2013/6/5 up

大人の英文法−043 仮定法を含む表現@ 

 

仮定法の基本形は if(もし〜なら)を使ったものですが,そのほか次のような場合も

仮定法を使います。

(1) if 節と同等の意味を表す別の表現を使ったもの

(2) 〈if+S+V〉→〈V+S〉と言い換えたもの

(3) if 節が省略されて主節だけが残ったもの

(4)  if(もし〜なら)以外の表現を含む文中で仮定法を使うもの

ここでは(1)と(2)を取り上げます。


 

(1) if 節と同等の意味を表す別の表現を使ったもの

 with(もし〜があれば),without(もし〜がなければ) を使った

次のような文が典型です。

With a little more money, I would buy this computer.

  ≒ If I had a little more money, I would buy this computer.

(もう少しお金があれば,このコンピュータを買うのに)

Without  your help, I would have failed.

  ≒ If you hadn't helped me, I would have failed.

(君の助けがなければ,私は失敗しただろう)

あるいは,副詞(句)が if 節の代わりをする次のようなものもあります。

自分で英語を発信する(話す)という観点から言えば,このあたりまでを

知っておけば十分でしょう

In your place, I would accept the offer.

  ≒ If I were in your place, I would accept the offer.

  (もし君の立場なら,私はそのオファーを受けるだろう)

・ We took a taxi. Otherwise, we'd have been late.

  (私たちはタクシーに乗った。さもなければ遅れていただろう)

*otherwise = if we hadn't taken a taxi


 

(2) 〈if+S+V〉→〈V+S〉と言い換えたもの

「if の省略による倒置構文」という言い方もします。次のような文です。

Were I in your place, I would accept the offer.

  ≒ If I were in your place, I would accept the offer.

  (もし君の立場なら,私はそのオファーを受けるだろう)

この形で節の最初に出てくるのは,were・had・should の3語です。

Should you change your schedule, let me know.

If you should change your schedule, let me know.

(万一予定を変更したら,私に知らせてください)

このような形について,次の2点を説明しておきます。

 

@ なぜ〈V+S〉の倒置が起こるのか?

そもそも,if が省略されるのはなぜか?が問題です。

「現代英文法講義」(安藤貞雄・開拓社)をお持ちの方は,

pp.378-379を参照してください。そこには,仮定法の if を省略した

倒置は「疑問文を起源とする説」「祈願文を起源とする説」の2つが

あると説明されています。わかりやすく言えばこんな感じでしょうか。

Were I in your place, I would accept the offer.

  (もし君の立場なら,私はそのオファーを受けるだろう)

→ 疑問文起源説なら「私が君の立場(だというの)ですか?それなら

私は〜」ということ。祈願文起源説なら「私が君の立場だったらなあ,

そうすれば私は〜」ということ。

※祈願文とは,今日の英文法では May you be happy! (お幸せに!)

のような〈May+S+V 〜!〉の形を言います。

 

A 実際の会話でこのような形が使われるのか?

2009年度センター本試験の整序作文問題に,次の問いが出題されました。

There was a phone call from someone whose number you didn't recognize, 

so you didn't answer it. However, it was from someone inviting you to a party. 

You could express your regret by saying: 

I [ could / had / have / I / joined / the party ] answered the phone yesterday. 

*正解はcould have joined the party had I。「誰の番号かわからない人から

電話があったので,あなたは出なかった。しかしそれはパーティーの招待者

からの電話だった。あなたは次のように言うことで後悔を表せるだろう。

『きのう電話に出ていれば,パーティーに参加できたのに』」という意味。

下線部の had I は,if I had の if を省略した倒置形です。

この問いは会話の状況を想定しているので,日常的にもこのような形が

使われる(とセンターの出題者は考えた)ことになります。

ただし私があるネイティブにこの問いを解いてもらったところ,彼は正解を

出すことができませんでした。正解を示して「あなたは日常的にこのような

言い方をすることがありますか?」と尋ねたところ,答えは「ノー」でした。

【参考】 一方,「オーレックス英和辞典」(旺文社)には次の調査結果があります。

・Had I not seen it with my eyes, I would not have believed it. 

→ 「使う(82%)」「使わない(18%)」

同辞書には,「使うと答えた人の約半数がこれを〈堅〉または〈文〉としたが,

残りの半数は特に〈堅〉ではないとした」「〈堅〉と受け取られる場合が多いので,

特に〈口〉ではifを省略しないIf I had ... の形を使うのが無難だろう」という解説があります。

 

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