大学入試(英文法)悪問データベース [T1] 

必要以上に複雑・難解な文(1)

 

[009] 冗長な表現(2012 大阪経済大)

×Ken bought a book ( ) subject is cooking.

@which Athat ★Bwhose Cwhere 

【解説】実際にこんな英文が使われる可能性はゼロと言ってよいでしょう。

Ken bought a cookbook. と言えば済むことです。

 

[008] 不自然な表現(2008 東京理大)〈整序作文〉

×持ち物には誰々のものと必ず記入しておくこと。

[ be / is / it / on / sure / to / whose / write / your ] stuff.

【解説】並べ替えた文は,Be sure to write whose it is on your stuff.

何とも言いようがないほど不自然な文。一応Richardに尋ねましたが,案の定

Be sure to write your name on your stuff. と言えばいい」とのことでした。

 

[007] 余分な言葉(2012 福岡大)

Despite ( ) work experience, she couldn't easily find a new job. 

@she had  ★A her having  Bshe has had  Cshe is having 

【解説】Aを入れた文は文法的には成り立ちますが,非常に不自然な感じ。

havingを取り除いて Despite her work experience ... 表現する方がずっと自然です。

英語感覚の問題であり,出題者はAを入れた文の不自然さに気づく必要があります。

 

[006] 特殊な出典(2010 名古屋工大)

According to Emerson, [ much as / nothing / men / so / astonishes ] common sense and plain dealing.

【解説】並べ替えた部分は nothing astonishes men so much as ですが,Richardに「どういう意味か」と尋ねると,

「わからない」とのこと。ネイティブにも意味がわからない文を作らせるのは,不適切と言うしかありません。

 

[005-a] 特殊な出典(2011 中央大)

Thomas read the passage his mother wrote on the book, “There are those who are last (   ) will be first”.

@what Awhen Bwhich ★Cwho

【解説】引用符内の文の意味は?DeepLは次のように訳しました。

「トーマスは、母親が本に書いた『最後になる者が最初になる』という一節を読みました。

引用符内の文は聖書からの引用で,下のサイトに解説がありました。

http://kurosaki-commentary.com/kurosaki_frame.cgi?42+13+7-1-4

文法的に説明するなら,2番目のwhoは先行詞(those who are last)の意味を限定する。つまり「最後(の位置)にいる人の集団の中には,(将来)先頭に立つ人もいる」ということ。

ただ,高校生にとっては難しすぎる問題ではないか?―この問いのように,出題者が自分の知っている特殊な出典からそのまま抜き出してきたような問いはよく見られます。

類例を1つ挙げておきます。

[005-b](2020国学院大)〈正誤判定〉

Beauty creates @as many disadvantages Aas it does advantages, and not Bthe less of which is the envy Cof others.

【解説】この問いをRichardに解いてもらったところ,正解を出すのにかなり時間がかかりました。

正解はB(→the least)。not the least of which is ...は「そのうちで最もささいではないもの[=とりわけ重要なもの]は…」ということ。

この文全体がどこかからの引用だと思われますが,規範文法的に言えばwhich→themとすべきでしょう。

少なくとも正誤判定問題として出題するのは高校生にとってハードルが高すぎると思います。

 

[004] 主題の転換(2016 センター本試験)

Wood (  A  ) be used as the main fuel, but nowadays fossil fuels (  B  ) widely.

★@A:used to  B:are used     AA:used to  B:have been used

BA:was used to  B:are used    CA: was used to  B:have been used

【解説】この問いは,「英語教育」の2017年3月号で取り上げました。以下はその抜粋です。

完成した文は次のとおりです。

Wood used to be used as the main fuel, but nowadays fossil fuels are used widely.

(木材は以前は主要な燃料として使われていたが,今では化石燃料が広く使われている)

この文が不自然に感じられるのは,butの前後で主語が食い違っているからです。

主語は主題を表し,「私はこれから○○について語ります」という話し手[書き手]の意図を相手に伝える働きをします。

この文の場合,これだけだと前半は「木材」,後半は「化石燃料」が主題になっており,聞き手[読み手]の混乱を招きます。

情報構造の観点からは次のように説明できます。

(a)Wóod used to be úsed as the main fúel, but nówadays fóssil fuels are used wídely.

下線部が情報の焦点です(前半の情報の焦点はWoodだという有標の解釈には文脈の支えが必要)。

前半は文末焦点の原理に沿った自然な形ですが,後半は文頭に情報の焦点を置いた有標の形だと言えます。

同じ内容をより自然な文で表現するなら,たとえば次のようになるでしょう。

(b)The main fuel used to be wood, but nowadays it is fossil fuels.

(主要な燃料は以前は木材だったが,今では化石燃料である)

(c)People used to use wood as the main fuel, but nowadays they use fossil fuels widely.

(人々は以前は主要な燃料として木材を使っていたが,今では化石燃料を広く使っている)

(b)(c)は前半と後半の主語を一致させた形です。このような文の作り方は,英作文の指導に当たっても重要です。

 

[003] 余分な言葉(2019 上智大・文)

None of the portraits the painter dedicated to the king (   ) matching

the impact of his earlier and most famous historical work.

★@came close to  Awere comparable with  Bwere led up to  Ccame to

【解説】文意は「その画家が王に献じた肖像画のどれも,彼の以前の最も有名な史書の衝撃には及ばなかった」。

空所の後ろのmatchingは不要です(Richardに確認済み)。

出題者はtoの後ろに動名詞を置いて複雑な形にしたかったのでしょうが,結果的に不自然な文になっています。

 

[002] 時制の選択(2019 早大・社会科学)

(a)During periods of prolonged heat and rain, the body (b)loses energy and as a result we (c)became more susceptible to (d)illness.  (e)NO ERROR

【解説】正解は(c)で,正しくはbecomeです。

文意は「暑さと雨が長期間続く間に,体はエネルギーを失い,その結果私たちは病気にかかりやすくなる」。

こう解釈した場合はweは一般の人々ですが,weを特定の「私たち」と考え,全体を過去時制で統一すれば,

「(b)のlosesをlostに変える」という別解も成り立つのではないか?

Richardにこう尋ねたら,しばらく考えた後で「the bodyがour bodyならその解釈も可能」とのことでした。

the bodyは「人体(一般)」の意味だから(c)をbecomeに変えるべきだとのこと。

しかし,受験生にそのようなことを考えさせるのは,レベルが高すぎるのではないでしょうか。

 

[001] 前置詞の選択(2019 早大・社会科学)

(a)A knowledge of mathematics is (b)of great (c)importance to (d)understanding economics. (e)NO ERROR

【解説】正解は(c)で,正しくはimportanceです。文意は「数学の知識が経済学の理解には非常に重要だ」。

ただ多くの受験生は,「(d)はunderstandが正しいのではないか?と思うはずです。

結論から言うと be important to 〜(〜にとって大切だ)のtoの後ろには名詞を置くので,understandingは間違いではありません。

しかしRichardにこの文を見せたところ,「toはinに直す方がよい」とのことでした。

おそらく,It is important to do. の形でimportant toの後ろには動詞の原形を置くことが多いので,

important to 〜ing の形に違和感があるためだと思います。

出題者が難易度を上げるためにこのような文を作ったことは明らかですが,よい問題とは言えません。

 

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