2015/2/8 up

大学入試(英文法)悪問データベース [A1] 動詞(1)

 

[010] stealとrob(2012 東京理大)〈連立完成〉

×Martin stole my book from me. 

=Martin robbed me ( ) my book. 

【解説】説明不要でしょう。昔はこういう「書き換え公式」を覚えさせられていたのですが…

このレベルの能力でも大学教員を続けられるのなら,出題者はある意味で幸せ者です。

 

[009] quitの活用形(2017 名古屋学院大)

×彼女は上司と言い争いをした後に辞職した。

She ( ) her job after an argument with her boss.

★@quit  Aquits  Bquitting  ☆Cquitted 

【解説】quitには,quit-quit-quit と quit-quitted-quitted(イギリス英語)の2つの活用形があります。

中学や高校の先生,あるいは高校生でも知っていることではないでしょうか。

 

[008] reachの意味(2017 東京理大)〈連立完成〉

(a) If you walk along this street for ten minutes, you’ll reach the movie theater.

(b) Ten (  ) walk along this street will bring you to the movie theater. 

【解説】正解はminutes' ですが,(a)のreachは不自然。

たとえば「ウィズダム英和辞典」(第6版)では,「reach=苦労してやっと着くこと」と説明されています。

たかだか徒歩10分で着くような場合には,get toやarrive atを使うのが普通です。

 

[007] appearかseemか(2019 慶応大・看護医療)

I tried calling her office just now, but the professor (   ) to have already gone home.

@ appear  ★A appeared  B appearing  C appears

【解説】文意は「たった今オフィスに電話してみたが,教授はもう帰宅したようだった」。

appearについて,「ウィズダム英和辞典」(第4版)では次のように説明しています。

「主に話し手の視覚に基づく推論を表すが,((かたい書))ではseemの代わりに用いられる」

この文は日常的な内容であり,話者が自分の目で見たわけではないのだから,seemedの方が適切でしょう。

Richardに確認したところ,「そのとおり」とのことでした。

 

[006] find+O+過去分詞(2011 大阪商大)

Frank found his bag (   ).

@ steal A stealing B stole ★C stolen 

【解説】出題者は「フランクは自分のバッグが盗まれているのを見つけた」という文のつもりでしょう。

文法的には成り立ちそうに見えますが,不自然な文です。Frank found (that) his bag had been stolen. 

とするのがベター。なお,元の文は「フランクは自分のバッグが盗まれつつあるところを見つけた」の

意味にも解釈できます。その場合でも,Frank found his bag being stolen. よりもFrank found someone 

stealing his bag. が普通の言い方です。

 

[005] recoverは自動詞(2012 早大)〈正誤判定〉

I decided to (A)stay home from work, (B)despite I was (C)almost

completely (D)recovered from my cold. (E)NO ERROR

【解説】「風邪はほぼ完全に治っていたが,私は仕事を休んで家にいることに決めた」という意味。

出題者の想定した正解は(B)(→(al)though)でしょう。

しかしこの文は,despiteを(al)thoughに変えただけでは正しくなりません。

recover(回復する)は自動詞なので,たとえば「私は風邪から回復した」はI (have) recovered from my cold. です。

I was recovered(回復させられた?)のように受動態にすることはできません。

正しい文にするためには,despite I was → though I had と変える必要があります。

had recoveredは過去完了形で,though以下は「私は風邪からほぼ完全に回復していたけれど」の意味になります。

追記:(2015.3.22)

この記事を見られた方から,「be動詞と自動詞の過去分詞で現在完了の意味を表すので,やはり

答えはdespiteでよいのではないか」というご質問をいただきましたので,ここでお答えしておきます。

結論としては,上の問いは「悪問」ではありませんでした

@私は上の文をRichardに見せて「wasはhadに直すべきだ」という回答をもらいました。

それをもとに上の記事を書きました。

Aしかし,辞書の記述から「wasでも正しい」と訂正します。OALDに次の例文がありました。

She is now fully recovered from her injuries.(彼女は今ではけがから完全に回復している)

B参考までに言うと,〈be動詞+自動詞の過去分詞〉が常に〈完了〉の意味を表せるわけではありません。

たとえば He has died.(彼は死んだ)を He is died. と言うのは誤りです。

以下は「ロイヤル英文法」(p.420)からの引用です。

「移動や変化などを表す自動詞(come, rise, set, fall, changeなど)の過去分詞が,〈be+過去分詞〉の

形で完了形になり,Spring is come.(春が来た)のように,完了後の状態を表すのは古い完了形の名残で,

いまでは次のような表現以外は古風。

He is gone.(彼は行ってしまった)

All the money is gone.(お金がなくなってしまった)」

これらの表現の過去分詞は,純粋な形容詞に近い働きをしています。

つまり,辞書に形容詞としてエントリーがある(自動詞の)過去分詞は,be動詞の後ろに置けるわけです。

よく知られているところでは,たとえば retired(引退した)があります。この語は完全な形容詞と言ってよく,

たとえば次の両方の文が可能です。

○He is retired.(彼は引退している)/ ○He is a retired teacher. (彼は引退した教師だ)

