この話は,015で示した「A単語やフレーズを並べるルール」に関するものです。
したがって本格的な説明はずっと後になりますが,ものすごく重要なことなので,先に
ざっと説明しておきます。
英文法が嫌いな人が多い1つの理由は,文法用語がたくさんあって覚えにくいからです。
しかし効率的な学習のためには,基本的な文法用語の意味を知っておくのがベターです。
私が見るところ,多くの学習者が十分に理解していない1つのポイントがあります。
それが,「品詞」と「文の要素」との関係です。次の例を見てください。
・I bought a new camera yesterday.(私はきのう新しいカメラを買った)
この文は6つの単語から成っていますが,文法的には次のように説明できます。
(1)品詞をベースにした説明
・ I
bought a new
camera yesterday.
代名詞 動詞
冠詞 形容詞
名詞 副詞
(2)文の要素をベースにした説明
・ I bought a new
camera yesterday.
S
V
O
修飾語
この2つを見て納得できる人は,英文法の基本が身についています。逆に,(1)と(2)の
違いがわからない人は,英文法がまるで理解できていないと言っても過言ではありません。
以下の説明を読んで,しっかり理解してください。ここをクリアできれば,英文法学習の
スタートラインに立つことができます。
「品詞」とは,個々の単語の属性による分類です。たとえば田中さんという人は,「男」
とか「日本人」とかの大きなグループに入れることができます。このグループの名前に相当
するものが品詞です。たとえば dog(犬)は「名詞」,make(作る)は「動詞」という品詞の
グループに入ります。英語の主な品詞には,名詞・代名詞・冠詞・形容詞・副詞・動詞・
助動詞・前置詞・接続詞・間投詞の10種類があります。(個々の説明はここでは省きます)
「文の要素」とは,単語やフレーズが文中でどんな働きをしているかを表す用語です。
主語(S),述語動詞(V),目的語(O),補語(C),修飾語(M)の5種類があります。
これも,詳細は後で説明します。「文の要素」という概念が必要なのは,複雑な文の構造を
とらえるのに便利だからです。
The best way to master English is to live in
a country where it is used.
S
V
C
(英語を習得する最善の方法は,それ[英語]が話されている国で暮らすことだ)
この文は「S is C=SはCだ」が複雑化したものであり,基本構造はThis
is a pen. と同じです。
文の要素と品詞の関係をまとめると,次のようになります。この表を理解することが,
英文法の基本中の基本です。
文の要素
|
S(主語)
|
V(述語動詞)
|
O(目的語)
|
C(補語)
|
修飾語
|
品詞
|
名詞
代名詞
|
動詞
|
名詞
代名詞
|
名詞
形容詞
|
形容詞
副詞
|
最初に挙げた例をもう一度見てみましょう。
・ I bought a new
camera yesterday.(私はきのう新しいカメラを買った)
S
V
O
修飾語
上の表から,Sになれるのは名詞または代名詞です。だから
I(代名詞)はSになれますが,
たとえばnew(形容詞)はSになれません。また,Oになれるのも名詞または代名詞です。
だから I met Tom. とは言えますが,I met young[形容詞].とかI met today[副詞].は誤りです。
・I want to become a doctor.(私は医者になりたい)
S
V
O
この文は「私は[医者になること]を望む」と考え,to
become a doctor の全体がO(目的語)
だと解釈します。Oになれるのは,上の表から名詞(または代名詞)です。だからこの不定詞
(to become)を「名詞的用法」と言うわけです。
一方,この文の want と become
は,品詞としてはどちらも「動詞」です。しかし文の要素から
言えば,Vに当たる語は want
です。そこで,「品詞としての動詞」と「文の要素としてのV」とを
区別するために,後者を「述語動詞」と言います。
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