SKYWARD総合英語解説 第5章(動名詞と分詞)
たとえば「一億人の英文法」では動名詞と分詞を区別せずに「動詞-ING形」と呼び,この形は「常に生き生きとした躍動感を持つ」と説明されています。 私はその立場は取りません。両者は昔の英語では別々の形であり,動名詞のすべてに躍動感があるとは思えないので。 SKYWARDで動名詞と分詞を1つの章で扱っているのは,もっと現実的な理由からです。 たとえばcooking
knifeが「包丁」,flying fishが「トビウオ」,developing countryが「発展途上国」の意味であることは,知っている人には当然であっても,知らない人は「なぜ?」と思うはずです。 この3つはどれも「ING形+名詞」ですが,本質的な意味は次のように違います。 @cóoking knife=料理する(ことの)ためのナイフ(knife
for cooking) Aflying físh=飛ぶ性質を持つ魚(fish
which flies) Bdeveloping cóuntry=発展しつつある国(country
which is developing) したがって〈ING形+名詞〉の形を自分で使ったり意味を解釈したりするためには,こうした意味の違いを知っておく必要があります。 一般の文法書では,@は動名詞,ABは分詞の章に出てきます。SKYWARDでは3つをまとめて説明したいので,動名詞と分詞を1つの章にしました。
受信(読むこと)に関しては,他の章と同様に,ING形やED形と前後の品詞との関係を分類して,それぞれの形が表す意味のバリエーションを考えます。 たとえば文中に「名詞+ING形」が出てきた場合,主な意味のパターンは写真の3通りに分類することができます。
たとえば[b]を「これは〈知覚動詞+O+〜ing〉の形だね。だから文の意味は…」と説明しても,学習者は戸惑うでしょう。 一方「hearが出てきたら,後ろに〈O+〜ing〉の形があるかもしれないと予想しながら読もう」という説明は有効です。 その過程で[a][b][c]のパターンを学習者の頭に定着させます。
クイズを1つ。I saw a boy <eating a hamburger>. の< >は,形の上では @SVOCのC(男の子がハンバーガーを食べているのが見えた) Aa boyを修飾する分詞句(ハンバーガーを食べている男の子が見えた) の2つの解釈が可能に見えますが,@の解釈がベターです。その理由を考えてみてください。
答:@の解釈はこの形のすべての文に適用できる。一方Aの解釈は,前の名詞が「それ以上限定できないもの」を表すときは適用できない。つまり@の方が汎用性の高い解釈だから。 I saw Tom <eating a hamburger>. →×ハンバーガーを食べているトムが見えた。 Tom(固有名詞)はそれ以上限定できないので,この解釈は誤りです。比較として次の例も。 I saw the boy <eating a hamburger>. →〇@その男の子がハンバーガーを食べているのが見えた。 〇Aハンバーガーを食べているその男の子が見えた。 Aの解釈は可能ですが,それはどんな状況でしょうか。 たとえば「ほら,あそこにいる男の子(あるいは子ども)が何か食べているよ」と言われた人がそちらに目を向けると, ハンバーガーを食べているその男の子が見えた―こういう状況なら@Aの両方の解釈が可能でしょう。the
boyは旧情報,a hamburgerは新情報です。 一方「ほら,あそこにいる男の子(あるいは子ども)がハンバーガーを食べているよ」と言われた人が目を向けた先にその男の子が見えた場合は, I
saw the boy (eating the hamburger). と言うでしょう。the boyもthe
hamburgerも旧情報です。( )は省略可能であり,I saw him.
とも言えます。
分詞構文について たとえばBeing sick, <he stayed home all day>. の< >は,英文法解説でもロイヤル英文法でも「主文」と呼んでいます。 「主節」は従属節とセットで使う用語であり,この文は単文だから従属節はない。だから<
>を主節とは呼べないので,便宜的に主文と名づけたということでしょう。 学習文法書には昔から,分詞構文を「接続詞を使った文からの書き換え」で説明するスタイルがあります。 今日でもCorpus
Crown,Breakthroughなどはそういう説明をしていますが,前述のように形容詞の働きをする分詞構文もあるので,SKYWARDではそのような説明はしません。 分詞構文を発信(書く・話す)に使うべきか?という説明の比較です。 ・SKYWARD:「〜しながら」の意味の分詞構文は会話で使える。それ以外は使わなくてよい。 ・Evergreen:分詞構文が会話で使われることはあまりない。むやみに分詞構文を使わないようにしよう。 ・Genius:英作文には使わない方が無難。付帯状況を表すものは使ってもよい。 ・Corpus Crown:高校生は発信の際には使わず,読んで理解するに留めておくのが無難。 このように微妙な違いがありますが,SKYWARDでは次のような分詞構文(p.169)は会話で使うことを勧めています。
読むことに関して,Genius総合英語には「小説では分詞構文は『付帯状況』の意味で,文末で使われることが圧倒的に多いと言えます」という説明があります。 私は小説にはあまり詳しくありませんが,確かに小説ではピリオドの代わりに分詞構文を使って文を引き延ばす文体はよく見られます。 しかし分詞句と主文の一般的な位置関係は,基本的には次のようになると私は思います(SKYWARDのp.612も参照)。 A
主文+分詞句:分詞句は主文に対する補足説明(あるいは情報の継ぎ足し) B
分詞句+主文:分詞句は情報の焦点を後出しするための「前置き」 新聞記事などではAの形が圧倒的に多く,分詞句は基本的にand(そして〜)の意味を表します。 Aは「思いついた順に情報を並べる」という点で口語的であり,Bは「文全体の形を決めてからでないと作れない」という点で文語的な表現だと言えます。 拙著「英文法 何を重点的に教えるか」(大修館)では,過去のセンター試験の読解・会話問題中でのAとBの出現比率をカウントしました。 結果はA:B=82:12。つまり「主文+分詞句」の形が圧倒的多数です。 ●Seeing Apollo chase his daughter, Peneus used his magic to help her, turning her into a beautiful laurel tree. (アポロが娘を追いかけるのを見て,ピニオスは魔法を使って彼女を助け,彼女を美しい月桂樹に変えた)(2009センター追試) 上の文はBの例ですが,この例からもBが文語調の響きを持ち,フィクション向きの表現だということがわかります。 ●ON GLANCING over my notes of the seventy odd cases in which I have during the last eight years studied the methods of my friend Sherlock Holmes, I find many tragic , some comic , a large number merely strange, but none commonplace ; for, working as he did rather for the love of his art than for the acquirement of wealth , he refused to associate himself with any investigation which did not tend towards the unusual, and even the fantastic . (私の友人シャーロック・ホームズの捜査方法を最近8年間にわたって研究する題材とした70件の不思議な事件の記録に目を通してみると, 多くは悲劇的であり,一部には笑いたくなるようなものもあり,あるいは単に奇妙なだけのものも非常に多く見つかるが,平凡な事件は一つもない。 というのは,見てのとおり彼は,富を得るためというよりもむしろ自分の手腕への愛着から仕事をしているので, 異常な,あるいは奇怪とも言える方向に向かわない調査には関わろうとしなかったからである) 上の文は拙著よりホームズシリーズの「まだらの紐」の冒頭部分です。 赤字の分詞構文はBのパターンであり,分詞句は主文に対する「前置き」の働きをしています。
分詞構文は参考書によって説明がかなり異なるので,読み比べるのも面白いでしょう。
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