一方,recovered は形容詞化の度合いが retired ほど強くなく,OALDには形容詞としてエントリーが

ありますが,LDOCEにはありません。また,retired とは違って名詞の前には置けません。

○He is recovered.(彼は回復している)

×The recovered patient is now out of the hospital.(その回復した患者は今退院している)

Richardは,recovered を形容詞として使うことに抵抗を覚えたのだと思います。

私も「retired ならbe動詞の後ろに置けるが,recovered は無理だろう」という感覚でした。

辞書をきちんとチェックすべきでした。ご指摘いただいた I さん,ありがとうございした。

 

[004] resembleと進行形 (2010 松山大)

× He (   ) his father. 

☆@ is resembling A is resembled to B resembles with ★C resembles 

【正解】彼は父親に似ている。

【解説】出題者の想定した正解はCですが,@も別解として成り立つ余地があります。

Richardに尋ねたところ,「Heが子どもならこの文は使える」とのことでした。

出題者は「graduallyなどの副詞的要素がないから@は不可」と考えたのかもしれませんが,

話し手が「彼は父親に徐々に似てきている」と言いたいことが状況的にわかれば,@は可能です。

そもそもこんな短い文1つだけで判断させようとすることに問題があると言えます。

 

[003] bringとcarry (2008 十文字学園女子大)

× I asked you to (   ) your book here, didn’t I?

★@ bring ☆A carry B take ☆C have

【解説】想定された正解は@でしょうが,Richardは「ACも可能だ」と言います。

「bring=持ってくる」「carry=運ぶ」という中学生でも知っている意味から考えても,Aが許容されることはわかりそうなものですが。

 

[002] preventに続く形 (2011 大阪経済大)

× The cold prevented me (   ) out.

@ to go ☆A going ★B from going C in going

【解説】想定された正解はBですが,Aも可能であることは辞書を見ればすぐにわかります。

出題者はおそらく受験生の頃に〈prevent O from 〜ing〉の形を入試向けの重要熟語として暗記し,

preventはこの形でしか使えないと今でも思いこんでいるのでしょう。

また,preventは主に書き言葉で使う語です。「かぜをひいて外出できなかった」という内容は,

日常的にはI couldn't go out because I had a cold. などで表現する方が普通でしょう。

 

[001-a] 使役を表すhave (2011 名古屋学院大)

They had their mother (   ) their room for the party last week. 

★@ clean A cleaned B to clean C to be cleaned

【解説】たとえば「ジーニアス英和辞典」(第5版)では,〈have+O+原形不定詞〉の使い方を次のように

説明しています。

Oはしかるべき職業の人に(職務として),また主に目下の人に「…させる」の意味。したがって

× I had my teacher [boss] check the letter. は不可で,I got my teacher [boss] to check ... とする。

ただし,((米))ではI had my teacher [boss] check … を認める人もいる。

上の問いの完成した文は,「子どもたちは母親に指示して部屋をきれいにさせた」という響きになるため

不自然です。このタイプの悪問は入試で多く見られます。出題者が「have+人+動詞の原形=〈人〉に

〜してもらう」という底の浅い覚え方しかしていないからでしょう。以下の問いも同様です。

[001-b](2009 福岡大)〈整序作文・1語句不要〉

私は英作文の間違いを友達に直してもらいました。

I [ the errors / correct / had / be corrected / my English composition 

/ in / my friend ]. 

【解説】完成した文は(I) had my friend correct the errors in my English composition. ですが,「友達に

命じて間違いを直させた」というニュアンスになります。

[001-c](2011 広島女学院大)〈整序作文〉

I am thinking (  ) (  ) my (  ) (  ) (  ) (  ) the homework. 

[ having / help / me / friends / of / with ] 

【解説】正解は(I am thinking) of having (my) friends help me with (the homework).。これも「私は友人

たちにその宿題を手伝わせようかと考えている」の意味。ジャイアンが言うならOKですが。

[001-d] (2011 広島女学院大)

Jane had her husband (    ) their house as she was very tired.

@ cleaned A to clean ★B clean C having cleaned. 

【解説】「ジェインはとても疲れていたので,夫に家の掃除をさせた」。ジェインは自分の夫を「目下の者」

と考えているのでしょう。

[001-e] (2008 関西学院大)

I had my neighbor (    ) the leak in the kitchen.

★@ repair A repaired B to repair C to have repaired

【解説】文意は「台所の水漏れを隣人に直させた」。隣人が配管工ならOKでしょうが。

 

参考までに付け加えると,上に示したジーニアス英和辞典(第5版)の「ただし,((米))ではI had my 

teacher [boss] check … を認める人もいる。」という記述は,第4版まではありませんでした。

おそらく読者からクレームが来たため追加したのでしょう。親切と言えば親切ですが,

読者にとってconfusing な面はあります。上の問題をRichardに見てもらったところ,

彼は「どの文でも get を使う方がよい」と言いました。



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