[005-a]
「もし〜がなければ」(2019 早大・教育)
△
I don't think she has a lot of talent. If ( it / her / endeavor / for /
been / to / hadn't / manager's ) promote her, she probably wouldn't
have
sold that many albums. (整序作文)
【解説】正解は it hadn't been for
her manager's endeavor to。
文意は「彼女には大した才能はないと思う。マネージャーの売り込みの努力がなければ,
おそらく彼女はあれほど多くのアルバムを売ってはいないだろう」。
文法的には間違っていませんが,この「もし〜がなければ」の意味の定型句(倒置形を含む)は,
私の文法問題データベースでは仮定法分野の最頻出項目と言えるほど多くの例が見られます。
しかしこの表現は,少なくとも英語を発信する際には使わなくてもよいでしょう。
リーディング問題として出題するならまだしも,整序作文形式で出題する意図がわかりません。
私の目標は,このような文法問題を大学入試から排除することです。
※ちなみにendeavorは文語的な語であり,that
manyのthat(=so)は口語的な表現です。
この英文には,文体的な統一が取れていないという問題もあります。
近年の入試から「もし〜がなければ」を出題例を示しておきます。
[005-b](2019
上智大・文)
△
Had it not (
) for European influence, Russian culture would not be what it is today.
★@been
for Aunder Bgot from Chave
[005-c](2018 摂南大)
△ あなたの援助がなかったら,留学できなかったでしょう。(整序作文)
[ had / for
/ not / your / been / it / support ], I could not have studied abroad.
【解説】正解はHad it not been for
your support。相手に面と向かってこんな表現を使うことはまずないでしょう。
手紙やメールでも,I appreciate
your support for my studying abroad.
などが普通の言い方だと思います。
[005-d](2017 津田塾大)
△ [ for
/ it / not / the / unless / were ] professor's help, l would still be
at a loss how to finish the assignment.(整序作文:1語不要)
【解説】正解はWere it not for the。
文意は「教授の助けがなければ,私は課題をどう終えるか今でも困っているだろう」。
話し言葉であれ書き言葉であれ,この文がどんな状況で使われるのか全くイメージできません。
[004]
仮定法を含む慣用表現(2011 名古屋学院大)
△
Would it [ all / if / be / right ] I cook dinner tonight?(整序作文)
【解説】正解はbe all right ifで,「今夜は私が夕食を作ってもかまいませんか」という意味です。
wouldは仮定法過去の助動詞ですから,文法的にはcookはcookedにすべきでしょう。
Would you mind if I opened the window?(窓を開けてもかまいませんか)などと同様です。
ただし,口語ではこれらの文でもしばしば現在形が使われるとRichardは言います。
[003-a] if 〜 should(2011 国学院大)
△ I would buy you lunch (
) at you.
@ she smiled A rather she had smiled
B she would smile ★C should she smile
【参考】文法的にはCが正解ですが,日常的な表現ではないと思います。
if節中で「万一」の意味を表すshouldについて,ジーニアス英和辞典では「正式」,ウィズダム
英和辞典では「主に英・かたく」,オーレックス英和辞典でも「英堅」という注釈がついています。
if節中でshouldを使った例文をネイティブにチェックしてもらうと,たいてい「shouldを使う必要は
ない」と回答されます。
上のような状況では,I’ll buy you lunch if she smiles at you.
が最も普通でしょう。
彼女が微笑む可能性を低く見積もるなら,I’d buy you lunch if she smiled at you. も可能です。
Richardは,「1つの文中にwouldとshouldを両方使うのは不自然だ」ともコメントしました。
想像ですが多くの出題者は「if+should=万一〜なら」と暗記しており,
それをさらに倒置形にした堅苦しい文を平気で作ります。
ちなみに,次の文は明治大(2001)で出題された整序作文問題の完成した文です(下線部が整序部分)。
・Please contact the manager
should you have any complaints about our service.
(サービスに御不満な点がございましたら,支配人まで御連絡ください)
このような(youを主語とする)固い内容と文体なら〈should S
〜〉の形も使えますが,
次のような問いは感心しません。
[003-b](2006 青山学院大)
△ (
) I be able to try again, I would do my best.
@ May A Were ★B Should C Shall
[003-c](2010 関西学院大)
△ (
) there, I would be disappointed.
@ If not he be A Not he should be ★B Should he not be C Not he be
[003-d](2010 近大)
△ (
) it rain tomorrow, the tennis tournament will be put off.
@ Did A Might ★B Should C Would
【解説】この文では主節の助動詞がwillなので,なおさらShould it 〜は不自然です。
If it rains tomorrow, … と言えば十分のはずです。
[002] 仮定法過去(完了)のshould(2008 麻布大)
△ If it (
) your help, I should have given up.
★@ had not been for A had not been B were not C were without
【解説】Richardは,この文でshouldを使うのは「ビクトリア朝の(古風な)英語のようだ」と言います。
普通はもちろんwouldを使います。
[001-a] 仮定法現在と直説法(2008 東海大)
△ His teacher demanded that he (
) the homework by tomorrow afternoon.
★@ finish ☆A finished B has finished C will finish
【解説】出題者の想定した正解は@です。では,Aはどうでしょうか。
Richardは「@もAも使えるが意味が違う」と言います。
・@を使った場合,heが実際に宿題をしたかどうかはわからない。
・Aを使った場合,heが実際に宿題をしたことを意味する。
つまり「彼は先生に言われて宿題を終えた」という過去の事実を語りたいときはAを使うということです。
また「オーレックス英和辞典」(初版)には「suggestに続くthat節中の動詞はどんな形を使うか」という
点について100余名のネイティブに尋ねた結果が載っていました。それによれば,
She suggested (that) Tom [@finish Afinished] the job by himself.
という文で「@を使う」が米95%・英93%,「Aを使う」が米15%・英59%です(複数回答可)。
この結果は「仮定法現在の代わりに直説法を使う人も少なくない」という事実を示しています。
以下の例も同様です。
[001-b] (2008
東海大)
△ The court requested that he (
) a fine.
@ was paying ★A pay ☆B paid C had paid
【解説】文意は「法廷は彼が罰金を支払うよう求めた」。
上記のとおり,「彼」が実際に罰金を払ったのならBを使う,というのがRichardの説明です。
以下,和訳は省略しますが,☆も別解として成り立つ余地があります。
これらに類する問いはほかにも多くあります。
[001-c] (2003 早大)
△ The president of our company suggested (
) business with that major hotel chain.
@ us to do A to us to do ★B we do ☆C we did
[001-d] (2010 北里大)
△ The stockholders demanded that the company (
) them more interest.
@ be paid ☆A paid B paid for ★C pay D pays
[001-e] (2012 近大)
△ It was required (
) placed in order.
★@ that the books be ☆A that the books were
B the books to be C the books would
※参考(2013 センター本試験)=これは悪問ではありません。
Our family doctor suggested that our son (
) a complete medical checkup every year.
★@ get A getting B is getting C to get
【解説】文意は「わが家の主治医は,息子が毎年精密検査を受けるよう勧めた」。
選択肢の中にgotがない点に着目してください。
出題者はおそらく,gotが別解になりうることを意識したのでしょう。
大学入試(英文法)悪問データベース
目次 へ