大学入試(英文法)悪問データベース [Z1] 

その他の悪問(1)

 

[003] プロにも解けない(?)問い(2018 慶応大・法)〈正誤判定〉

@〜Cの中から誤りを探し,すべて正しければ0を選ぶ問い。

Yokohama is @a most pleasant place to Awork as well as Blive Cin

【解説】この問いは「英語教育」(大修館)のQuestion Boxで取り上げられました。

柏野健次先生の見解の概要は次のとおりです。

・文体を考慮に入れないなら,この文は正しい。

・規範的な文法規則に従えば,workの後にinが,liveの前にtoが必要。

・口語英語の知識がある受験生なら,liveの後のinは不要と考えるだろう。

・結局は,出題者が受験生にどのレベルの「正しさ」を求めているかという問題に帰着する。

ちなみにRichardは,「この文は間違っていない」と答えました。

 

[002] 出題の意図に問題あり(2022 立教大)〈正誤判定〉

I was looking @around for new shoes at a department store Awhen a polite employee Baddressed to me Cfrom behind.

【解説】正解はB(toは不要)。確かにそのとおりですが…

現実の英語の運用を想定したとき,「address(話しかける)は他動詞だからtoは不要」という知識は,いったい何の役に立つのか?

・発信面では,日本人が「話しかける」の意味でaddressという堅苦しい単語を使う機会はまずない(speak toを使えばよい)。

・受信面では,動詞のaddressの意味としては「話しかける」「取り組む」などを覚えておけばよい(address toという形は実際に使わないのだから知らなくてよい)。

これは「何のために文法を勉強するのか?」という学習思想の問題に直結していいます。

また入試問題には,「英語のどんな力を測りたいか」という出題者の意識が反映します。

上のような問題を出す出題者はその意識が低く,自分が受験生の頃に解いた類の文法問題を再生産しているにすぎません。

 

※比較のために,良問の例も挙げておきます(空所補充)。

The formulation and execution of economic policies necessitate meticulous consideration and planning (   ) large segments of the population.

○@because they will affect  Athey are affected because  Baffect them because  

Cbecause affecting them  Dbecause of their effects  (2022北里大)

この問いには,文を組み立てる力と読解力の両方を測りたいという出題者の意図が反映されています。

大学入試に文法問題を出題したいなら,「何のために文法を学ぶのか」という意識を高校生に自覚させるような問題を作ってもらいたいものです。  

[001] 不適切な設問文(2019 上智大・文)〈正誤判定〉

(問)以下の各文の意味を考えた時,文法・語法的な誤りのある箇所をそれぞれ(a)〜(d)から1つ選びなさい。

Every writer (a)cannot face the problem of dealing (b)with identical words

or phrases (c)appearing in the same sentence or an adjoining (d)one.

【解説】正解は(a)(cannot→must)。

文意は「すべての作家は,同じ語句が同じ文や隣りの文中に現われることに対処するという問題に直面しているに違いない」。

出題者は「cannotでは意味が通じない」と言いたいのでしょうが,cannotは「文法・語法的な誤り」ではありません。

この文には文法・語法的は誤りはなく,ただ意味が不自然なだけです。

したがって,そもそも設問文の日本語が不適切だと言えます。たとえば次のように直すべきです。

「以下の各文中の(a)〜(d)から,文法・語法的な誤りまたは意味の面で不自然な箇所を1つ選びなさい。」

ちなみに他の小問はすべて文法・語法の誤りを発見するタイプのものであり,この問いだけが異質です。

このような作問方法は受験生を混乱させます。配慮が足りないと言わざるを得ません。

 

大学入試(英文法)悪問データベース 目次