大学入試(英文法)悪問データベース [P1] 慣用表現(1)

 

[007] make both ends meet(2021 東京医大)〈整序作文〉

Due to the prolonged inflation, the family had [ both / ends / making / meet / trouble / with ] their low income. 

【解説】正解は trouble make both ends meet with ですが,bothは入れない方が普通。

たとえばウィズダム英和の見出しは「make (((まれ))both) ends meet」となっています。

Netspeakでも ends:both ends=39万:4万で,およそ10倍の開きがあります。

しかし入試では,make both ends meetの形もよく出ます。

おそらく出題者たちの頭の中には,自分が受験生時代に使った「試験に出る英熟語」(森一郎)の知識があるのでしょう。

今は自分が作った英文をDeepL Writeなどの生成AIにチェックしてもらえば,より適切な文が出てきます。

その努力をするかどうかが,悪問を避ける鍵となるでしょう。

 

[006] out of order(2013 山梨大)

×We cannot use the computer right now because it is ( ) order.

@outcome  ★Aout of  Boutside  Cout with

【解説】辞書にも書かれていますが,Richardによれば

「out of orderはa machine for public useに使う。

この文では,... because it isn’t working または ... because it is broken とするのが適切」

とのこと。「out of order=故障している」という知識だけでは不十分だということです。

 

[005-a] make it a rule to 〜 (2013 中央大)〈書き換え〉

(a) She makes it a point of attending important meetings.

(b) She makes it a (   ) to attend important meetings.

@ process A need B trial ★C rule 

[005-b](2008 駒沢大)

I (   ) it a rule to get up early in the morning.

@ give A do B perform ★C make

[005-c](2010 明海大)〈正誤判定〉

I @make a rule to go Afor Ba walk Cafter dinner every day. 

【解説】(a)の文意は「彼女は重要な会議に出席することにしている」。

(b)は「私は朝早く起きることにしている」,

(c)は「私は毎日夕食後に散歩に行くことにしている」(正解は@:make it a rule)。

make it a rule to do(〜することにしている)というフレーズは,形式目的語のitの用例として

学習参考書などにしばしば載っており,入試でもかなりよく出題されます。

しかし,実際の使用頻度は決して高くありません。たとえばウィズダム英和辞典には

「always (try to) doを使って表現する方がはるかに普通」とあります。

また,英語大学入試問題批判の先駆である故・河上道生先生の「これでいいのか大学入試英語」

(大修館)では,序論の中でmake it a rule to doが悪しき入試英語の例として取り上げられており,

「まれである」と説明されています。(a)をどう思うかとRichardに尋ねたところ,予想通り

「She always attends important meetings. が普通の言い方だ」と回答されました。

さらに(a)は,重要な会議に出席することは社員の義務ですから,sheが会社の人間であれば

わざわざ「出席することにしている」と言うのは意味的にも不自然です。

また(b)も,単にI get up early every morning. と言えば済むのに,なぜこんな長い文にするのか?

という疑問が強く起きます。

余談ですが,「アトラス総合英語」の原稿にmake it a rule to doを使った例文を原稿に入れた際,

執筆協力者のSue Fraser先生から「これは日常的に使う表現ではない」という指摘を受けました。

しかし編集部での検討を経て,この表現は大学入試によく出るため入れざるを得ないという

結論になりました。この経緯こそが,「英語教育村の真実」で指摘した現状の問題点の象徴と

言えます(もちろん私自身にも責任はあります)。

 

[004] it is needless to say 〜(2001 慶応大)

(問) 与えられた語句を使って,指定の語数で英訳せよ。

健康が富に勝ることは言うまでもない。

[above/needless/that] (10語)

【解説】出題者の想定した正解は,It is needless to say that health is above wealth. でしょう。

しかしIt is needles to say 〜 は古臭い言い方であり,たとえば「ジーニアス英和辞典」には

「通例いわない」と明記されています。

より普通の言い方はNeedless to say, health is above wealth.(言うまでもなく,健康は富に勝る)

ですが,これもあまりよい英語とは言えません。

needless to sayは個別の事実について使うのが普通です。OALDには次の例が載っています。

The problem, needless to say, is the cost involved.(問題は言うまでもなく関連経費だ)

日本人が丸暗記した決まり文句を安直に並べようとすると,往々にしてこのような不自然な英文を作ってしまいます。

 

[003] keep in mind(2008 桜美林大)〈整序作文〉

×たばこが健康に与える影響を肝に銘じておきなさい。

Keep [ can do / what / to your health / in your mind / smoking ].

