過去完了形は,現在完了形の基準時を「過去」へスライドさせた時制です。
〈had+過去分詞〉の形で,基準時(過去のある時点)における(それより
前に起きたこととつながりのある)状態を表します。
(a) When I arrived at the station, my train had
already left.
(私が駅に着いたとき,私の乗る電車は既に出ていた)
この例の基準時は「私が駅に着いたとき」という過去の1時点です。
その時点で「私の乗る列車は[既に出てしまった(already
left)という状態]を
持っていた(had)」と考えることができます。
(b) We had been waiting for
30 minutes when the bus came.
(バスが来たとき私たちは30分待ったところだった)
これは過去完了進行形の例です。基準時は「バスが来たとき」であり,
その時点まで「待っている(be waiting)という状態がずっと続いていたという
意味を表しています。
学校文法で言えば,(a)は〈完了〉,(b)は〈継続〉の例です。〈経験〉の例も見て
おきましょう。
(c) I found the hotel easily, because I had
stayed there once.
(私はそのホテルを簡単に見つけた。一度泊まったことがあったので)
この文の基準時は「私がホテルを見つけたとき」。その時点から見て「それより
前に〜したことがあった」という意味を過去完了形(had
stayed)で表します。
過去完了形を理屈の上で理解するのはそう難しくないはずですが,実際には
この時制の使い方を間違えているケースがよく見られます。たとえば次のような
誤りです。
× I had
lived in Hokkaido when I was a child.
○ I lived
in Hokkaido when I was a child.
(私は子どもの頃に北海道に住んでいた)
このように「過去の状態」(当時は〜していた)の意味を表すには過去形を使います。
この文の基準時は「私が子どもの頃」であり,その同じ時点で「北海道に住んでいた」
わけですから,過去完了形を使う必然性がありません。過去完了形は「基準時よりも
前の時点に起きたこと」を表す点に注意してください。
なお,過去完了形には「大過去」と呼ばれる使い方もありますが,これは「時制の一致」
のところで説明します。