2013/3/31 up

大人の英文法−028 「無標」と「有標」 

 

前回までで「時制」の話を終え,次は「態」を取り上げますが,その前に重要な文法概念の

1つである「無標」「有標」の説明をしておきます。(大学レベルの文法知識です)

ざっくり言えば,次のようになります。

・無標 = メジャーな方,一般的なもの

・有標 = マイナーな方,例外的なもの

日常的なたとえをするなら,広島生まれならカープファンが「無標」であり,広島で生まれ

育っていながら巨人ファンの人は「有標」だということになります。

このように「無標」と「有標」とは対立関係にあります。一般に,単純な(予測がつく)ものは

無標,複雑な(予測がつきにくい)ものは有標です。たとえば現在形と過去形で言えば,

現在形が無標,過去形は(不規則変化があるので)有標です。


 

このあとの説明の中で,無標・有標という言葉はしばしば出てきます。

先に予告をしておくと,たとえば次のようなものです。

(1) 無標の強勢と有標の強勢

(a) Jack loves Bétty. 〈無標の強勢〉

   (ジャックが愛しているのはベティだ)

(b) Jáck loves Betty.〈有標の強勢〉

   (ベティを愛しているのはジャックだ)

英語の情報構造は「旧−新」の並びが普通であり,Jack loves Betty. という文は

「ジャックが誰を愛しているかと言えばそれはベティだ」,つまり(a)の意味に解釈

するのが普通です。このとき新情報はBettyなので,文末のBettyを強く読みます。

この(a)の強勢が無標の強勢です。一方(b)のようにJackを強く読んでそれを

新情報にすることもできます。(b)は特殊な読み方であり,有標の強勢です。

 

(2) 副詞の無標の位置と有標の位置

(a) I stayed at home yesterday. (きのうは家にいた) 〈無標〉

(b) Yesterday I stayed at home. (きのうは家にいた) 〈有標〉

時を表す副詞は,文末に置くのが普通です。つまり(a)のyesterdayは「無標の位置」

に置かれています。一方(b)のyesterdayは有標の(=例外的な)位置にあります。

このように文中の要素が有標の位置に置かれるのは,何らかの理由があります。

(b)はたとえば「毎週日曜日には外出するのだが,きのう(の日曜日)だけは家に

いた」のような状況が考えられます。(きのうが例外であることを示すために,

yesterday には強勢を置きます)

 

(3) 無標の形容詞と有標の形容詞

(a) How big is his house? (彼の家はどのくらいの大きさですか) 〈無標〉

(b) How small is his house? (彼の家はどのくらい小さいのですか) 〈有標〉

(a)のbigは「大きい」ではなく「〜の大きさだ」という〈尺度〉の意味を表します。

つまり(a)の質問をする人は,彼の家が「大きい」とも「小さい」とも考えておらず,

単に大きさを尋ねているだけです。一方(b)の質問をする人は,「彼の家は

小さい」という前提で話しています。この対比から,big は「大きい」の意味に

加えて「〜の大きさだ」というより一般的な意味を表せることがわかります。

よって big と small との対立においては,big が無標,small が有標です。

(この説明は「比較」の項目とも深くかかわっています)

 

「大人の英文法」のトップへ