現在形[=現在時制]の意味は,動詞の性質によって次のように異なります。
動作動詞の現在形=現在の習慣的行為を表す
状態動詞の現在形=現在の状態を表す
次の2つの文を比べてみましょう。work は動作動詞,live
は状態動詞です。
(a) He works at a bookstore.
(彼は本屋で働いている)
(b) He lives at a small apartment.
(彼は小さなアパートに住んでいる)
(a)は「現在の習慣的行為」を,(b)は「現在の状態」を表します。
学校英語ではここまでを理解しておけば十分ですが,両者の間には次のような
本質的な違いがあります。
(a)では,話し手の視点は「現在を含む幅のある時間」に向いています。
(b)では,話し手の視点は「現在」という時間軸上の1点に向いています。
わかりやすく言えば,(a)は「彼はきのうも今日も明日も本屋の店員だ」という意味
です。そして(a)は,彼が現時点で
work していない[勤務中でない]場合,たとえば
家で寝ている場合でも使うことができます。
しかし(b)は「彼は現時点で live
している」という意味にしかなりません。
したがって「彼は現時点で work
している[勤務中だ]」という意味を明確に表したい
場合には,(a)(現在形)は使えません。その代わりに現在進行形を使うわけです。
一方,(b)では話し手の視点は最初から「現在」に向いているため,現在進行形を
使う必然性がありません。「状態動詞は進行形にできない」というルールの背景には,
そういう理由があります。
別の角度から考えてみましょう。 never
という副詞は,「どの時点を選んでも〜ない」
という意味であり,話し手の視点は過去・現在・未来のすべてに向いています。
(c-1) He never smokes.
(彼は決してたばこを吸わない)
この文は「彼は過去にも喫煙者ではなかったし,現在も喫煙者ではなく,将来も喫煙
者にならないだろう」というニュアンスを持ちます。
(c-2) He never smoked.
(彼は決してたばこを吸わなかった)
(c-3) He will never smoke.
(彼は決してたばこを吸わないだろう)
(c-2)は「過去のどの時点でも」,(c-3)は「未来のどの時点でも」の意味です。
これらの文の smoke
は動作動詞です。そして,これら3つはどれも正しい文です。
一方,状態動詞では次のようになります。(know
は状態動詞)
×(d-1) He
never knows the secret.
○(d-2) He never knew the secret.
○(d-3) He will never know the
secret.
(d-2)は「過去のどの時点でも彼はその秘密を知らなかった」,(d-3)は「未来の
どの時点でも彼はその秘密を知ることはないだろう」の意味です。
ところが(d-1)は誤りです。ここまでの話からその理由を整理すると,次のようになります。
(A)
状態動詞の現在形では,話し手の視点は「現在」という時の1点に向いている。
(B) never
を使う文では,話し手の視点は過去・現在・未来のすべてに向いている。
この2つが矛盾するから,(d-1)は誤りとなるわけです。