重い[長い]要素を文末に回すことを「文末重心の原理」と言います。
その典型例が,形式主語構文です。
To sing karaoke is fun.
→ It is fun to sing karaoke. (カラオケを歌うことは楽しい)
上のような主語の長い「頭でっかち」な文は,英語では避けられる傾向があります。
※名詞的用法の不定詞を文頭に置く形は,現代英語ではほとんど見られません。
情報量のバランスから言えば,「前を軽く,後ろを重く」する方が,英語の文らしくなるわけです。
たとえば「象は鼻が長い」という和文の英訳として,次のどちらがベターでしょうか。
(a) The trunk of an elephant is long.
S
V C
(b) An elephant has a long
trunk.
S V
O
この2つの文を比べて,「何となく(b)の方がよさそうだ」と感じることができる人には,一定の
英語感覚が身についています。実際に(a)はぎこちない文であり,(b)の方が自然に響きます。
(a)がぎこちない理由は,Sが重すぎる(逆に後ろが軽すぎる)からです。したがって,たとえば
次のように後ろも重くすれば,不自然さが和らぎます。
(a)' The trunk of an elephant is very long and big.
S
V C
情報構造の観点から言えば,(a)は「象の鼻」,(b)は「象」について語っています。
このように英語の文は「主題を最初に示し,その主題について説明する」という構造を持って
います。その説明が情報的に大きな価値を持てば持つほど,自然に響くというわけです。