【解説】keep 〜 in mindで「〜を心に留めておく」の意味。yourは不要です。

 

[002] take after(2000 関東学院大)〈同意語句選択〉

×Mary is very beautiful and people say that she takes after some famous actress.

@ looks into ★A resembles B is familiar with C recognizes

【解説】文意は「メアリは非常に美しく,ある有名な女優に似ていると人々は言う」ですが,

出題者の知識不足が露呈された非常に恥ずかしいミステイクです。OALDの定義では,

take after=to look or behave like an older member of your family, especially your mother 

or father(自分の家族の年長の者,特に父母に外見や行動が似ている)となっています。

上の文ではMaryと女優との間に血縁関係がない限りtake afterは使えず,全体の意味が不自然です。

 

[001-a] speak ill of(2011 駒沢大)

Don’t speak ill of (    ) behind their backs.

@ the other A other B some other ★C others

【解説】「〜の悪口を言う」を英語で何と言うか?と尋ねると,おそらく10人中10人の受験生

(および10人中9人の教師?)がspeak ill ofと答えるはずです。

しかしこのフレーズは,日常的にはほとんど使われません。

たとえば「ウィズダム英和辞典」(三省堂)では次のように説明されています。

Don’t speak ill of the dead.(死者の悪口を言ってはならぬ)などの格言的で古風な表現で

好まれ,日常生活で使われることは((まれ))。

和英辞典を持っている方は,「わるくち」をひいてみてください。speak ill ofは出てこないはずです。

「〜の悪口を言う」の意味で使われる最も普通の表現は,say bad things about 〜です。

しかし日本の受験英語ではほとんどの出題者が(昔自分が受験生だった頃に覚えた)

speak ill ofしか知らず,この非日常的な表現が非常によく出題されています。

出題者に反省を促す意味をこめて,以下に一部の出題例を示しておきます。

[001-b](2013 東洋大)

We should not speak ill of ( ) behind their backs.

@ ones A another ★B others C some

[001-c](2011関東学院大)

He is always speaking ill of (    ) behind their backs.

@ another A each other ★B others C one another

[001-d](2011 学習院大)[部分和文英訳]

彼が人の悪口を言っているのを私は一度も聞いたことがない。

Never (                      ) of other people.

【解説】出題者が想定した正解はhave I heard him speaking illでしょうが,

speak ill of に加えてNever have I 〜という言い方も口語的ではありません。

[001-e] (2002 愛知工大)[整序作文]

彼はけっして人の悪口を言うような人ではない。

He is the [ person / to / of / speak / last / ill ] others.

【正解】 (He is the) last person to speak ill of (others). 

[001-f](2011 神戸学院大)[整序作文]

トムは人の悪口を決して言わないという点で良い人物です。

Tom is a good person [ of / ill / in / he / that / speaks / never ] anybody.

【正解】 (Tom is a good person) in that he never speaks ill of anybody.

[001-g](2013 藤女子大)[整序作文]

私はナミが人の悪口を言っているのを聞いたことがない。

I’ve never [ heard / ill / Nami / of / others / speak ].

【正解】 (I’ve never) heard Nami speak ill of others.

[001-h](2008 日本大)[整序作文]

彼は人に悪口を言われるような人ではない。

He is not [ man / who / ill / spoken / be / should / a ] of.

【解説】正解は (He is not) a man who should be spoken ill [ill spoken] (of). ですが,

和文の自然な英訳はNobody would say bad things about him. でしょう。

 

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