞)は旧情報だから,(a)の方がはるかに自然。
SKYWARDでは,受動態を「能動態からの書き換え」ではなく「S+be動詞+過去分詞+X」の形をベースにして学びます。 そして発信用には,「X=時・場所・by+動作主」だけを説明しています。それ以外の形は能動態で表現すればよい,ということです。 例として第4文型の受動態を考えます。 My father gave me a watch. →(a)I was given a watch by my father. / (b)A watch was
given to me by my father. (a)(b)が実際に使われることはまれでしょう。(a)はI
got a watch from my father. と言えばよく,(b)は新情報を文頭に置いた不自然な文です。 そう考えると,lend・send・teach・tellなどSVOOの形で使う動詞の多くは,受動態での表現には適さないと言えると思います。 △We are taught English by Ms. Hara. / 〇We learn English
from Ms. Hara. この例でも,be taughtでなくlearnを使う方がシンプルで自然な文になります。 そこでSKYWARDでは,こういう説明をしています。 ・「S+be動詞+過去分詞+X」のXとして名詞を使う動詞としては,callだけを覚えておけばよい。 I’m called Taka (by my classmates). この文は「X=名詞」であり,callだけはこの形を知っておくべきです。 そう考えることによって,〈have+O+過去分詞〉で「Oを〜される」の意味を表す形(間接受動態)を使う必要もなくなります。 この形は「Oを〜してもらう」の意味では頻繁に使われますが,「自転車を盗まれた」はSomeone stole my bicycle. などで十分です。 (p.104) 参考:ジーニアス英和辞典に次の記述があります。 She had a book stolen from her library.(彼女は書斎から本を盗まれた)は,Someone stole a book from her library. の方が一般的。 また受動態に続くXが形容詞・分詞・that節などの場合も,たいていは受動態を使わずに表現できます。ただしXが不定詞の形は重要です。 I was asked to make a speech for her wedding. SKYWARDでは,このタイプの動詞は不定詞の章で扱っています。
なお,It is said
〜型の文にも言及しておきます。一般に意味を持たないitで始まる文は,フォーマルな響きを持ちます。 (a)It is necessary for us to reconsider the plan. (b)We need to reconsider the plan. (b)は口語的な表現,(a)はよりフォーマルな言い方です。 △(a)It is said that she used to be a fashion model. 〇(b)People say [I hear] she used to be a fashion model. 小論タイプの英作文でIt is said
〜型の表現を使う機会はありますが,上のような日常的な内容を(a)のように表現すると文体的にアンバランスになります。
今回のまとめです。「書く・話す」の観点から言えば,少なくとも初級〜中級レベルの学習者は 「S+be動詞+過去分詞(+時・場所・by 〜)」の形の受動態を作ることができればほぼ十分であり, それ以上複雑な形は能動態で表現すればよい,とSKYWARDでは説明しています。
繰り返しになりますが,SKYWARDの最大の特徴は次の2つを区別していることです。 A
発信用の英文(自分で書いたり話したりする際に使う) B
受信用の英文(読んで意味が分かればよく,自分で使う必要はない) 知識の量としては,当然A<Bです(AはすべてBに含まれます)。 たとえば時制で言えば,「未来完了形」はB型だ(自分で使う必要はない)というのがSKYWARD流の説明です。 受動態の場合,SVOOやSVOCの受動態はB型です。 「いや,そんなことはない。これらの形も自分で使えるようになるべきだ」という意見は当然あるでしょう。そこは線引きの問題です。
B型の知識の説明の仕方について,SKYWARDは他の(少なくとも総合英語系の)本とはかなり違う方針を取っています。 そこには自分の指導経験に基づく1つの考え方が反映しています。 それは,「英文解釈の指導において『結論ありきの説明』は意味がない」ということです。順を追って語ります。 SKYWARDでは,「過去分詞」と「過去分詞が形容詞化したもの」をまとめてED形と呼んでいます。 受動態の解釈で最も大切なのは,「S+be動詞+ED形+X」の形において,ED形とXとの間に意味的な(あるいは構文上の)つながりがあるかないかの判断です。 たとえば「X=名詞・形容詞」の場合,ED形とXとの間には必ず構文上のつながりがあります。つまりXは省けない要素であり,修飾語ではありません。 ・The kitchen is always kept X[clean]. この文ではX=形容詞であり,能動態ならWe
always keep the kitchen clean.(第5文型)です。 日本語との対応で言えば,「S+be動詞+ED形+X[形容詞・分詞]」の形は,「SはXである[している・されている]状態を〜される」と訳すことができます。 このようにSKYWARDの説明は,「be動詞+ED形」の後ろに置かれた品詞の違いに応じて,文がどんな意味になるかを考えていきます。
では,X=前置詞句の場合はどうか。これには3つのパターンがあります。 @He <was reminded of> his hometown. AThis desk <is made of> wood. BThis church <was built in> the 16th century. @(be reminded of型)は,能動態の〈V+O+前置詞句〉を受動態にしたもの。remind O of 〜の連語関係の知識をもとにして解釈します。 A(be
made of型)は,これで1つの連語と考えるもの。be interested inなども同様です。このmadeやinterestedは(ED形の)形容詞と考えることができます。 一方B(be built in型)では,in以下は単なる修飾語です。 ところが英文解釈に慣れていない学習者からは,「先生,このbe built inは熟語ですか?」という質問がよく出ます。 これは,ED形と前置詞の間に「意味の切れ目」があるかどうかを識別できていないからです。では,どうすればよいか? @では能動態の連語関係に着目します。Aではそれ自体を一種の熟語と考えます。 つまり,remind O ofやbe made ofの形を暗記するのが先決です。 その知識をベースにしてBを考えると,「be built inという形は自分の知識のストックに入っていない。 だったらこれは『熟語』ではない」と判断できます。
肝心なことは「目の前にある英文をどう読むか」ということ。 たとえば@について,「このbe reminded ofはremind O ofをもとにしているね。だから…」という「結論ありきの説明」では, 既にこの文の意味がわかっている学習者は納得するでしょうが,そうでない学習者にはほとんど意味をなしません。 なぜなら,そういう説明は「ED形+前置詞句」の形に常に当てはまるわけではないからです。 SKYWARDでは,こう説明しています。他の学習分野もロジックは同じです。 ・ED形と前置詞句との間の意味の切れ目の有無を判断しなさい。 ・そのために@ABのパターンを意識して,連語・熟語のストックを増やしなさい。 こういう方向性の説明は,薬袋先生の「黄リー教」をはじめ,いくつかのリーディング系の学習書とオーバーラップする部分も大きいと思います。 特に「文[動詞]型・準動詞・受動態」の3つの学習分野は相互に深く関連しており,分析的な読み方の訓練が必須です。 |
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