2013/3/9 up

大人の英文法−001  情報構造@  

 

1970〜80年代ごろ,英文法研究の歴史に1つの革命的な変化が現れました。

それが「情報構造」という観点から文をとらえる考え方です。

最近では高校生向けの文法参考書にも,この観点からの説明が出ています。

(a) Tokyo is the capital of Japan.(東京は日本の首都だ)

(b) The capital of Japan is Tokyo.(日本の首都は東京だ)

この2つの文が表す事実は同じです。

しかし,話し手がこれらの文によって伝えたい情報は異なります。

情報構造の観点からは,次のように説明されます。

(a) Tokyo is the capital of Japan.

   旧情報          新情報

(b) The capital of Japan is Tokyo.

             旧情報             新情報


新情報・旧情報は,次のように定義づけることができます。

●新情報=話し手が新たに話題に出す情報

●旧情報=相手も既に知っていると話し手が思っている情報


一般に,主語は「主題」つまり「何について語ろうとしているか」を表します。

(a)の文の主題はTokyoであり,「東京とは何かと言えば,それは日本の首都だ」

という意味を表します。一方(b)の主題はThe capital of Japanであり,「日本の

首都がどこかと言えば,それは東京だ」という意味になります。

つまり,(a)はWhat's Tokyo? という問いへの答えであり,

(b)はWhat's the capital of Japan? という問いに対する答えです。

英語の基本的な情報構造の配列は,「旧情報→新情報」です。

つまり話し手は,相手も知っている情報(旧情報)を主題として提供した上で,

その主題についての新たな情報(新情報)を提示します。

したがって,新情報は文の最後に置かれるのが最も一般的です。

また,旧情報には強勢を置かず,新情報には強勢を置きます(強く読みます)。

上に挙げた2つの文は,次のような強勢になります。

(a) Tokyo is the cápital of Jápan.

(b) The capital of Japan is Tókyo.


次の問いは,ある私立高校の入試問題から引用したものです。

(問)2つの文がほぼ同じ意味になるよう,空所に適切な語を入れなさい。

(a) My car is near the bridge.

(b) The car near the bridge is (      ).

出題者が想定した正解は mine です。文の意味はそれぞれ次のようになります。

(a) 私の車は橋の近くにある。

(b) 橋の近くにある車は私のだ。

この問題は悪問です。学習者は,この2つの文が同じ意味だと考えるような

「間違った英語感覚」を身につけないよう注意する必要があります。

上の説明からわかるとおり,普通の解釈では次のようになります。

(a) → near the bridge が新情報。話し手は「自分の車はどこにあるのか」を

        語ろうとしている。

(b) → mine が新情報。 話し手は「橋の近くにある車は誰のものか」を

        語ろうとしている。

したがって,実際の会話の中では両者は使う場面が全く違います。

このように,現実のコミュニケーションを行うためには,単に「文法的に正しい

文を作る」というだけでは不十分であり,それぞれの文がどんな情報を伝え

ようとしているのかを意識する必要があります。それによって,どこを強く読む

かも違ってきます。

 

【参考】 「新情報は強く読む」ということは,「強く読めばそれが新情報になる」と

いうことでもあります。

(a) My car is near the bridge.

(a') My car is near the bridge.

   (a)は普通は文末の新情報(の焦点)であるbridgeを強く読みますが,(a')の

ようにMyを強く読めばそこが新情報になります。(a')は,たとえば相手が「ぼくの

車はすぐ近くの駐車場に置いてある」と言ったのを受けて「(君の車と違って)

ぼくの方の車は橋の近くにあるんだ」と答えるような状況が想定されます。

 

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